子供の年齢による面接交渉の可否・・・

子供の年齢による面接交渉の可否・・・

離婚の事案

夫と妻は、婚姻し、長男、長女が生まれた。

夫は転職を繰り返し、経済的に不安定であったことに加え、妻と同居していた夫の母との折り合いが悪かったことから、夫妻は未成年者らに親権者を妻と定めて協議離婚をした。

妻は、他の男性と再婚し、男性と子らが養子縁組した。

夫は、妻、男性に対して、子らと年1回程度面接交渉を求める審判の申立をした。

妻らは、夫にその住所を秘匿していたが、夫は、これを調査したうえ、妻らの了承を得ないまま、本件審判申立後、月に2度にわたり、未成年者らと面談し、その際、夫は、未成年者らに面接事実を秘匿するように言った。

離婚の判例

裁判所は、以下のように述べて、長男とは、毎年1回その通学先の学校の夏季休暇中に面接交渉させることを認め、長女については、面接交渉の申立を却下した。

面接交渉の目的及び性格からすると、その実子によって子の心身の成長上好ましい結果がもたらされる場合でなければ、これを肯定すべきではないといってよく、特に、離婚に至った原因・経緯等から父母間の対立が激しく、親権者親が非親権者親による面接交渉を強く反対している場合にあっては、親権者親の意思に反する面接交渉が強行されることにより親子間に感情的軋轢等が生じ、これによって子の福祉を害する事態が想定されることから、親権者親の意思に反した面接交渉は、例えば、進学問題など、子の監護教育上親権者親が非親権者親の協力も得て解決すべき重要な問題が発生しており、これに適切に対処するには親権者親の意思に反しても非親権者親に子と面接交渉させるのでなければ子の利益を十分に保護することができないといった、特別の事情が存在すると認められるときでない限り、これを回避させるのが相当であるといえる。

もっとも、子の年齢、その他心身の成長状況からして子が単独で非親権者親と面接交渉することが可能である場合にあっては、親権者親が反対であっても、面接交渉によって子の福祉が害されるおそれは比較的少ないといってよく、非親権者親が不当な動機に基づき面接交渉を求めているような場合を除き、原則としてこれを肯定することができる。

長女の場合、まだ小学4年生であり、十分な分別心をもっていないとみられ、長女単独で夫と面接交渉させることには疑問が残る上、長女の年齢、心情等からすると、面接交渉の内容・態様いかんによっては心理的な動揺や混乱を招くおそれがあると認められるところ、妻らの協力がなくとも夫と長女の面接交渉を肯定するのでなければ子の利益を保護するに十分でないというべき特別の事情が存在するとまでは認められない。

これに対し、長男の場合、既に中学2年生であり、妻らの協力がなくても単独で妻との面接交渉が可能であり、夫と妻の離婚やその後の男性との再婚につき未成年者なりにその事情を理解できる年齢に達しているとみられることのほか、夫が面接交渉を求める理由が我が子の無事な成長ぶりを確認したというものであって、親子間における自然の心情として理解し得ないものではないことからすれば、夫の求める年1回程度の面接交渉によって子の福祉を害する結果を招くに至るとまでは認められない。

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両親の対立が激しい場合の面接交渉・・・

離婚の事案

イギリス人の夫と日本人の妻は、婚姻し、長男が産まれ、長男はイギリス国籍を有している。

妻は、夫から何度も暴力を受けたこと原因で離婚を決意し、両親立会いのもとで未成年者を連れて、夫宅を出て、一時両親宅に身を寄せ、未成年者と生活している。

夫は、妻との離婚、未成年者の親権者を夫と定めることを内容とする離婚調停申立をし、未成年者との面接交渉を求める審判申立をなし、併せて本件審判前の保全処分の申立をした。

妻は日本の大学で助教授をしており、夫は日本の大学で専任講師をしていが、解雇され、イギリスに帰省中である。

離婚の判例

①原審判は、以下のように述べて、夫の申立を却下した。

夫が未成年者との面接を強く希望していることが窺われるものの、上記のとおり父母が対立する状況のもとで、未成年者が現在別居している親と面接することは、その円滑な実施が望めず、かつ未成年者に心情的な混乱を与えるなど悪い影響を及ぼすおそれがあると考えられ、相当でなく、かつ本案の審判がなされる前に、上記のように事実上妻によって監護養育されている未成年者と夫が面接をしなければならない必要性があるとは認められない。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、名古屋家裁に差し戻した。

別居中のため子の監護養育を行なっていない夫婦の一方に、子との面接を認めるか否かはあくまでも子の福祉に合致するか否かによって決定されるべきものである。

その場合、幼年期の子にとって大切なことは監護者との安定した関係を維持継続することであるから、子の両親間の対立、反目が激しく、その葛藤が子に反映してその精神的安定を害するときは、子と別居している親との面接は避けるべきであるといえるが、両親が子の親権をめぐって争うときはその対立、反目が激しいのが通常であるから、そのことのみを理由に直ちに面接交渉が許されないとすると、子につき先に監護を開始すればよいということにもなりかねず相当ではなく、右の場合でもなお子の福祉に合致した面接の可能性を探る工夫と努力を怠ってはならないというべきである。

本件においては、未成年者の両親である夫と妻が対立、反目していることが明らかであるが、前示のとおり夫も妻も教養を備えた教育者なのであるから、その面接交渉の回数、時間、場所、更に家庭裁判所の調査官の関与、助言などを考慮、工夫をすることによって、未成年者に対する両親間の感情的葛藤による影響を最小限に抑える余地があると考えられる。

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父母が別居中の面接交渉・・・

離婚の事案

夫と妻は、婚姻し、長男が生まれた。

夫がその経営する歯科医院の女性従業員と不貞行為に及んだことが主たる原因となって、夫と妻の婚姻関係は破綻した。

妻は、長男を連れて家を出て、夫と別居した。

夫は、長男の監護者を夫と指定するよう求める子の監護者指定調停申立をなし、妻は、同年10月に離婚等を求める調停申立をした。

月1回ないし2回程度、夫と長男の面接交渉が行なわれた。

夫の子の監護者指定の調停は取り下げにより、妻の離婚等の調停は不成立によりそれぞれ終了したが、その際、夫と妻は、月2回土曜日の午後に面接交渉を行なう合意をした。

妻は、離婚訴訟を提起した。

離婚訴訟の和解協議で夫が妻の提示した和解案を拒否したことから、妻は、面接交渉を拒否し、以後面接交渉が中止されたままとなった。

夫は、、面接交渉を求める調停申立をなし、審判に移行した。

離婚、長男の親権者を妻と指定する等の内容の判決がなされたが、双方が控訴した。

離婚の判例

①原審は、父母の離婚前においても民法766条、家事審判法9条1項乙類4号を類推適用して、面接交渉の具体的内容を審判により定めることができるとして、下記のとおりの審判を下した。

1、夫と長男との面接交渉について、次にとおり定める。

・回数

1ヶ月1回。

・日時

各月の第1土曜日の午後1時から午後5時まで

・方法

面接開始時に妻宅で長男を妻から夫に引渡し、面接終了時に妻宅で長男を夫から妻に引き渡す。

夫は、上記面接時間中、夫の住居その他適当な場所において、長男と面接する。

2、妻は、夫に対し、第1項の面接開始時に妻宅で長男を夫に引渡し、長男を夫と面接させよ。

3、夫は、妻に対し、第1項所定の面接終了時に妻宅で長男を妻に引き渡せ。

②抗告審も原審と同様に面接交渉を認めたが、主文は以下のとおり変更した。

妻は夫に対し、毎月1回、第1土曜日の午後1時から午後5時まで、夫が住居その他適当な場所において、長男と面接することを許さなければならない。

③最高裁は、以下のように述べて、妻の抗告を棄却した。

父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行ない、親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うものであり、婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容であるということができる。

そして、別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当である。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

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