夫婦共通養親の遺産分割財産の財産分与・・・

夫婦共通養親の遺産分割財産の財産分与・・・

離婚の事案

夫と妻は、婚姻し、長男、長女、二女が生まれた。

夫は、妻の養父、養母と同居し、養父の所有地に夫が経営する会社の事務所として使用するため本件建物を建築した。

夫は、養母が死亡した時に、養母と養子縁組した。

養母も死亡し、夫、妻が養母の相続人となったが、養母の遺産分割に当たっては、夫がその相続権を事実上放棄したため、妻が本件土地1を含む本件不動産を取得した。

夫と妻は、3人の子の親権者を妻と定めて、協議離婚した。

夫は、妻に対して、本件土地1のうち本件建物の敷地部分約132平方メートルの財産の分与を求める本件審判申立をした。

離婚の判例

①原審は、夫の申立を認めた。

②抗告審も以下のように述べて、妻の抗告を棄却し、原審判を維持した。

妻は、本件土地1は、妻が亡き養母から相続した特有財産であって、財産分与の対象とならないと主張する。

しかし、夫は、亡き養母の養子として妻とともに2分の1の相続権があったにもかかわらず、円満な夫婦関係を維持するために遺産分割協議により妻に上記土地を取得させたのであり、実質的にみると、夫は、その法定相続分たる上記土地の2分の1の持分権を妻に贈与することにより、妻の財産形成に寄与したものとみることができるから、夫の法定相続分を限度として、夫婦財産の清算手続きに組み入れるのが相当である。

これを、形式的に割り切り、妻の特有財産として財産分与の対象とすることができないものとすると、例えば、夫が妻の両親と養子縁組していたところ、両親の相続に当たり、妻が円満な夫婦関係の維持を目的に夫に全ての遺産を相続させた事例を考えると、その後の夫の不貞行為のため離婚することとなった場合においても、妻は、右遺産について財産分与を求めることはできなくなるが、このような事態は、公平の観点から不当である上に、社会通念にもそぐわないことは明らかである。

なお、このように解することは、実質的に遺産分割のやり直しを一方が遺産の全てを相続したような場合に限られる上に、その他の財産や遺産分割後の事情も考慮するのであって遺産分割のやり直しそのものではないことは明らかであり、このような場合における夫婦の公平な財産の清算のためには、夫婦の一方が相続した財産を財産分与の対象とすることは許されるべきである。

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夫婦個別管理財産の財産分与・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、長女が生まれた。

妻は童話作家、夫は画家である。

妻と夫は、互いの人生観、価値観の相違等から不仲となって家庭内別居の状態が続き、妻が家を出て別居し、協議離婚した。

夫は、本件土地を購入し、その上に本件建物を建築した。

本件土地は夫の単独名義の登記であり、本件建物は妻が1000分の64、夫が1000分の936の持分割合による共有登記である。

なお、妻の所得の方が夫より多く、預貯金も妻の方が夫より多かった。

妻は、夫に対して、財産分与及び慰謝料として、本件土地及び本件建物の夫共有持分について、妻への所有権移転登記を求めた。

離婚の判例

①裁判所は、夫に対して妻への約3010万円の支払を命じ、妻に対して本件建物についての1000分の64の共有部分の夫への財産分与を命じた。

②清算的財産分与の対象となる財産について、本件土地建物、双方の個人名義の預貯金、著作権が考えられるが、「妻と夫は、婚姻前からそれぞれが作家、画家として活動しており、婚姻後もそれぞれが各自の収入、預貯金を管理し、それぞれが必要なときに夫婦の生活費用を支出するという形態をとっていたことが認められ、一方が収入を管理するという形態、あるいは夫婦共通の財布というものがないので、婚姻中から、それぞれの名義の預貯金、著作物の著作権についてはそれぞれの名義人に帰属する旨の合意があったと解するのが相当であり、各個人名義の預貯金、著作権は清算的財産分与の対象とならない。」と述べた。

③本件土地建物の財産形成の寄与割合について「本件清算的財産分与の清算割合は、本来、夫婦は基本的理念として対等な関係であり、財産分与は婚姻生活中の夫婦の協力によって形成された実質上の共有財産の清算と解するのが相当であるから、原則的に平等であると解するべきである。

しかし、前記認定の妻と夫の婚姻生活の実態によれば、妻と夫は芸術家としてそれぞれの活動に従事するとともに、妻は家庭内別居の約9年間を除き約18年間専ら家事労働に従事してきたこと、及び、当事者双方の共同生活について費用の負担割合、収入等を総合考慮すると、前記の割合を修正し、妻の寄与割合を6、夫のそれを4とするのが相当である。

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資産のある扶養的な財産分与・・・

離婚の事案

夫と妻は、男女関係をもち、一旦交際を中断したが、夫が先妻と死別した後、婚姻届出をした。

妻は、婚姻前に前夫と離婚している。

夫は、結婚に当たり、夫の収入の管理、運用を妻に任せることとした。

ところが、夫は、妻に対して、夫の得た収入の管理を自分に任せること等を要求し、これが契機となって夫婦仲が悪化し、夫は妻と別居した。

夫は、妻に対して、離婚、主位的に財産管理委託の解除を理由に、予備的には財産分与として、同居期間中の夫の収入約9152万円の支払を求める訴訟を提起した。

妻は、離婚、離婚慰謝料1000万円、財産分与として5000万円と離婚後の扶養料として死亡時まで月額20万円の支払を求める反訴を提起した。

離婚の判例

①一審は、管理委託契約の趣旨は、夫の収入の全てを2人の共有とする旨の黙示の合意があったと推認することもできるとして、夫の妻に対する委託契約に基づく夫の収入の返還を認めず、清算的財産分与として妻が夫に1000万円支払う、慰謝料として夫が妻に300万円支払う、退職分の清算的財産分与として、夫に乙山学園から退職金が支給されたとき、夫は妻に対し、その2分の1を支払う、扶養的財産分与として、夫は妻に対して離婚が確定した月から妻が死亡するまでの間毎月15万円の支払を命じた。

②控訴審は、委託契約の解除に基づき、妻は夫に対して、固有財産の残存額であると認められる夫の自宅の売却代金の残額1311万円を返還する、退職金以外の分の財産分与として、妻は夫に対して500万円を支払うものとし、更に夫が妻に支払うべき夫の退職金の約2分の1である約1000万円を差し引き計算して、結局夫に対して、夫が乙山学園を退職した時に財産分与として500万円を妻に支払うことを命じた。

なお、夫が妻に支払うべき慰謝料については、一審どおり300万円とした。

更に、妻の扶養的財産分与の請求については、妻はかなり多額の財産を有していると推認されること、妻が所有している自宅は相当の価値を有すること等から理由がないとした。

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