強引な不貞の慰謝料請求・・・
離婚の事案
妻と夫は婚姻届をなし、長女、長男が生まれた。
女性は、居酒屋を経営していたが、夫はその居酒屋に客として来店し、毎週1度は来店するようになった。
しかし、夫は、他の女性と半同棲の生活をしており、女性の居酒屋には来店しなかった。
その間、妻は、女性の居酒屋に毎晩のように来店して夫婦関係の愚痴をこぼし、「夫との夫婦関係は冷めており、妻の兄の結婚式が終わったら離婚する」と話した。
夫は、居酒屋で毎晩のように女性を口説き、妻とは別れる等と言って、同月に女性と肉体関係をもった。
夫は、妻が別れることを承知したからと、女性に結婚の申込をし、女性もこれを承諾した。
夫と女性の関係が妻に発覚し、妻は女性の対して500万円の慰謝料を要求した。
夫も女性に対して妻に500万円支払うよう要求し、女性がこれを拒否すると女性の首を締め付け、腹を拳で殴る暴行を加えた。
その後も妻は女性に対して500万円を要求して嫌がらせをし、夫も女性に対して暴行を加えて傷害を負わせ、罰金5万円の刑に処せられた。
妻は、女性に対して、慰謝料の支払を求める本件訴訟を提起した。
離婚の判例
①一審は、妻の請求を棄却した。
②控訴審は、女性に100万円の慰謝料及び10万円の弁護士費用の支払を命じた。
③最高裁は、以下のように述べて、原判決の女性敗訴部分を取消し、一審判決を維持した。
女性は、夫から婚姻を申し込まれ、これを前提に平成2年9月20日から同年11月末ころまでの間肉体関係を持ったものであるところ、女性がその当時夫と将来婚姻することができるものと考えたのは、同元年10月頃から頻繁に女性の経営する居酒屋に客として来るようになった妻が女性に対し、夫が他の女性と同棲していることなど夫婦関係について愚痴をこぼし、同2年9月初め頃、夫との夫婦仲は冷めており、同3年1月に夫と女性との右の関係を知るや、女性に対し、慰謝料として500万円を支払うよう要求し、その後は、単に口頭で支払要求をするにとどまらず、同月3日から4日にかけての夫の暴力による女性に対する500万円の要求行為を利用し、同月6日頃及び9日頃には、女性の経営する居酒屋において、単独で又は夫と共に嫌がらせをして500万円を要求したが、女性がその要求に応じなかったため、本件訴訟を提起したというのであり、これらの事情を総合して勘案するときは、仮に妻が女性に対してなにがしかの損害賠償請求権を有するとしても、これを行使することは、信義誠実の原則に反し権利の濫用として許されない。
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不貞の慰謝料請求権の消滅時効の起算点・・・
離婚の事案
妻と夫は婚姻し、長男が生まれた。
女性は、勤務先の証券会社で同僚であった夫と知り合い、男女関係を結んだ。
夫は、自宅を出て、女性と暮らし、証券会社を退社し、夫の父の住職の地位を受継ぎ、女性と同居した。
女性は夫との間に女児を生み、夫は胎児認知した。
妻は、夫に対して、夫婦関係調整の調停を申し立てたが、不調となった。
夫は、妻に対して離婚訴訟を提起し、離婚を認める判決がなされ、妻は控訴、上告したが離婚判決が確定した。
妻は、女性に対して、2000万円の慰謝料等を求める本件訴訟を提起した。
離婚の判例
①一審は、以下のように述べて、妻の請求を棄却した。
まず、夫と妻との婚姻関係は、女性が女児を出産し、妻がこれを知った昭和57年には、破綻したと認められるから、少なくとも昭和57年以降の女性と夫との関係については不法行為が成立しない。
また、女性の消滅時効の抗弁について、妻としての権利の侵害としては、右侵害行為がされている間は、日々発生するものであるから、妻は、夫との夫婦関係が破綻する前の女性の不法行為については、それを十分認識していたのであり、右不法行為に基づく損害賠償を求めることもできるから、破綻までの不法行為に基づく損害賠償は各行為時から消滅時効が進行する。
本件訴訟が提起された平成9年5月11日から遡る3年前には、前記認定のとおり、すでに妻と夫の婚姻関係は完全に破綻していたものと認められるから、女性の不法行為に基づく妻の慰謝料の損害賠償請求権は、本訴提起の段階で既に時効期間が経過していたと認められ、右時効を被告が援用する以上、原告の請求権は消滅したものといえる。
②控訴審は、以下のように述べて、一審判決を一部取消し、女性に対して200万円の慰謝料等の支払を命じた。
妻の本件慰謝料請求は、単に女性と夫との肉体関係ないし同棲の違法を理由とするものではなく、女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続によって、最終的に夫との離婚をやむなくされるに至ったことにより被った慰謝料の支払をも求めるものであるところ、前示の事実関係によれば、女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続により右離婚をやむなくされ、最終的に離婚判決が確定したのであるから、離婚に至らしめた女性の右行為が妻に対する不法行為をなるものと解すべきである。
夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当であり、本件においても、妻は、夫が昭和47年に女性と同棲した事実をその後数年のうちには知ったものと推認される。
しかし、妻の本件慰謝料請求は、単に女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続により最終的に夫との離婚をやむなくされるに至ったことをも女性の不法行為として主張していることは前示のとおりであるところ、このように第三者の不法行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求める場合、右損害は離婚が成立して初めて評価されるものであるから、第三者との肉体関係ないし同棲の継続等を理由として離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときに初めて、離婚に至らせた第三者の行為が不法行為であることを知り、かつ、損害の発生を確実に知ったこととなるものと解するのが相当である。
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不貞の同棲の差止め請求・・・
離婚の事案
妻と夫は婚姻し、長女、長男が生まれた。
妻、夫、女性は、いずれも公立学校の教師である。
女性と夫は同じ小学校に勤務し、それから間もなく交際した。
妻、女性、夫で話し合いがされ、妻は女性が夫と今後交際しないように念書の差し入れを要求したが、女性はこれを断り、その後、夫は自宅を出て妻と別居した。
妻は、1200万円の慰謝料、女性は、妻と夫の婚姻が継続している間、夫と同棲又は会ってはならない、ことを求める本件訴訟を提起した。
離婚の判例
裁判所は、女性に300万円の慰謝料の支払を命じ、同棲、面会の差止めについては、以下のように述べて棄却した。
妻は、女性が夫と会うことについて差止めも求めているが、女性が夫と会うこと自体が違法になるとは到底いえないから、少なくともこの部分については請求に理由がないことは明らかである。
同棲の差止めについて、差止めは、相手方の行動の事前かつ直接の禁止という強力な効果をもたらすものであるから、これが認められるについては、事後の金銭賠償によっては妻の保護として十分ではなく事前の直接抑制が必要といえるだけの特別な事情のあることが必要である。
そこで、本件におけるそのような事情の有無についてみると、妻と夫は婚姻関係こそ継続しているものの、平成10年5月頃から夫は家を出て妻と別居しており、妻に居所を連絡してもいない。
これに加えて、先に認定した経緯をも考慮すると、両者間の婚姻関係が平常のものに復するためには、相当の困難を伴う状態というほかない。
そして、妻もまた夫との離婚もやむなしと考えているものの、夫が女性と同棲したりすることはこれまでの経緯から見て許せないということから夫との離婚に応じてないのである。
そうすると、今後女性と夫が同棲することによって、妻と夫との平穏な婚姻生活が害されるといった直接的かつ具体的な損害が生じるということにはならない。
同棲によって侵害されるのはもっぱら妻の精神的な平穏というほかない。
このような精神的損害については、同棲が不法行為の要件を備える場合には損害賠償によっててん補されるべきものであり、これを超えて差止め請求まで認められるべき事情があるとまではいえない。
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