婚姻費用分担額の算定・・・

婚姻費用分担額の算定・・・

離婚の事案

夫は、妻との別居後、他の女性と同居し、以後17年に及んでおり、この間に女性との間に非嫡出子が生まれた。

妻は、夫の対して、本件婚姻費用分担の審判を申立てをした。

離婚の判例

①原審判は、夫に対して、婚姻費用として月額8万円の支払を命じた。

②女性は、昭和41年以降17年間夫と同居し、妻との別居の原因ともなった夫の母の面倒をみ、夫の会社倒産、失業の間の家族を支え、実質的な夫婦関係にあるのに、原審判がその女性の生活費を婚姻費用分担額算定にあたり考慮しなかったのは不当である等と主張して、夫が抗告した。

抗告審は、以下のように述べて、夫の抗告を棄却した。

およそ婚姻関係が継続している以上、夫婦双方の可処分所得は、未成年の子などの扶養すべき親族の生活を含めた相互の生活の維持のために必要とされる程度に応じてこれを分配することを原則とすべきであり、夫婦の一方が異性と同棲している場合に、その扶養に要する費用は、特段の事情のない限り右分配にあたって考慮すべきではない。

そうして、本件において、夫婦関係が夫の責めに帰すべからざる事由によって完全に破綻したのちに夫と女性との同棲関係が生じたなど、前記原則によらない取り扱いを相当とするような特段の事情が存するとは認められないから、所論は理由がない。

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有責配偶者の婚姻費用分担請求・・・

離婚の事案

夫は、課長に昇進したが、そのころから深酒して深夜に帰宅することが多くなり、これを非難した妻と口論になり、妻は、生後間もない二女だけを連れて実家に帰った。

妻は二女と帰宅し、共同生活が再開された。

うつ病と診断されていた夫は、意思から入院治療をすすめられたがこれを拒絶した。

妻は、同月に2人の子供を連れて実家に帰り、その後入院した夫の面会にも行かなかった。

夫は、その後妻に同居を求めたが、妻はこれに応ぜず、互いに音信がない状態が続いた。

夫は他の女性とお見合いをして、女性と同棲を始めた。

夫は、離婚調停をなし、不調となったので、離婚訴訟を提起した。

妻は、夫に対して、本件婚姻費用分担の申立てをした。

離婚の判例

①原審判は、夫に対して、婚姻費用の支払を命じた。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判の一部を取消し、2人のこどもの監護費用として、月4万円の婚姻費用の支払を命じた。

民法760条、752条に照らせば、婚姻が事実上破綻して別居生活に入ったとしても、離婚しない限りは夫婦は互いに婚姻費用分担の義務があるというべきであるが、夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し、その後同居に要請にも全く耳をかさず、かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行なわず、そのために別居生活が継続し、しかも右別居を止むを得ないとするような事情が認められない場合には、前記各法条の趣旨に照らしても、少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず、ただ、同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求し得るにとどまるというべきである。

そして、右認定事実によれば、妻は夫の意思に反して別居を強行し、その後の夫の再三の話し合いの要請にも全く応ぜず、かつみずからは全く同居生活回復の努力をせず、しかも右別居について止むを得ない事情があるとも到底言い難い状態で10年以上経過してから本件婚姻費用分担の申立てにしたものと評価すべきであるから、自己の生活費を婚姻費用の分担として夫に請求するのは、まさに権利の濫用であって許されず、ただ妻と同居する長女、二女の実質的監護費用だけを婚姻費用の分担として夫に請求しうるにとどまるというべきである。

(婚姻費用の分担)
民法第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

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借金と婚姻費用分担額の算定・・・

離婚の事案

夫の不倫行為が原因で、別居した。

別居後妻は、実家の両親方に同居したが、その後アパートで長男、三男とともに生活し、同月から病院の看護助手として勤務し、手取り収入は月6万円から7万円程度である。

夫は、両親及び二男と同居し、整体師を開業している。

夫は、約10箇所から借入金を抱えており、月額26万円1060円の返済をしている。

妻は、夫に対して、毎月8万円の婚姻費用分担金の支払を求めた。

離婚の判例

①原審は、夫の止むを得ない必要的支出は収入を超えており、妻らについての婚姻費用を分担する能力はないとして、妻の請求を棄却した。

②抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、月8万円の婚姻費用分担金の支払を認めた。

夫が同居している母に返済している月額8万円やカードローン及びサラ金の返済金が、婚姻費用に先んじて支払うべきことが相当な負債であるとの点については、相手方の陳述書によってもこれを認めることは足りず、これを認定するに足りる客観的な証拠がないから、特別経費とすることはできない。

更に夫は多額の負債を抱えているが、妻の生活状況は夫と比較しても極めて厳しく、要扶養状態にあることは明らかである。

したがって、夫は負債の返済を理由に婚姻費用の分担義務を免れることはできないというべきで、夫の母に対する夫の債務を妻が保証している事実をもってしてもこれを左右するものではない。

しかも、夫の不貞が別居の原因であることからすると、夫の婚姻費用分担の責任は重く、収入の増加や負債の返済方法を変更する等の努力をしたも、婚姻費用を捻出すべきである。

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