認知しない条件の約束の効力・・・
太郎は、花子に200万円のお金を渡し、今後一切認知の請求もしないとの誓約書をもらい、別れました。
しかし、花子はその後、やはり父親のない子だとかわいそうなので、子供を認知して欲しいと言ってきました。
花子は、認知をしてくれないなら、裁判をすると言ってきました。
花子は、金200万円を受取代わりに、太郎へ認知をする権利を放棄する契約をしました。
しかし、最高裁をはじめ一連の判例では、子の父に対する認知請求権は、これが身分上の権利であり、それを認めた民法の精神に照らして、放棄することができないものであるとしています。
学説の中には、形式的な認知請求よりも、子の実質的な保護を重視し、その身の安全な成長のために十分な金銭的保障を与えた場合には、認知請求の放棄も有効であるとという見解もあります。
現在の判例では、この見解は通らないとされます。
認知されれば当然、相続権もあります。
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夫の死後の義父母の子の連れ去り・・・
花子は、夫の死後、義父母らの関係が悪くなり、2歳になったばかりの一人息子太郎を連れて実家へ帰り、兄の探してくれたアパートに住み始めました。
義父母の、孫に対する溺愛は異常で、たびたび実家に怒鳴り込んできました。
ある夜、太郎をつれて歩いていると、そこの義父が立っており、義父は太郎をひったくると、停車中の車に乗り込み、走り去りました。
義父母の家に行って、返してくれるよう頼みましたが、全く応じてくれませんでした。
花子は、家庭裁判所へ親権者として、太郎の監護養育する権利があることを理由に、太郎の引渡しを求めました。
義父は、反対に、親権喪失の申立てをし、自分が後見人となって太郎を育てていくと言っています。
親権者は、子供の監護・教育する権利義務があります。
もし、第三者が親権者の監護・教育を妨害するときは、親権者は、妨害を排除し子の安全を保護することができます。
親権者の子の引渡し請求権は、最高裁判所でも認められています。
義父の太郎に対する愛情が強いからといって、親権行使の妨害にならないとはいえません。
親権喪失の申立てもできません。
調停で話し合いがまとまらなければ、裁判を起すこともできます。
しかし、子の引渡しは急を要し、母と子の心理的つながりを長く切れたままにしておくはよくありません。
その場合には、人身保護法による人身保護の請求があり、法律上正当な手続きによらないで、身体の自由を拘束されている者の自由回復を目的とします。
拘束されている者のために裁判所に釈放請求でき、簡易迅速です。
親権者でない者の連れ去りは、刑事事件になる可能性もありますので、緊急の時は、警察に相談することも必要です。
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養子を実子として届出・・・
戦後、夫妻は、夫の兄弟に4番目の子供が生まれたのですが、生活も楽ではないので、その子を養子にしてくれないかと言われ、夫妻は子宝に恵まれなかったため、引き受けました。
しかし、夫婦は、養子では他人であるため、わが子として育てることとし、実子として出生届をしました。
その後、実子としてすくすくと育ったのですが、親子の断絶が芽生えたのは、子が高校生の時でした。
悪い仲間と付き合い、不順異性交遊で警察に補導されました。
その後、その子は夫妻へ暴力を振るい、お金は持ち出し、夫妻は縁を切るしかないと考えました。
生まれて間もない他人の子をもらい受け、その子を自分達夫婦の本当の子である嫡出子として届け養育することは、違法ですが、古くから行なわれています。
未婚女性が子を産んだ場合、この手段をとると、子は非嫡出子として戸籍に記載されることなく、未婚の母も戸籍上も何も記載されません。
法的には、虚偽の嫡出子出生届には効果がありません。
夫妻から子を相手に、親子関係不存在確認の裁判が出されれば、裁判所は両者は他人であると判決を下します。
学説では、嫡出子届としては無効ですが、養子縁組届として有効とみるべきとの考えもありますが、最高裁判所は、縁組届けとみなすこともできないとしています。
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