内縁関係の妻の相続の判例・・・

内縁関係の妻の相続の判例・・・

太郎と二郎の兄弟が呉服屋を営んでいたところ、花子は兄太郎と結婚し、呉服屋を手伝って大きな貢献をしました。

ところが、太郎が亡くなったので、花子は太郎の弟である二郎と結婚することになり、内縁の関係が生じました。

これまでの日本ではよくみられた逆縁婚です。

しかし、いろいろな事情があって、二郎は花子を捨てて他の女性と結婚し、五郎という子供が生まれました。

その後、二郎とその女性とは協議離婚をし、二郎と花子との内縁関係が復活しました、

ところが二郎が死亡したので、二郎の相続人五郎が二郎名義の土地を相続しました。

そこで、花子は、五郎の相続した土地には自分の働きがたくさん入っていると主張して、自分の持分権を主張しました。

これに対して、高等裁判所は、この土地の2分の1の持分権を花子に認めました。

内縁の妻には相続権はありませんが、二郎の名義である土地について、協力・扶助関係による共有持分を認めることによって、裁判所は、実質的に配偶者の相続権に準じる効果をもたらしました。

スポンサードリンク

重婚的内縁の法律上の保護・・・

重婚的内縁は、一夫一婦制の原則から考えて、法律上の保護を与えるべきでないという考えが有力でした。

しかし、現在では、具体的事情によっては保護すべき場合もあると考えられています。

重婚的内縁ということを知らないで内縁関係に入った人、あるいは男性の圧力により受身で重婚的内縁の立場に追い込まれた女性については、その重婚的内縁関係を不当に破棄された場合、財産分与や慰謝料を請求する権利を認める余地はあるとされます。

また、重婚的内縁が事故による死亡によって解消する場合には、加害者の対する損害賠償や慰謝料請求が重婚的内縁者にも認められる余地があるとされます。

また、法律上の結婚が全く破綻状態に陥っているが、種々の事情から離婚届が出されていないだけだと認められる場合にも保護される余地があるとされます。

スポンサードリンク

重婚的内縁関係の財産分与の判例・・・

衣料雑貨商の太郎と花子は夫婦でしたが、花子は結核で入院してしまいました。

そこで、和子は店員として店を手伝うようになり、母親代わりとして太郎と花子の子供の面倒を見ながら店の発展に大きく貢献しました。

その間に太郎と和子の間には、重婚的内縁関係を生じ、子供が生まれました。

太郎と花子は協議離婚し、その後花子は死亡し、太郎と和子の間は通常の内縁関係になったわけです。

ところが、その関係は、太郎の責任で破綻し、和子は太郎の不当破棄の責任を追及しました。

太郎と和子の間には、投資目的のため協同で購入した不動産があり、2件が和子名義、1件が太郎名義となっていましたが、太郎名義のものはすでに売却されています。

家庭裁判所は、両者の間の財産関係を次のように調整しました。

まず、太郎のためには、評価額約845万円の和子名義の土地建物を太郎名義とすることにしました。

次に、和子のためには、評価額約530万円の土地を和子名義のままとすること、太郎名義の土地の売却代金から担保分などを払った残金、約500万円のうち200万円を財産分与として和子に与えることとしました。

スポンサードリンク

婚姻関係破綻と重婚的内縁の年金の判例・・・

公務員である太郎と花子は夫婦でしたが、太郎は女性関係が多く、夫婦間に紛争が起こったため、2人の間に協約書が作られました。

その内容は、花子が4人の子供を引き取り、太郎はその扶養料を送るとともに、太郎の恩給を花子に渡すことを約しました。

太郎と花子は別居し、太郎は和子と内縁関係に入りました。

太郎と花子は離婚しないという約束でしたから、太郎と和子の関係は重婚的内縁となります。

太郎は花子と離婚したく離婚調停を申し立てましたが不調に終わりました。

そこで、太郎は花子との偽造の離婚届出をし、同時に太郎と和子の婚姻届出をし、さらに和子の連れ子2人との間に養子縁組届をしました。

花子はこれを怒り、太郎との協議離婚の無効確認訴訟、太郎と和子の婚姻の無効確認訴訟、さらに和子の連れ子2人との養子縁組の無効確認訴訟を提起し、全て勝訴しました。

その結果、太郎と和子は重婚的内縁関係であり続けました。

別居してから12年後に太郎は死亡しました。

太郎は前の職業を辞めた後、新しい職業に就きましたが、そこでも共済組合に入っていたので、その遺族共済年金が支給されることになりました。

しかし、受給資格者としての配偶者は内縁を含むことになっているので、法律上の配偶者と重婚的内縁者がいる場合には、どちらが受給者になるかが問題となります。

最高裁判所は、この事件における社会保障法上の配偶者は、法律上の妻である花子ではなく重婚的内縁の妻である和子であり、和子が年金を受け取るものと判断しました。

この事件においては、すでに太郎と花子との関係は形骸化し、事実上の離婚が生じているのに対し、太郎と和子の間には協同生活もあり、事実上の夫婦生活を営んでいたものだと認め、このような関係は、社会保障上保護すべきものとしました。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする