相続財産(承継執行文)・・・

相続財産(承継執行文)・・・

債務者に複数の相続人がいるにもかかわらず、そのうち甲が単独相続したとして付与された承継執行文によって開始された強制執行は、承継執行文の付与は甲の相続分を超える部分については違法というべきであるが、超過売却の場合を除き、これによる強制競売開始決定や売却手続がすべて許されなくなると解すべきでなく、配当までの手続は適法であり、配当の段階において、被相続人に対する債権額の甲の相続分のみが債権者に配当されるにすぎず、甲の債権者に対する請求異議の訴えは債権者の被相続人に対する債権額の甲の相続分を越える部分について執行不許を求める限度で理由があるとした事例があります。

民事執行法第七十三条

1  数個の不動産を売却した場合において、あるものの買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがあるときは、執行裁判所は、他の不動産についての売却許可決定を留保しなければならない。
2  前項の場合において、その買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある不動産が数個あるときは、執行裁判所は、売却の許可をすべき不動産について、あらかじめ、債務者の意見を聴かなければならない。
3  第一項の規定により売却許可決定が留保された不動産の最高価買受申出人又は次順位買受申出人は、執行裁判所に対し、買受けの申出を取り消すことができる。
4  売却許可決定のあつた不動産について代金が納付されたときは、執行裁判所は、前項の不動産に係る強制競売の手続を取り消さなければならない。

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相続財産(破産宣告)・・・

破産宣告後、破産者が死亡して、相続財産に破産手続が続行され、破産廃止決定により破産手続が終結した場合、相続人は免責を受ければ自己の固有財産に対する強制執行を免れることができますが、相続人による免責申立の可否につき、破産宣告後に破産者が死亡した場合には、その相続財産につき破産手続が続行されることになるところ、破産者の相続人は、旧破産法33条に則り、破産者に対して有する債権につき相続債権者と同一の権利を有する者として、破産債権者足りえることに照らすと破産者の相続人を破産手続の承継人と見ることはできず、相続財産自体を破産手続の当事者とみ、法人格なき財団に破産能力を認めるのを相当とし、破産者の相続人が破産手続の当事者であったことを前提に、免責の申立をする余地はないとして、その申立を却下した事例があります。

この場合、破産者の相続人は、限定承認や相続放棄をすることにより、相続債権者が相続人の固有財産に対して権利を行使するのを阻止するべきであるとされています。

旧破産法第三十三条

相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人ハ其ノ被相続人ニ対スル債権及被相続人ノ債務消滅ノ為ニ為シタル出捐ニ付相続債権者ト同一ノ権利ヲ有ス

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相続財産(無権代理人が本人を相続)・・・

無権代理人が本人を相続した場合、本人と代理人の地位が同一人に帰し、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものとされます。

この事例は、亡き甲はAに対し何ら代理権を付与したこともなく代理権を与えた旨を他に表示したこともないのに、Aは甲の代理人としてBに対し甲所有の本件土地を担保に他から金融を受けることを依頼し、甲の印鑑を無断で使用して本件土地の売渡証書に甲の記名押印をなし、甲に無断で同人名義の委任状を作成し同人の印鑑証明書の交付をうけこれらの書類を一括してBに交付し、Bは書類を使用して**年**月**日本件土地をCに代金**万円で売り渡し、**月**日売買を原因とする所有権移転登記がなされたところ、甲は**年**月死亡し、Aにおいてその他の共同相続人全員の相続放棄の結果単独で甲を相続したというものであり、AはBに対する金融依頼が亡き甲の授権に基づかないことを主張することは許されず、Bはこの範囲内において甲を代理する権限を付与されたものと解すべきこと、Bが授与された代理権の範囲をこえて本件土地をCに売り渡すに際し、Cにおいて土地売り渡しにつき代理権ありと信ずべき正当の事由があり、AはCに対し売買の効力を争い得ないとしたものです。

無権代理とは、本人を代理する権限(代理権)がないにもかかわらず、ある者が勝手に本人の代理人として振る舞うことをいう(広義の無権代理)。

広義の無権代理には代理権の外観について一定の要件を満たす場合に有権代理と同様の効果を認める表見代理が含まれるが、狭義の無権代理はこの表見代理が成立しない場合のみをいう。

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相続財産(本人が無権代理人を相続)・・・

本人が無権代理人を相続した場合、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても信義に反することなく、被相続人の無権代理行為は、一般に相続により当然無効となるものではないと解されています。

また、民法117条による無権代理人の債務は相続の対象になります。

このことは、本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の債務を免れることはできず、まして、無権代理人を相続した共同相続人のうち1人が本人であるからといって、本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか債務を免れうると解すべき理由はないとされています。

無権代理とは、本人を代理する権限(代理権)がないにもかかわらず、ある者が勝手に本人の代理人として振る舞うことをいう(広義の無権代理)。

広義の無権代理には代理権の外観について一定の要件を満たす場合に有権代理と同様の効果を認める表見代理が含まれるが、狭義の無権代理はこの表見代理が成立しない場合のみをいう。

民法第117条

1. 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2. 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

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