調停調書の更正・・・

調停調書の更正・・・

調停調書の違算、書損その他これに類する明白な誤謬があるときは、裁判所は、何時でも申したて又は職権により更正決定をすることができます。

審判又は調停調書更正の申立は、家事雑事件として立件されます。

和解調書更正について、明白な誤謬があるときは、当該和解調書の各記載、各条項全体の趣旨、訴訟手続上に現れた資料等から裁判所において表現しようとした事項について誤記遺脱等が存することが明確、容易に看取される場合をいい、その更正によって和解内容に実質的な変更を生じ、和解調書の記載内容の同一性を阻害するに至るような場合にまで、更正決定によって誤謬を是正することは許されないとし、本件更正決定は、和解調書上の賃貸借期間の定めに関する記載事項に新たに債務名義である明渡条項を付加することになるのであって、これは和解調書の実質的内容を変更し、和解調書の記載内容の同一性を阻害するに至っているから、違法であるとしたうえで、このような和解調書の記載内容の同一性を阻害するような更正決定は、たとえ確定していても効力を生じないと解すべきであり、明渡条項について執行力を認めることはできないから、執行力を排除するために請求異議訴訟で争うことができるとした事例があります。

原審判決は明渡条項の付加を認めています。

強制執行の実務では、被告が判決後に転居した後に、原告が強制執行を申し立てる際には、新住所を記載して同所を送達場所とする必要があり、判決に記載された住所と強制執行申立時の住所が異なる場合には、住民票上の住所の連続によって被告と債務者の同一性を明らかにする必要があります。

裁判所の意思と表現の間に食い違いがある場合とはいえない場合であっても、更正決定制度の目的、訴訟経済の観点から、特に判決に基づく執行、戸籍訂正、登記等を容易にするために必要があるときは、同条項の類推適用があると解され、また、表現の「誤謬」とまではいえない程度の不明確な表現を明確にし、あるいはより適切な表現に改めることも許されるというべきであることから、判決に基づく執行を容易にするため、本判決においても、これを更正して被告の住民票上の住所を併記するのが相当であるとして、原告の更正決定申立を認容しました。

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遺産分割調停の不成立・・・

調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的で濫りに調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないことができます。

調停をしない措置に対して、不服申立を許す規定はないので、即時抗告は認められません。

調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。

調停不成立として事件を終了させる処分は審判ではないので、これに対して即時抗告はもとより非訟事件手続法による抗告をすることもできません。

裁判所書記官が家事審判規則141条に基づき当事者に対して行なう通知も、調停手続における裁判に該当しないので、同様に解されます。

家事審判規則第百四十一条 第百三十八条又は第百三十八条の二の規定により事件が終了したとき、又は法第二十五条第二項の規定により審判が効力を失つたときは、裁判所書記官は、当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

遺産分割事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に審判の申立があったものとみなされます。

調停が成立しない場合には、調停の申立人が改めて審判の申立をするまでもなく、当然に審判手続に移行します。

「相続させる」遺言により、被相続人の遺産全部が指定分割された場合、遺留分減殺により遺産に関して生じた共有関係は、家事審判の対象となる相続財産の共有ではなく、遺産分割として申し立てられた調停の実質は共有物分割請求であり、その調停が不成立となった場合は事件は終了し、審判に移行しないとして、原裁判所の遺産分割審判を取消して調停申立の終了を宣言した事例があります。

(共同相続の効力)
民法第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

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不動産遺産取得の対抗要件・・・

民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法その他の登記に関する法令の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することができない。」と定めています。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

この第三者は、物権の得喪の原因たる行為の当事者及びその一般承継人以外の者で、不動産物権の得喪、変更につき登記がないことを主張する正当の利益を有する者をいいます。

詐欺又は強迫により登記の申請を妨げた第三者は、登記がないことを主張することができません。

他人のため登記を申請する義務を負う者も原則として登記がないことを主張することができません。

遺産分割前に共同相続人の1人が遺産である不動産の自己の持分を第三者に譲渡し、第三者はその登記を得ている場合、第三者は遺産分割により当該不動産を取得した他の共同相続人に権利取得を対抗することができます。

(遺産の分割の効力)
民法第909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

共同相続人の1人が遺産分割により土地を取得したが、その登記が未了のうちに他の共同相続人が法定相続分に見合う持分を第三者に譲渡し、第三者はその登記を得ている場合、遺産を取得した共同相続人はその登記をしていないと自己の法定相続分をこえる権利の取得を右第三者に対抗することができず、第三者は他の共同相続人の持分についてその権利取得を主張することができます。

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金銭債権・借地権遺産取得の対抗要件・・・

遺産分割による金銭債権の取得につき自己の法定相続分を超えた債権を取得した者が債務者に対してその履行を求めるには、債権譲渡について、債務者に対する通知、債務者の承認の対抗要件を備えることが必要です。

譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時に遡って有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできず、債務者の債権譲渡の承諾が右債権に対する国の滞納処分後にされたときは、国に対して債権譲渡の効力を主張できないとされます。

(無権代理行為の追認)
民法第116条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

共同相続人の間で遺産である借地権及び地上建物の取得者をAとする遺産分割が成立しても建物が未登記であって遺産分割の登記がされていないときは、Aは法定相続分を超えて権利承継したことを地主に対抗することができず、地主は相続人全員を賃借人として扱うことができるとした事例があります。

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