相続の対象とならない権利義務(組合契約)・・・

相続の対象とならない権利義務(組合契約)・・・

民法上の組合契約に基づく組合員は死亡により脱退しますが、組合契約ないしそれに類似する無名契約に基づく共同事業において、契約当事者間に、同人らが死亡したときはその相続人が当然に共同事業に関する被相続人の地位を相続する旨の合意が成立していた場合、共同事業の内容が映画興行であって、その事業経営者の地位が一身専属的な個人的性格の強いものと考えられないときなどにはその承継が認められますが、契約をもって委任された業務執行者の地位自体までが相続の対象とならないとされます。

民法第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

特別縁故者に対する相続財産分与

民法第679条

前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
一  死亡
二  破産手続開始の決定を受けたこと。
三  後見開始の審判を受けたこと。
四  除名

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相続の対象とならない権利義務(祭祀財産)・・・

系譜、祭具及び墳墓の所有権等の祭祀財産は、相続財産とは別の承継方法が定められていますが、実際には、遺産分割審判手続の中で承継者が決められる場合もあります。

遺産分割調停で決めることもできます。

民法第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

特別縁故者に対する相続財産分与

民法第897条

1. 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2. 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

遺産分割調停

被相続人が亡くなり,その遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。
調停手続を利用する場合は,遺産分割調停事件として申し立てます。

この調停は,相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。

調停手続では,当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらったり,遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで,各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し話合いが進められます。

なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,家事審判官(裁判官)が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。

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相続の対象とならない権利義務(死亡保険金)・・・

養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のない限り、この契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当であるとされ、この場合には、当該保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に、相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解するべきであるとされています。

旧商法676条2項にいう「保険金額を受け取るべき者の相続人」とは、指定受取人の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する者と解されていますが、指定受取人が死亡し、指定受取人の当時の唯一の相続人が保険契約者兼被保険者であり、その保険契約者が保険金受取人を再指定する権利を行使しないまま死亡した場合には、保険金受取人は不存在となるとして旧商法676条2項の適用、準用の主張を排して、指定受取人の死亡時における指定受取人の第三順位の相続人又はその順次の法定相続人の保険金支払請求を棄却した事例があります。

旧商法第六百七十六条

1 保険金額ヲ受取ルヘキ者カ被保険者ニ非サル第三者ナル場合ニ於テ其者カ死亡シタルトキハ保険契約者ハ更ニ保険金額ヲ受取ルヘキ者ヲ指定スルコトヲ得
2 保険契約者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハスシテ死亡シタルトキハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人ヲ以テ保険金額ヲ受取ルヘキ者トス

保険契約者Aと生命保険会社間の被保険者A、満期受取人A、死亡保険金受取人B、高度障害保険金受取人は死亡保険金受取人とする保険約款は公序良俗に反して無効であることを理由とする相続人らの遺産確認請求が棄却された事例があります。

株式会社が取締役を被保険者とする生命保険金を死亡取締役の遺族に支給する場合、旧商法296条の株主総会の決議を要するとしたうえ、支給につき実質的な株主全員の承諾があり、株主総会の決議があったものとして扱うのが相当であるとした事例があります。

旧商法第二百九十六条

会社ハ取締役会ノ決議ニ依リ社債ヲ募集スルコトヲ得

**株式会社を保険契約者、保険金受取人、従業員を被保険者とする死亡保険金が被保険者の死亡により同社に支払われた場合、会社は従業員の遺族に対して、既払い額及び保険料を控除した残額を支払うべきであるとした事例があります。

民法第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

生命保険契約とは

契約をする一方の者(保険者)が相手方(保険契約者)、または第三者(被保険者)の生死に関し、一定の金額(保険金)を支払うことを約束し、相手方がこれに対して報酬(保険料)を払うことを約束する契約のこと(旧商法第673条)であります。

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相続の対象とならない権利義務(死亡退職金)・・・

国家公務員の死亡退職金は国家公務員退職手当法11条により受給の第一順位は「配偶者(届出をしていないが、職員の死亡時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」と規定されていることころ、これまでの生活状況に照らすと死亡職員と被告は事実上の夫婦と認められるとして、被告に受給権があるとした事例があります。

国家公務員退職手当法第十一条

この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  懲戒免職等処分 国家公務員法第八十二条 の規定による懲戒免職の処分その他の職員としての身分を当該職員の非違を理由として失わせる処分をいう。
二  退職手当管理機関 退職(この法律その他の法律の規定により、この法律の規定による退職手当を支給しないこととしている退職を除く。以下この章において同じ。)の日におけるイからホまでに掲げる職員の区分に応じ、それぞれイからホまでに定める機関をいう。ただし、ホに定める機関が当該職員の退職後に廃止された場合における当該職員については、当該職員の占めていた職(当該職が廃止された場合にあつては、当該職に相当する職)を占める職員に対し懲戒免職等処分を行う権限を有する機関(当該機関がない場合にあつては、懲戒免職等処分及びこの章の規定に基づく処分の性質を考慮して政令で定める機関)をいう。
イ 国会職員法 (昭和二十二年法律第八十五号)第一条第一号 に規定する各議院事務局の事務総長 両議院の議長が両議院の議院運営委員会の合同審査会に諮つて定める機関
ロ 裁判官 最高裁判所
ハ 検査官 会計検査院
ニ 人事官 人事院
ホ イからニまでに掲げる者以外の職員 国家公務員法 その他の法令の規定(国家公務員法第八十四条第二項 (裁判所職員臨時措置法 (昭和二十六年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。)を除く。)により当該職員の退職の日において当該職員に対し懲戒免職等処分を行う権限を有していた機関(当該機関がない場合にあつては、懲戒免職等処分及びこの章の規定に基づく処分の性質を考慮して政令で定める機関)

条例により定められた受給者に支給された死亡退職金及び公務災害補償金は遺産に属しないとした事例があります。

死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって、配偶者があるときは子は全く支給を受けないなど、受給者の範囲、順位につき民法の相続人の順位と異なる定めがされている場合には、退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利であるとされます。

死亡退職金の支給規程のない財団法人が、死亡した理事長の配偶者に対して死亡退職金の支給決定をしたうえ、これを支払った場合、その死亡退職金は、亡き理事長の相続財産として相続人の代表者としての配偶者に支給されたものではなく、相続という関係を離れて配偶者に支給されたものであるとされます。

会社役員に対する死亡退職金の受取人を株主総会が定めなかったときは、相続財産になると解し遺産分割の対象財産とした事例があります。

会社が死亡退職金の支給について何らの規定をしていることにつき何らの資料のない場合、その受給権者は相続人全員と推認され、共同相続人は死亡退職金を遺産として遺産分割協議でその取得者を定めることができます。

民法第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

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