取得時効の中断・・・
時効は中断すると、それまで進行してきた時効期間が中絶して、今までの時効期間が効力を失います。
中断後に占有を取得すれば、新しく時効は進行しますが、中断前の占有期間を加算できません。
所有権の時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人に占有を奪われたとき、中断します。
(占有の中止等による取得時効の中断)
民法第164条 第162条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。
時効の中断事由は、請求、差押、仮差押、仮処分、承認です。
(時効の中断事由)
民法第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
1.請求
2.差押え、仮差押え又は仮処分
3.承認
(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
民法第148条 前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
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取得時効の中断事由・・・
時効の中断事由は、請求、差押、仮差押、仮処分、承認です。
(時効の中断事由)
民法第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
1.請求
2.差押え、仮差押え又は仮処分
3.承認
①請求
請求には、裁判上の請求、支払督促、和解及び調停の申立、破産手続参加、再生手続参加又は更正手続参加、催告があります。
(裁判上の請求)
民法第149条 裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
(支払督促)
民法第150条 支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
(和解及び調停の申立て)
民法第151条 和解の申立て又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事審判法(昭和22年法律第152号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、1箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
(破産手続参加等)
民法第152条 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
(催告)
民法第153条 催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
裁判上の請求は、時効の目的たる権利を民事訴訟手続により主張することです。
裁判上の請求として、時効中断の効力のある民事訴訟は、給付請求に限らず、確認訴訟のほか、所有権移転登記手続請求訴訟における被告の自己に所有権存在を理由とする請求棄却を求める主張にも時効中断の効力を認めています。
訴訟提起による時効中断の効力発生の時期は、訴状受理の時であって、訴状送達の時ではありません。
裁判上の請求は、取得時効の主張者に対するものでなければなりません。
訴訟提起により、訴状受理の時に時効は中断しますが、訴えの却下又は取下げの場合には、中断の効力を生じません。
催告後に提起した訴えが却下されても、法定期間内に更に裁判上の請求をしたときは、民法153条により時効中断の効力を生ずると解されています。
係争地域が自己に属することの主張は前後変ることなく、ただ単に請求を境界確定から所有権確認に変更したにすぎない場合は、境界確定の訴え提起によって生じた時効中断の効力には影響はありません。
催告は、6ヶ月以内に裁判上の請求などの手続をとらなければ、時効中断の効力を生じないことから、予備的、暫定的なものと解されています。
時効期間内に農地所有権移転登記請求訴訟が提起され、時効期間経過後に知事に対する許可申請手続の請求が追加されたときは、これにより、右許可申請の請求権の消滅時効は中断されます。
②差押、仮差押、仮処分
差押、仮差押、仮処分は中断事由ですが、権利者の請求により又は法律の規定によらないために取消されたときは、時効中断の効力を生じません。
申立取下げの場合も同様です。
(差押え、仮差押え及び仮処分)
民法第154条 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
③承認
承認は、権利存在の事実を認識する相手方の一方的行為であり、権利者の何らの行為を要件とするものではありません。
時効中断の効力を生ずる承認をするには、相手方の権利につき処分の能力又は権限のあることを必要としません。
(承認)
民法第156条 時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。
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取得時効中断の効果 ・・・
民法147条の時効中断は、当事者及びその承継人の間にのみその効力があります。
(時効の中断事由)
民法第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
1.請求
2.差押え、仮差押え又は仮処分
3.承認
(和解及び調停の申立て)
民法第151条 和解の申立て又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事審判法(昭和22年法律第152号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、1箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者が買収計画又は買収処分に対する取消訴訟を提起しても、右土地につき売り渡しの相手方のために進行する取得時効が中断されず、時効を中断するにためには、右土地の売り渡しの相手方を被告として買収計画又は買収処分の取消を条件とする原状回復の請求訴訟(土地の返還、所有権取得登記の抹消等の請求訴訟又は右取消によって土地所有権を回復すべき法律上の地位に関し条件付権利確認請求訴訟)などを提起します。
いったん時効が中断してもその中断事由が終了した時から更に時効は進行を始めます。
裁判上の請求により中断した場合は、裁判確定の時から新たに時効が進行します。
(中断後の時効の進行)
民法第157条 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。
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取得時効による登記・・・
時効取得者は、前主とは当事者の立場にあるので、登記なしで、権利を主張できます。
不動産の時効取得者は、時効完成時の原権利者に対しては、原権利者が時効完成後当該不動産を第三者に譲渡し、その後売買契約を合意解除した場合でも、登記なくして時効による所有権の取得を主張することができます。
時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から所有権の譲渡を受け、その旨の登記を受けた者に対して、登記なしで、時効による所有権を主張できます。
取得時効の進行中に原所有者から所有権の譲渡を受け、時効完成後にその旨の登記を受けた者に対しても同様に解されています。
土地所有者甲が乙を買主とする売買契約をして所有権移転の請求権仮登記後、丙が乙から売買予約上の買主たる地位を譲り受け、右登記につき移転の附記登記を経由した。
他方で、土地占有者丁は、昭和45年に10年の取得時効が完成した場合、乙が有していた買主の地位はそのまま丙の地位となったのであり、丙のために仮登記により保全されていた買主たる地位は丁につき取得時効が完成したことにより消滅したと解すべきであり、したがって、買主である丙は時効の当事者であり、民法177条の第三者ではなく、丁は、時効による所有権の取得を登記なくして丙に対抗することができます。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
取得時効完成後に前主から所有権の譲渡を受け、その旨の登記を受けた者は、第三者に該当するので、時効取得者はこれに対しては、登記なしでは時効による所有権の取得を主張できません。
不動産を時効取得した者は、その旨の登記を経ないでいる間に、第三者による登記名義人に対する債務名義に基づいて強制競売手続が開始され強制競売申立記入登記がされたときは、その取得した所有権をもって執行債権者に対抗することができません。
不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗し得ないが、第三者の右登記後に、占有者がなお引き続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくても時効取得をもって対抗し得ると解されています。
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