贈与の知識・・・

贈与の知識・・・

不動産の贈与は、贈与者が自己所有の不動産を無償で受贈者に贈与する意思表示をし、受贈者がこれを受諾することにより効力を生じます。

他人の財産権であっても贈与の目的としたときは、贈与義務者は自らその財産権を取得して受贈者に移転する義務を負うもので、贈与契約として有効に成立します。

贈与契約を書面ですると、その存在により贈与者の贈与意思は明確となり、かつ、贈与者は贈与を撤回することができなくなります。

贈与が書面によってされたというためには、贈与の意思表示自体が書面によってされたこと、又は書面が贈与の直接当事者間において作成され、これに贈与その他の類似の文言が記載されていることは、必ずしも必要ではなく、当事者の関与又は了解の下に作成された書面において贈与のあったことを確実に読み取れる程度の記載があれば足ります。

贈与は必ずしも書面による必要はありませんが、書面によらない贈与は、各当事者はこの贈与を撤回することができます。(民法550条)

この撤回権は消滅時効にかかりません。

民法550条の立法趣旨は、贈与者が軽率に贈与契約をなすことを戒めるとともに証拠が不明確となり後日紛争の生ずることを避けようとすることにあります。

書面によらない贈与であっても履行の終わった部分については撤回することができません。

<判例>

①Aから不動産を取得したBが、これをCに贈与した場合。

Bが司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人であるAに対し、この不動産をCに譲渡したので、Aから直接Cに所有権移転登記をするよう求める旨の内容証明郵便を差し出した場合、この内容証明は民法550条にいう贈与書面に該当します。

②AがBに不動産贈与した契約で、Aが贈与したとしても、書面によらない贈与として、Aが亡くなった後、Aの相続人が贈与を取り消す旨、主張した事案。

Aはその不動産の各仮登記の申請書に贈与契約あるいは売買契約と記載して各仮登記の申請をしており、この申請書にAの意思が確定的に表示されているとみることができますので、この贈与は書面による贈与ということができるとして書面によらない贈与の主張を排斥しました。

③受贈者は贈与者と内縁の夫婦として、本件建物に住んでいましたが、贈与者は実印と本件建物の登記済権利証を受贈者に渡していました。

これは、受贈者に本件建物を贈与することを約束したわけですから、贈与者は受贈者に対して、簡易の引渡による本件建物の占有移転を行ったとみるべきであり、本件建物の贈与は、これにより履行を完了したと認めました。

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贈与契約の否定判例・・・

子が利用関係を明確にすることなく、親所有の土地上に自己名義の建物を所有している場合、親の死亡後、他の相続人とその土地の子への贈与が成立するかについて争いがある場合。

子は他の相続人を相手にして土地の贈与による所有権移転登記手続を次の理由で求めました。

①被相続人がその土地を取得する前、子は地主に代わって地代を払っていたこと。

②子は被相続人が亡くなった後、固定資産税、都市計画税を払ったいたこと。

③子はこの土地上に自分名義の建物を建築することの承諾を得たこと。

しかし、次の理由で、贈与契約は否定されました。

①被相続人と同居し、容易に作成することが可能な贈与の事実を証する書面が作成されていないこと。

②土地の名義変更登記をする別段の支障がないにもかかわらず、名義変更していなかったこと。

③被相続人が子に、この土地の無償貸与する書面が存在すること。

これらの理由で、被相続人の贈与の意思は明らかであるとはいえず、子のいう贈与の事実を認めることはできないとした判例です。

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贈与の無効・・・

<公序良俗違反による無効>

①愛人関係維持のための贈与は公序良俗違反を理由として無効とされます。

愛人が家屋を所有してる場合、その使用関係は愛人関係の継続を存続期間とし贈与者の死亡によって終了する使用貸借契約であり、贈与者の正当な相続人の明渡請求を拒むことができないとする事例があります。

②愛人関係にあり、男は女に銀行預金として預けた金額を元本として、その元本から生ずる利息を女の生活費とし、愛人関係解消のときは元本を返還する約定に基づく金員の預託は、愛人関係維持のための不法原因に基づく給付であり、愛人関係を解消し、返還の合意が成立したかどうかにかかわりなくその返還を求める事ができないとする事例があります。

③事実上の離婚後、夫の内縁の妻に対する贈与が、不倫関係の維持を目的とした公序良俗に反する旨の相続人の主張が認められなかった事例があります。

③妻子ある男が他の女との男女関係を解消する場合、このような愛人関係の解消は道徳上の義務であり、その自由意志に基づく履行のみを期待し得るにすぎない。

これを強制する目的で、愛人関係解消を違反として、制裁金を課すのは、公序良俗違反であり、違反したときにその女の父に対して制裁金を支払う約定及び連帯保証は無効でであるとする事例があります。

<意思無能力による無効>

贈与契約当時、贈与者は自己の行為の結果を弁識するに足りるだけの精神能力を具備しておらず、意思能力を欠いていたとして、金銭の贈与契約が無効とされた事例があります。

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贈与の履行・・・

書面によらない贈与も、履行の終わった部分は撤回することができなくなります。

それは、贈与の履行が終われば贈与意思が明確になったと考えられるからです。

履行が終わったとは、贈与者の贈与の意思が外部に対して明確に示された状態を意味することになります。

不動産の贈与について、履行が終わったかどうかの判例は次になります。

①不動産の引渡しがあれば登記が済んでいなくても履行が終わったものとみています。

②不動産の権利証の交付があれば、物件の引渡があったものと推定しています。

③贈与建物に贈与当事者双方が居住していれば、贈与契約の成立と同時に引き渡しは完了し履行は終わったとしています。

④建物の所有権の移転があっただけで履行を終わったものとすることはできないが、その占有の移転があれば履行は終わったものとみるべきであるとしています。

⑤第三者のためにする売買契約があります。

例えば、養親が不動産代金を売主に支払い、所有権は売主から養子に移転し、代金授受と同時に移転登記をする場合です。

この場合、養子は売主から移転登記を受けたことによって養親と養子との関係で贈与の履行が終わったものとされます。

⑥書面によらない負担付贈与契約に基づき、当事者の一方が債務を履行したときは、書面によらない贈与であることを理由にこれを取り消すことができないとされています。

⑦内縁の夫が妻と居住していた家屋を妻に贈与するに際して、自己の実印とその家屋を買い受けたときの契約書をともに妻に交付する等の事実関係がある場合、簡易の引渡しによる占有の移転があったものとみるべきですから、この贈与の履行は終わったものと解すべきであるとしています。

⑧登記がなされたときは、不動産の引渡しの有無を問わず、履行が終わったものと解すべきであるとしています。

⑨農地の贈与については、農地法3条1項による知事の許可を受けるまでは、農地の引渡しがあっても履行が終わったことにはならないとしています。

⑩未登記建物について書面によらない贈与契約がされた場合、贈与者の意思に基づき、直接、受贈者名義に所有権保存登記が経由されたときは、贈与の履行が終わったと解すべきとされます。

⑪登記簿自体が焼失している場合には、土地に関する一切の権利関係書類を引き渡し、かつ、贈与者がその土地の所有権移転請求訴訟で贈与した旨の証言をしていれば、贈与は移転登記なくして完了しているとしています。

⑫受贈者が負担付贈与契約の約定に基づき、家族ともども従前居住していた住居を引き払って、その建物に転居し、贈与者死亡の時点でもその建物に居住していた場合、贈与者死亡により死因贈与の効力が生じ、受贈者がその所有権を取得した時点で、建物の引渡があったというべきで、本件死因贈与の履行は終了しているとした事例があります。

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