根保証とは・・・
◇根保証とは
根保証とは、継続的売買契約や継続的金融取引から、将来生ずる不特定の債権になされる包括的な保証をいいます。
限度額、保証期間の定めがないものを特に包括根保証といいます。
根保証は、下記のような債権を担保します。
①不特定な債務
②増減する債務
③将来発生する債務
④多数の未発生債務
⑤継続的に発生する債務
⑥予測不能な債務
⑦長期にわたる債務
根保証には、このような特徴があることから、保証人の責任が拡大する可能性があります。
逆に言えば、保証人は永続的に保証責任を負わされ、予測不可能な責任も負わされる可能性が出てきます。
このような責任を是正するため、下記のような判例が出ています。
①保証責任は「取引通念上相当な範囲」に限定されます。
②期間の定めのない根保証契約においては、相当期間経過後は保証契約を解除できます。
③期間の定めの有無にかかわらず、資産状態の急激な悪化や保証人の主債務者に対する信頼が害されるに至ったなど保証人として解約申し入れをするにつき相当の理由がある場合に解約できます。
④包括根保証は人的信頼関係を基礎としていることから、相続性を否定されています。
◇限定根保証と包括根保証の違い
限定根保証は、一定額または一定期間までの債務についてのみ保証するものです。
包括根保証は、保証限度額も保証期間も定めない保証です。
包括根保証は、根保証に保証限度、期間について定めがありませんが、判例で制限付でその有効性を認めています。
包括根保証の制限は下記になります。
①中途解約権
保証人は下記の場合に、いつでも保証契約の中途解約権を一方的に行使できます。
・相当期間として3年くらいの経過
・保証したときと債務者の事情が相当変わってきたとき
・被保証債務が完済になったとき
・保証人である代表取締役が任期満了で退任したとき
②保証限度額の制限
③根保証契約の相続性の否定
死亡時の残高限りの保証となる。
④取締役会による根保証の承認
⑤権利濫用による救済
主たる債務者に経済的状態が悪化したのに、保証人にはなにも知らせず、支払い請求をした場合、権利濫用が問題になります。
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貸金等根保証契約とは・・・
◇貸金等根保証契約とは
貸金等根保証契約では、保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものおよびその保証債務について約定された違約金または損害賠償の額について、極度額を限度として、履行する責任を負うことになります。
保証債務を負うことになる、具体的な主たる債務の元本は、元本確定期日までに発生したものに限られます。
貸金等根保証契約は、極度額を書面で定めなければ契約が無効となります。
元本確定期日を契約締結の日から5年以内として書面で定めなければなりません。
元本確定期日は、契約締結の日から5年を経過する日より後の日と定めた場合、またははじめから契約書に定めなかった場合は、契約を締結した日から3年を経過した日となります。
元本確定日を変更する場合に、変更後の元本確定日がその変更した日から5年を経過する日より後の日となるときは、原則としてその変更は無効となります。
元本確定日の前でも、債権者が、主たる債務者または保証人の財産について強制執行等の申立をしたり、主たる債務者または保証人が破産、死亡したときには、保証すべき主たる債務の元本が確定します。
◇信用保証協会とは
信用保証協会は、信用保証協会法によって設立された特殊法人で、中小企業などが銀行、その他の金融機関から貸付などを受けるについて、一定の保証料をとって、その貸付金等の債務の保証をすることを主な業務としています。
信用保証協会の保証は、特約により下記の民法保証と異なります。
①保証協会には負担部分がない
②代位弁済の日の翌日から年14.6%による遅延損害金を支払う。
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保証と時効とは・・・
主たる債務が時効により消滅すると保証債務も消滅します。
主たる債務者が時効完成後、債務承認をした場合でも、保証人は時効を援用でき、保証人は保証債務を免れることができます。
この場合、保証人は、保証債務の時効の援用も、主たる債務の時効の援用もできます。
前者の場合は直接保証債務が消滅し、後者の場合は保証人との関係において主たる債務は消滅し附従性により保証債務も消滅します、これを時効中断効の相対性といいます。
保証人が弁済を続けていれば、保証債務は承認により時効中断しますが、主たる債務の時効は中断しません。
保証人はに対して訴えや差押をしても同じです。
この場合の保証人は連帯保証人ではありません。
連帯保証人に対して、その一部弁済、差押などがあっても主たる債務者に時効中断の効力を生じません。
しかし、連帯保証人に対する訴えの提起などの請求は、主たる債務者の時効を中断します。
主たる債務の消滅時効中断のため、連帯保証人に対して、再度連帯保証債務履行請求の訴えを提起することは可能です。
物上保証人について、主たる債務者の債務承認により時効は中断します。
物上保証人が、債務承認しても、そもそも物上保証人は債務を負担していないので、主たる債務の時効は中断されません。
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保証と抵当権とは・・・
保証人は将来発生する求償債権のためにあらかじめ抵当権を設定できます。
根抵当権設定もできます。
その場合の債権発生原因は、保証委託契約になります。
保証人は自分で抵当権をつけていなくても、債権者が抵当権をつけていれば、それに代位して求償債権に抵当権をつけることができます。
保証人は、抵当権移転の付記登記請求を抵当権者に行なうことができます。
付記登記とは、それ自身の登記の順序による独立の番号を付されることはなく、既存の登記に付記してされる登記です。
質権でも譲渡担保でも同じです。
債権者が主債務者との間で公正証書を作っていれば、その権利も保証人に移るので、保証人は、その公正証書を利用して承継執行の手続きをとって強制執行することができます。
一部弁済した保証人への抵当権の移転は準共有となり、一部移転の登記もできますが、抵当権実行があった場合、競売代金は債権者が優先し、残りが保証人に与えられることになります。
保証人は競売申し立てはできないとされています。
根抵当権の場合、保証人は代位できません。