瑕疵の通知義務を履行した買主の権利の内容と消長・・・

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瑕疵の通知義務を履行した買主の権利の内容と消長・・・

最判平成4年10月20日(損害賠償請求事件)
民集46巻7号1129頁、判時1441号77頁、判夕802号105頁

<事実の概要>

Xは、各種靴下の輸出入・卸売等の業務を営む株式会社である。

Xは、昭和54年9月27日、Y株式会社からパンティストッキング(以下、「本件ストッキング」)11万1000デカを、代金1デカあたり500円(合計5550万円)で購入した。

本件ストッキングは倉庫業者に寄託されており、引渡しは荷渡指図書によってなされた。

Xは、本件ストッキングをA株式会社らに売却したが、その直後の昭和54年末から翌55年初めにかけて、売渡先から相次いで、つま先に穴あきがある、ゴムひも切れがある等の瑕疵があるため返品する旨の苦情を受けた。

Xが売渡先から商品を取寄せるなどして調べたところ、上記のような瑕疵のあるものが多数混在していることが確認された、そこで、Xは直ちにYにその旨の申入れをした。

Xは売渡先と交渉して、返品の要求は抑えたものの、値引き要求には応諾せざるを得なくなり、また、まだ売却していなかった品物についても、B株式会社らに規格外品として安価に売却せざるを得なかった。

本件ストッキングの最後の転売は、昭和55年3月に行なわれた。

本件訴訟は昭和58年12月に提起され、XはYに対し、Aらとの取引における値引相当額及びBらとの取引における得べかりし利益について、瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求している。

原審は第1に、商法526条にいう「目的物を受取たるとき」とは、現実に目的物を受取って検査しうる状態におくことをひつようとするのであって、本件ストッキングを検査するには個別包装を開封してから再び体裁よく入れ直すなどしなければならないため、Xによる本件ストッキングの検査は経済的・営業的には不可能であって、Xが転売先から瑕疵ある旨の通知を受けた時点で直ちにYに通知すれば本条の通知として足りる、とした第1審の判断を是認した。

第2に、商法536条によると損害賠償請求権は6ヶ月以内に行使しなければならないのに、本件訴訟の提起はこれをはるかに超える時期になされたのであるから、Xの損害賠償請求権の行使は不適法であるというYの主張に対して、同条は、商人間売買における買主の目的物検査義務及び瑕疵あるときの通知義務に関する規定であり、これを怠ったときに損害賠償請求等をし得なくなるというのであって、損害賠償請求権の不行使によるその請求権の消滅に関する規定ではないから、Yの主張はそれ自体失当であるとした。

以上の判断に基づき、原審はXの損害賠償請求を認容した。

これに対しYが上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

「商法526条は、商人間の売買における目的物に瑕疵又は数量不足がある場合に、買主が売主に対して損害賠償請求権等の権利を行使するための前提要件を規定したにとどまり、同条所定の義務を履行することにより買主が行使し得る権利の内容及びその消長については、民法の一般原則の定めるところによるべきである。

従って、右の損害賠償請求権は、民法570条、566条3項により、買主が瑕疵又は数量不足を発見した時から1年の経過により消滅すると解すべきであり、このことは、商法526条の規定による右要件が充足されたこととは関わりがない。

そして、この1年の期間制限は、除斥期間を規定したものと解すべきであり、また、右各法条の文言に照らすと、この損害賠償請求権を保存するには、後記のように、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はないと解するのが相当である。」

「右損害賠償請求権を保存するには、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」

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特約店契約の解除・・・

最判平成10年12月18日(地位確認等請求事件)
民集52巻9号1866頁、判時1664号3頁、判夕992号94頁

<事実の概要>

Yは、日本国内で最大の売上高を有する化粧品メーカーである株式会社資生堂(以下、「資生堂」)の製造する化粧品を専門に取り扱う販売株式会社であり、Xは、化粧品の小売販売等を業とする株式会社である。

Yは、資生堂化粧品の販売先である各小売店と同一内容の特約店契約を締結して、化粧品の供給を行なっていた。

昭和37年、X・Yは特約店契約(以下、「本件特約店契約」)を締結し、以後Xは特約店として、Yとの取引を継続してきた。

本件特約店契約には、①契約の有効期間は1年間、②当事者双方に異議がないときには更に1年間自動的に更新される、③両当事者は、契約の有効期間中でも文書による30日前の予告をもって中途解約できる旨の定めがあった(以下、「本件解約条項」)。

またXは、本件特約店契約上、資生堂化粧品の専用コーナーの設置、Yの主催する美容セミナーの受講などの義務を負い、化粧品の販売にあたり、顧客に化粧品の使用方法等を説明し、顧客からの相談に応ずること(以下、「対面販売」)が義務付けられていた。

Xは、昭和60年2月頃から、単に商品名・価格・商品コードを記載しただけのカタログを事業所等の職場に配布して、電話やファクシミリでまとめて注文を受けて配達するという方法によって化粧品を販売しており、資生堂化粧品についても同様の方法で販売していた。

この場合、商品説明は電話での問い合わせに答える程度であり、顧客と対面しての説明・相談等は全く予定されていなかった。

Yは、昭和62年末ころ、Xが上記のような販売方法をとっていることに気づき、上記カタログから資生堂化粧品を削除するようにXに申し入れた。

Xはこれに応じたが、その後Xが上記のような販売方法をとっていることに気づき、上記カタログから資生堂化粧品を削除するようにXに申し入れた。

Xはこれに応じたが、その後Xが資生堂化粧品のみを掲載したカタログを別冊として使用していることが判明した。

平成元年4月、YはXに対し、是正勧告書と題する書面によって、上記のような販売方法を是正するように勧告した。

同年9月、X・Yは合意書を作成して、Xは今後資生堂化粧品についてカタログによる販売を行なわず、本件特約店契約に適合した方法により販売することなどを取り決めた。

しかし、かかる合意書の作成にもかかわらず、Xが従来の販売方法を変更する態度を全く示さなかったので、平成2年4月、Yは、本件解約条項に基づき商品の引渡しを受けるべき地位にあることの確認及び注文済みの商品の引渡しを求めている。

第1審はXの請求を一部認容した。

原審は、本件のような特約店契約においては約定解除権の行使が全く自由であるとは解しがたく、解除権行使には、取引関係を継続し難いようなやむを得ない事由が必要であるとした上で、本件特約店契約における対面販売の義務付けには一定の合理性があり、Xの行為は債務不履行にあたりかつ決して軽微なものとはいえないとして、Yの本件解約を有効なものと判断し、Xの請求を棄却した。

Xは、本件特約店契約における対面販売の義務付けは実質的に値引き販売を防止する目的でなされているものであり、独占禁止法19条が禁止する不公正な取引方法のうち、再販売価格の拘束(一般指定12項)及び拘束条件付取引(同13項)に該当するとして、上告した。

<判決理由>上告棄却。

一般指定13項について「メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として尊重されるべきであることに鑑みると、これらの者が、小売業者に対して、商品の販売に当り顧客に商品の説明をすることを義務付けたり、商品の品質管理の方法や陳列方法を指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、それ自体としては公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、一般指定の13にいう相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を付けた取引に当るものではないと解するのが相当である。」

これを本件についてみると、特約店に対面販売を義務付ける理由は、「これによって、最適な条件で化粧品を使用して美容効果を高めたいとの顧客の要求に応え、あるいは肌荒れ等の皮膚のトラブルを防ぐ配慮をすることによって、顧客に満足感を与え、他の商品とは区別された資生堂化粧品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を保持しようとするところにあると解されるところ、化粧品という商品の特性に鑑みれば、顧客の信頼を保持することが化粧品市場における競争力に影響することは自明のことであるから、Yが対面販売という販売方法を採ることにはそれなりの合理性があると考えられる。」

そして、Yは他の特約店とも本件特約店契約と同一の約定を結んでおり、実際にも相当数の資生堂化粧品が対面販売により販売されているから、Xにこれを義務付けることは、一般指定13項にいう拘束条件付取引に当らない。

一般指定12項について「販売方法に関する制限を課した場合、販売経費の増大を招くことなどから多かれ少なかれ小売価格が安定する効果が生ずるが、右のような効果が生ずるというだけで、直ちに販売価格の自由な決定を拘束しているということはできないと解すべきであるところ、Yが対面販売を手段として再販売価格の拘束を行なっているとは認められないとして原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。」

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売上予測等の提供に関するフランチャイザーの責任・・・

東京高判平成11年10月28日(損害賠償請求控訴事件)
判時1704号65頁、判夕1023号203頁

<事実の概要>

Yはフランチャイズ事業を展開する株式会社である。

Xは某メーカー企業の元開発部長で、同社を希望退職後、約2年間にわたり友人と事業を行なった経験を有する者であるが、独立して事業を経営する機会を窺っていたところ、Yの運営するフランチャイズの説明を受け、Yのフランチャイザーとして開業することを希望するに至った。

平成6年11月、XとYの担当者は店舗候補地をいくつか視察した上、A地にある賃貸物件が適当であるとして開業準備に着手した。

Yは売上見込等を付した新規出店事業計画を作成し、Xはこれを資料として国民金融公庫に融資の申込をしたが、立地条件が悪いこと、Xが事業の素人であること等を理由として、融資を拒絶された。

このためXの開業は一旦頓挫したが、リース会社であるB株式会社からから資金を調達できることとなり、平成7年2月、前記賃貸物件を賃借し、Yとの間で加盟店契約(以下、「本件契約」)を締結した。

同年3月、Xは本件契約に基づきクリーニング店(以下、「A店」)を開店したが、開店当初から売上はYの示した損益分岐点におよそ到達しなかった。

Yは人員を派遣して業務改善を指導する等したが、業績は改善せず、同年10月、Xは本件契約を解除する旨の意思表示をし、A店は同年12月に閉店した。

以上のような事実関係のもと、Xは、売上予測等を示す場合、Yには適正な情報を提供すべき信義則上の保護義務があるにもかかわらずこれを怠ったとして、Yに対し損害賠償を請求した。

原審は、売上等の予測には様々な手法が考えられ、架空の数値に基づくものであるとか、推計の過程に明らかに不合理な点があるというのでない限りは、相手方の判断を誤らせるよな適正を欠く予測を呈示したものということはできず、本件における売上等の予測は、客観的な統計資料に基づく人口動態やクリーニングに関する千葉県民の消費動向を根拠に算出された需要予測に裏付けられたものであり、特に適正を欠くところはなく、また予測が現実に達成できるか否かの判断はフランチャイズ契約を締結して加盟店になろうとするXが自己の責任において行なうべきであるとして、Xの請求を退けた。

これに対し、Xが控訴したのが本件である。

<判決理由>原判決変更、一部認容。

「一般に、フランチャイズ・システムにおいては、店舗経営の知識や経験に乏しく資金力も十分でない者がフランチャイザーとなることが多く、専門的知識を有するフランチャイザーがこうしたフランチャイジーを指導、援助することが予定されているのであり、フランチャイザーはフランチャイジーの指導、援助に当り、客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているものというべきである。」

「そこで、Yの売上試算、予測について検討するに、Yは、競合店について、A店の周辺1キロの第1次商圏内に11店舗あるものとした(実際には12店舗あった。)が、A店が他の多くの取次店と異なり、納期については短時間仕上げが可能なこと、誤配、紛失等のトラブルが少ないことを特徴としているので、右取次店は実質的に競合店ではないとして、実質上の競合店数を数店舗(以内)として、同商圏内の1万3436世帯のうちの2100世帯を固定客にすることができると判断したものであるが、一般的に取次店とユニット店とで納期について特段の差があるものとは認められず、また、取次店とユニット店とでYの主張するようなトラブルの多寡(取次店に対する客の不安)があると認めざるを得ない。

そうすると、Yのした売上試算、予測は、競合店についての判断を誤ってした的確な情報ではなかったものと認められ」、・・・「Yによる不正確な情報の提供とXによるA店の開業及びその経営破綻との間には相当因果関係があると認められるから、Yは、前記信義則上の保護義務違反により、Xが本件契約の締結及びA店の開業及びA店の開業により被った損害を賠償する責任を負うというべきである。」

もっとも「前示のとおり、フランチャイズ・システムにおいては、専門的知識を有するフランチャイザーがフランチャイジーを指導、援助することが予定され、客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているとはいえ、他方において、フランチャイジーも、単なる末端消費者とは異なり、自己の経営責任の下に事業による利潤の追求を企図する以上、フランチャイザーから提供された情報を検討、吟味した上、最終的には自己の判断と責任においてフランチャイズ・システム加入を決すべきものである。

前記認定事実によれば、Xとしても、Yが提供したし料等を検討、吟味することが十分に可能であったといわなければならず、・・・本件にあらわれた諸般の事情を総合考慮すると、Yの前記義務違反による損害賠償を定めるに当っては、公平の原則に照らし、Xに生じた前記損害について7割の過失相殺をするのが相当である。」

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C&F契約と船積期間経過後の船荷証券の提供・・・

神戸地判昭和37年11月10日(損害賠償請求事件)
下民13巻11号2293頁、判時320号4頁

<事実の概要>

X・Y間において、Xを売主として、昭和32年6月14日に、目的物を冷凍肉600クオータース、代金の支払を陸揚港神戸港、価格重量1ポンドにつきイギリス通貨による1シリング7ペンス半、代金支払い条件を買主たるYがオークランド市ニュージーランド銀行にXを受益者とする一覧払為替手形取消不能銀行確認信用状を開設して行なう、目的物船積期間を昭和32年9月中にオークランド市において汽船M号又は最初に利用できるその他の船舶に船積みすることを内容とするC&F条件による売買契約が成立した。

Xはその後Yに対し、同年8月1日付電信により、上記目的物は汽船M号に積み込む旨を、また、同月8日付電信により、目的物の概算重量は10万6654ポンドである旨をそれぞれ通知したが、Yは右契約の成立後、その解約等を求めて、代金支払条件たる信用状の開設を拒否し、船積期間たる昭和32年9月中を経過してもこれを開設しなかった。

Xは本訴において、上記売買契約は、確定期売買であり、かつ、信用状の開設は、目的物船積の先行的条件であると解すべきであるから、契約は、商法525条により、Yが信用状の開設をせず、右船積期間を徒過した時に解除されたものとみなされるべきであると主張し、Yの債務不履行による契約解除の結果被った損害の賠償を請求した。

<判決理由>請求一部認容。

1「右契約においては、その目的物の船積期間が特約されているのであるが、およそシー・エンド・エフ売買契約における船積期間は、その買主が自己の在庫品の数量、市場の景況、金融状態、船積地と陸揚地との間の通常の航海日数及び船積書類の到着日数等を十分に斟酌したうえ、これを決定し、特約するものであるから、その特約はシー・エンド・エフ売買契約の最も重要な条項であり、売主はこの期間を厳守することを要し、この期間前又は期間後に船積した物品の船積書類の提供は、債務の本旨にしたがった弁済の提供とはいえず、したがって、売主が約定物品の積み込みをすることなく、一旦この期間を徒過すれば、もはやその契約をなした目的を達成することができなくなるものと解すべきである。

とすれば、右のごとき意義を有する船積期間の特約された右売買契約は、その性質上、商法第525条所定のいわゆる確定期売買であると解するのが相当である。」

2「シー・エンド・エフ売買契約において、その代金支払条件として、取消不能銀行確認信用状の開設を特約する目的は、売主をして代金決済の手段たる為替手形の割引を容易ならしめるにとどまらず、さらに目的物の船積以前において、売主が船積すれば直ちに為替手形の割引を受け、売買代金を実質的に回収しうるという確実な保障を与え、目的物の調達ないしその船積を安んじて行なわしめることにあるというべきであるから、このような特約のある場合には、買主は、売主に対し目的物の船積ないし船積書類の提供を求めるための先行的条件として、かつ、遅くとも船積期間経過以前に、これを開設すべき義務があるものと解すべきが当然である。

そして、買主の右信用状開設の義務は、確定期売買たる船積期間の特約されたシー・エンド・エフ売買契約から生じる義務であり、その先行的給付義務であるから、もし、買主が遅くとも右船積期間経過以前にこれを開設しない場合には、商法第525条により、その売買契約は解除されたものとみなすのが相当であろう。

そうだとすれば、X,Y間に成立した本件売買契約は、Yが約定の信用状を開設せず、船積期間たる9月中を経過すると同時に当然に解除されたものとみなすべきであり、かつ、Yは、右信用状開設の義務の履行を遅滞し、契約を解除せしめたことにより、Xに蒙らせた損害を填補すべき義務を負うものといわなければならない。」

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