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被害者の保険金代位請求訴訟・・・
最判昭和57年9月28日(損害賠償請求訴訟事件)
民集36巻8号1652頁、判時1055号3頁、判夕478号171頁
<事実の概要>
Aは原動機付自転車を運転中にB運転の大型トラックとの接触事故により死亡した。
BはY1有限会社の被用者であり、Y1が購入した本件トラックをY1の営業のために運転中に上記事故を起した。
Y1は、y2保険会社と本件トラックにつき自己を被保険者とする自家用自動車保険契約締結していた。
Y1は無資力であった。
本件保険約款(昭和51年に改訂されたもの)第4章17条は、被保険者の保険金請求権は損害賠償責任額について被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定した時、または裁判上の和解、調停もしくは書面による合意が成立した時に発生し、これを行使することができると規定している。
Aの父母であるX1、X2がY1に対し損害賠償を請求し、Y2に対し保険金支払を請求して保険訴えを提起した。
Y2に対しては、X1らは保険金の直接請求権を有する、直接請求権が認められないとしてもX1らは、民法423条により、Y1に対する損害賠償債権を代位債権として、Y1が有する保険金請求権を代位行使するとの主張がなされた。
原審判決では、Y1の損害賠償義務が認められ、Y2については、保険金の直接請求権は否定されたが、保険金請求権の代位行使は、次のようにして認められた。
被害者が同一訴訟手続で加害者に対して損害賠償を請求するとともに、保険会社に対し加害者の保険金請求権を代位行使して保険金の支払を併せ請求し、併合審判のなされる場合には、裁判所は、被害者の会社に対する損害賠償請求を認容するとともに、保険金請求を将来の給付の請求としてその必要がある限り認容することができるものと解するべきである。
Y1のY2に対する保険金請求権は、本件保険約款第4章17条からX1らのY1に対する判決確定と同時にその履行期が到来するものと解されること、Y1らがX1らに対する損害賠償義務、保険金支払義務を争っていること、X1らの速やかな救済が必要とされることを考えれば、本件は予めその請求をなす必要がある場合にあたる。
Y2は上告した。
<判決理由>上告棄却。
本件保険約款第4条17条は上記のように規定しているが、「右規定及び本件保険契約の性質に鑑みれば、右保険約款に基づく被保険者の保険金請求権は、保険事故の発生と同時に被保険者と損害賠償請求権者との間の損害賠償額の確定を停止条件とする債権として発生し、被保険者が負担する損害賠償額が確定したときに右条件が成就して右保険金請求権の内容が確定し、同時にこれを行使することができることになるものと解するのが相当である。
そして、本件におけるごとく、損害賠償請求権者が、同一訴訟手続で、被保険者に対する損害賠償請求と保険会社に対する被保険者の保険金請求権の代位行使による請求(以下「保険金請求」という。)とを併せて訴求し、同一の裁判所において併合審判されている場合には、被保険者が負担する損害賠償額が確定するというまさにそのことによって右停止条件が成就することになるのであるから、裁判所は、損害賠償請求権者の被保険者に対する損害賠償請求を認容するとともに、認容する右損害賠償額に基づき損害賠償請求権者の保険会社に対する保険金請求は、予めその請求をする必要のある場合として、これを認容することができるものと解するのが相当である。」
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保険金受取人が保険事故発生前に死亡した場合・・・
最判平成5年9月7日(保険金請求事件)
民集47巻7号4740頁、判時1484号132頁、判夕838号199頁
<事実の概要>
AはY保険会社と自己を被保険者とし、母であるBを死亡保険金受取人とする保険金額2000万円の生命保険契約を締結した。
Bが死亡し、Bに実子であるX1~X3及びAが共同相続人となった。
B死亡後、Aは新たな死亡保険金受取人を指定することなく死亡した。
Aの相続人には、X1らの他に11名の者(Aの異母兄姉、異母姉の子)がいる。
X1らは、A死亡時におけるBの相続人X1ら3名のみであり、X1らが死亡保険金受取人の地位を取得したとして、各自666万6666円の保険金の支払をYに求めた。
Yは、X1らはAの共同相続人である他の11名とともに、死亡保険金受取人の地位を均等割合で取得したのであり、X1らの取得額はそれぞれ142万8571円であると主張した。
原判決では、X1らの請求は認められなかった。
X1らは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「商法676条2項にいう「保険金額を受取るべき者の相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者(以下「指定受取人」という。)の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいうと解すべきである(大審院大正・・・11年2月7日判決・民集1巻1号19頁)。
けだし、商法676条2項の規定は、保険機受取人が不存在となる事態をできる限り避けるため、保険金受取人についての指定を補充するものであり、指定受取人が死亡した場合において、その後保険契約者が死亡して同条1項の規定による保険金受取人についての再指定をする余地がなくなったときは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者が保険金受取人として確定する趣旨のものと解すべきであるからである。
この理は、指定受取人の法定相続人が複数存在し、保険契約者兼被保険者が右法定相続人の一人である場合においても同様である。」
「商法676条2項の規定の適用の結果、指定受取人の法定相続人とその順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法427条の規定の適用により、平等の割合になるものと解すべきである。
けだし、商法676条2項の規定は、指定受取人の地位の相続による承継を定めるものでも、また、複数の保険金受取人がある場合に各人の取得する保険金請求権の割合を定めるものでもなく、指定受取人の法定相続人という地位に着目して保険金受取人となるべき者を定めるものであって、保険金支払理由の発生により原始的に保険金請求権を取得する複数の保険金受取人の間の権利の割合を決定するのは、民法427条の規定であるからである。」
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保険金受取人の指定変更の方法・・・
最判昭和62年10月29日(不当利得金返還請求事件)
民集41巻7号1527頁、判時1254号42頁、判夕652号119頁
<事実の概要>
XはAと内縁関係にあったところ、AはB保険会社との間で、Aを被保険者、Xを保険金受取人とする、死亡時の一時払保険金が2000万円、年賦払保険金が毎年200万円で5年間の合計1000万円支払われる生命保険契約を締結した。
本件保険契約では、保険証券の受取人欄の下部欄外に「保険契約者は保険金受取人を指定し、または変更する権利を留保します」との記載があった。
Aは金融業者であるYに3000万円近くの債務を負っていた。
AはYに「Yの紹介によりBの外交員Cに加入した私の生命保険金は私が万一事故の場合には保険金を受取ってください。」と記載した念書を交付した。
Aが死亡し、BはXに一時払保険金2000万円を支払い、年賦払い保険金については、5年の年賦払いとする旨の年金支払証書を交付した。
Xは2000万円のうち800万円と500万円をそれぞれ定額郵便貯金、相互銀行の定期預金とし、それぞれの証書を受領した。
XはYの求めに応じて預貯金証書、年金支払証書を任意に交付し、Yは預貯金を全額引き出し、年賦払い保険金は一括支払請求してこれを受領した。
XはYに対し、不当利得として、これらの金員の返還を求めた。
原審判決では、Xの請求は認められた。
Yは上告した。
<判決理由>破棄自判、Xの請求棄却。
「商法675条ないし677条の規定の趣旨に照らすと、保険契約者が保険金受取人を変更する権利を留保した場合(同法675条1項但書)において、保険契約者がする保険金受取人を変更する旨の意思表示は、保険契約者の一方的意思表示によってその効力を生ずるものであり、また、意思表示の相手方は必ずしも保険者であることを要せず、新旧保険金受取人のいずれに対してしてもよく、この場合には、保険者への通知を必要とせず、右意思表示によって直ちに保険金受取人変更の効力が生ずるものと解するのが相当である。
もっとも、同法677条1項は、保険契約者が保険金受取人を変更したときは、これを保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない旨規定するが、これは保険者が二重弁済の危険にさらされることを防止するため、右通知をもって保険者に対する対抗要件とし、これが充足されるまでは、保険者が旧保険金受取人に保険金を支払っても免責されるとした趣旨のものにすぎないというべきである。」
本件の「事実関係のもとにおいては、AがYに対し、本件保険金受取人をXからYに変更する旨の意思表示をしたことによって直ちに保険金受取人変更の効力が生じたものというべきであるから、YがXから任意に本件預貯金証書等の交付を受け、その払戻金等を取得したことは、Xとの間において不当利得にならないと解するのが相当である。」
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告知義務違反による解除事例・・・
東京高判昭和63年5月18日(保険金請求控訴事件)
判夕693号205頁
<事実の概要>
Aは、医師から糖尿病と診断され、B病院に入院した。
B病院での精密検査の結果、糖尿病に加え、Aの肺に悪性の腫瘍があり左肩や頭に転移していること、手術等は不可能な状態であることが判明し、平均的な余命は半年ほどであると診断された。
このことはAの妻であるXには説明されたが、A本人には、病状は重くはなく治療の見込みもある旨が告げられました。
AとXがAに病状についての説明を受けてからまもなく、Aは知人から生命保険への加入を勧められ、Y保険会社との間で保険金額2億円という極めて高額な生命保険に加入することを承諾した。
Yの診査医であるC医師は、告知書を用いてAの健康状態を確認したが、Aは、告知書の質問事項である病気や外傷による10日間以上の治療・休養の有無、具合の悪いところの有無、病気や外傷による診察・検査・治療の有無につき、全て「無」を丸で囲んで回答し、「自分は今までに大病をしたことがない」などと言って当時の健康状態について異常がない旨答え、闘病病の検査を受けていることについては告知したものの、B病院に入院中であり治療の必要があることや、診査を受けるためにB病院から外泊許可を得て上京したこと等については説明をしなかった。
この告知を受けた診査の結果、C医師は異常所見を認めず、Aの健康状態に異常がないという検診書作成し、Aを被保険者とするA・Y間の生命保険契約は成立した。
契約の成立後、Aが死亡したため、保険金受取人であるXは支払を求めたが、Yは、Aの告知義務違反を理由に契約を解除し、保険金の支払を拒んだ。
これに対し、保険金の支払を求めてXが提訴。
原審では請求棄却、Xは控訴した。
<判決理由>控訴棄却。
「右認定の事実によれば、Aの左腕の脱力感、しびれと握力の低下、背筋の筋力低下、左口唇周囲の知覚減退、左肩の圧痛の自覚症状、AがB病院に入院中であること、AにつきB病院で施行した検査の種類、内容及びB病院の医師がAにした説明の内容は、肺ガン等に罹患した被保険者Aの生命の危険を測定するについて重要な事実であり、保険者であるYが保険契約を締結するか否か又はどのような内容の保険契約を締結するかを判断するについての規準となるものであるから、商法678条1項本文に規定する重要なる事実にあたるというべきである。
そして、Aは、自己の疾患の病名が肺ガン等であることを知らないまでも、B病院に入院し前記のような自覚症状を覚え単なる糖尿病に関する以上の諸検査を受け、医師からも説明を受けて、自己の病状が相当重大な事態であることを自覚していたものと推認することができるから、Aは本件契約を締結するにあたり、前記自覚症状、B病院への入院、諸検査の施行及び医師の説明の内容が重要な事実であることを認識し又は容易に認識することができたものと認めるのが相当である。
したがって、AがC医師の診査を受けた際前記症状、入院、検査及び医師の説明の内容を告知しなかったことは、本件契約の締結にあたり悪意又は重大な過失により重要な事実を告げなかったものであり、同人に告知義務違反があったというべきである。」
「次に、本件契約の当時Yが重要な事実を知らなかったことにつき過失があるか否かについて判断するに、前認定のとおり、AはC医師の診査を受けた際同医師に対しB病院に入院中であることなど重要な事実を告知せず、告知した糖尿病に関しても尿検査の結果糖はマイナスであり、C医師の診査からはAの当時の健康状態について何らかの異常を窺わせるような事情はなかったのであるから、保険者であるYがそれ以上に血糖値の検査等精密検査をせず(なお、Aの糖尿病は重症ではなく同人の死亡と因果関係のないものであった。)、AがB病院に入院していることやその病状を更に調査せずこれを知らなかったからといって、Yに通常なすべき注意を欠いた過失があったということはできない。
したがって、YがXらに対してした本件契約の解除の意思表示は有効であるというべきである。」
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