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預合の意義・・・
最判昭和42年12月14日(商法違反公正証書原本不実記載同行使被告事件)
刑集21巻10号1369頁、判時510号3頁、判夕218号93頁
<事実の概要>
A株式会社は、2750万円の増資をしようとしたが、最終申込期日における新株の引受申込額は461万円にすぎなかった。
そこで、A社の代表取締役から増資手続を委ねられていた取締役Y1(被告人)は、株式払込取扱銀行であるB銀行甲支店長のY2(被告人)と相談して、増資手続完了後直ちに返済する約束の下に、B銀行甲支店からA社に770万円、A社代表取締役C個人に1500万円の各貸付がなされた。
A社の借入分770万円は、A社の経理上、次のように処理された。
すなわち、同金額は、A社からその従業員への預り金・借受金の返済等にあてられ、新株引受人たる同社の従業員はこの返済金等をもって本件新株払込金に充当するものとされた。
Cが借り受けた1500万円もまた、Cの本件新株の払込金にあてられた。
これらの金員は新株払込金として同支店の別段預金口座に振替記帳されただけで、実際に金銭の授受はなされなかった。
Y2はY1に対し2750万円の株式払込金保管証明書を交付し、Y1はそれに基づき所定の増資手続を完了すると、翌日、Y1は、直ちに銀行に対してA社及びCの前記借入金を保管金から返済した。
なお、日歩2銭6厘の割合による2日分の利息の支払のために、A社からB銀行に対し小切手が交付された。
こうした事実に基づいて、検察官は被告人Y1・Y2が共謀して株式払込を仮装したものとして、Y1を預合罪、またY2を応預合罪で起訴した。
第1審・第2審ともに、公訴事実を有罪と認めた。
これに対し、Y1・Y2は上告し、A社の従業員らに対する負債が消滅した以上、資本の充実が現実になされており、しかも従業員は真実その意思をもってA社からの返済金を本件引受株式の払込金に充当したのであるから、同払込金は仮装のものではないと主張した。
<判決理由>破棄差戻し。
「思うに、形式的に帳簿上の操作をすることによって容易に払込の仮装が行なわれうることに鑑みると、払込が実質的になされたか否かいついては極めて慎重に審理することを要し、帳簿上の操作に惑わされるべきでないことはもちろんであるが、しかし、株式引受人の会社に対する債権が真実に存在し、かつ会社にこれを弁済する資力がある場合には、右弁護人主張のような態様の払込方法ととったとしても、資本充実の原則に反するものではなく、株金払込仮装行為とはいえないから、商法491条の預合罪及び応預合罪にあたらないものと解するのを相当とする。
記録を調べてみると、A社がB銀行から借り受けた770万円は、会社に対する従業員らの債権637万円とCの債権約102万5000円の各弁済にあてられ、従業員ら及びCは、右弁済を受けた金員に会社からの貸付金を加えて本件払込金にあてる方法によりその払込の一部をなしていることが証拠上うかがわれるので、原審としては、当時従業員ら及びCが会社に対して真実右の債権をもっていたかどうか、また会社がその弁済の資力をもっていたかどうかなどの事実を調べた上本件を処理すべきであったのに、これらの事実を確定することなく、本件払込金全額につき預合罪及び応預合罪が成立するとして第1審判決を維持したのは、法令の解釈を誤った結果審理を尽くさなかったもので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。」
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見せ金と公正証書原本不実記載罪・・・
最決平成3年2月28日(公正証書原本不実記載、同行使、詐欺被告事件)
刑集45巻2号77頁、判時1379号141頁、判夕753号87頁
<事実の概要>
東証二部上場会社であるA株式会社は、石油ショックによる需要の後退を契機として経営に行き詰まり、倒産の危機に陥った。
そこで、A社の代表取締役Y1及び常務取締役Y2は、再建策として、第三者割当増資による新株発行を計画した。
しかし、業界紙にこの増資を疑問視する記事が出たため、割当先になっていたB株式会社及びC株式会社が、払い込みに必要な資金の融資を受けられなくなった。
そこで、Y1とY2らの共謀により、(1)B社がA社振出しの手形の割引金3億円をA社から借り、(2)C社がA社の連帯保証の下に金融業者のD株式会社から10億円を借り、(3)B社がA社の有する2億円の通知預金を担保に同額をD社社長Eから借り、(4)B社がF銀行の保証の下にG保険会社から1億円を借り、それぞれ払い込みをした。
(1)ないし(3)については、払込後数日のうちに払込金が払い戻され、手形の決済やD社・Eへの借入金の返済に充てられ、(4)については、払込金が定期預金に振り替えられ、それに保証人であるF銀行のための質権が設定された。
払い込みの当時、B社及びC社は倒産寸前の状態にあり、到底確実な債務返済能力はなかった。
以上のような払い込みに基づき、新株発行による発行済株式総数増加の変更登記を申請し、登記官をして商業登記簿原本にその旨の記載をさせたことにつき、Y1とY2らは、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われた。
第1審・第2審は同罪の成立を認めたため、Y1・Y2が上告。
<判決理由>上告棄却。
「前記認定によれば、(1)ないし(3)の各払込は、いずれもA社の主導の下に行なわれ、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保させる意図はなく、名目的な引受人がA社自身あるいは他から短期間借り入れた金員をもって単に払込の外形を整えた後、A社において直ちに右払込金を払戻し、貸付資金捻出のために使用した手形の決済あるいは借入金への代位弁済に充てたものであり、(4)の払込も、同様の意図に基づく仮装の払込であって、A社名義の定期預金債権が成立したとはいえ、これに質権が設定されたため、B社がG社に対する借入金債務を弁済しない限り、A社においてこれを会社資金として使用することができない状態にあったものであるというのであるから、(1)ないし(4)の各払込は、いずれも株式の払込としての効力を有しないものといわなければならない(最高裁昭和・・・38年12月6日第二小法廷判決・民集17巻12号1633頁参照)。
もっとも、本件の場合、A社がC社に対する10億円及びB社に対する5億円の各債権並びに1億円の定期預金債権を有している点で典型的ないわゆる見せ金による払込の場合とは異なるが、右各債権は、当時実質的には全く名目的な債権であったとみるべきであり、また、右定期預金債権は、これに質権が設定されているところ、B社においてG社に債務を弁済する能力がなかったのであるから、これまたA社の実質的な資産であると評価することができないものである。
したがって、公正証書原本不実記載の罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。
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債権者による退社予告・・・
最判昭和49年12月20日(家賃金請求事件)
判時768号101頁、金判439号6頁、金法744号26頁
<事実の概要>
本件は、X合名会社とYとの間でなされた不動産賃料請求訴訟である。
Yは以下のような事情のもとで、X社の代表社員として訴訟を追行しているAの代表権限を争っている。
すなわち、本件訴訟とは別に、Aは同じくX社の社員であったBのX社代表社員資格を争う訴訟を提起し、昭和33年8月22日Bの職務執行を停止し、代行者を選任する旨の仮処分を得ている。
さらに、昭和33年11月19日と昭和34年3月20日の2回にわたり、Bに対する各8万5000円の扶養料請求債権をもってBのX社に対する持分を差押さえ、前商法91条1項所定の退社予告を行なった。
AはBがこの退社予告により当該営業年度の終わりである昭和34年12月31日にX会社を退社させられ社員資格を喪失したとし、その旨の登記申請をしており、X社の商業登記簿には、Bが12月31日社員資格を喪失し、Aが昭和35年2月23日代表社員に就任した旨の記載がある。
これに対して、Yは、次のように主張している。
Bは昭和33年12月12日及び昭和34年12月28日、前商法91条2項所定の担保として17万1000円を名古屋法務局に供託したが、Aのした退社予告は効力を失っており、Bは依然としてX社の社員である。
したがって、Bの同意なくなされたAの代表取締役就任は無効である。
原審においてX社の請求が認められたため、Yが上告。
<判決理由>破棄差戻し。
「商法91条1項により社員の持分を差押さえた債権者のなす強制退社予告の効力は、右差押に対する強制執行停止決定によって左右されるものとはいえず、また、同条2項所定の強制退社予告の効力を失わせる相当の担保を供したときとは、差押債権者との間で、担保物件を設定し、又は保証契約を締結した場合をいい、差押債権者の承諾を伴わない担保物件設定又は保証契約締結の単なる申込は、右担保の供与にはあたらないと解するの相当である。
しかしながら、持分を差押さえられた社員が債務を弁済すれば退社予告の効力を失うことは、同条項の明らかに定めるところであり、したがってBが昭和34年12月28日本件差押にかかる債務についてした所論の供託が弁済供託としての効力を有するときは、退社予告はその効力を失い、ひいてはAのX社代表社員としての資格が否定される結果ともなるのであるから、原審としては、右の点につき当事者に対して主張立証をうながすなど審理を尽くすべきだあったのにもかかわらず、原判決が、単にX社の商業登記簿謄本のみによって、当事者間の争いのあるAの代表権限をたやすく認めたことには、審理不尽の違法があるといわなければならず、それが判決の結果に影響を及ぼすことは明らかである」。
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多数派社員による不公正な業務執行と解散請求・・・
最判昭和61年3月13日(合名会社解散請求事件)
民集40巻2号229頁、判時1190号115頁、判夕597号31頁
<事実の概要>
Y合名会社は、昭和16年以降、製糸業を営む社員6名からの委託を受けて製糸のの工程で生ずる副蚕糸の製品化を図る共同処理工場を経営していたが、昭和20年に工場が空襲を受けたため営業を停止した。
その後Y社社員のうちAら3名は昭和25年B株式会社を設立し、B社の名においてY社のほとんど唯一の財産である土地建物を使用して、従前のY社と同様の業務を開始している。
Y社のその余の3名の社員C、D、E(Xの先代)は、すでに製糸業を廃業していたことから、B社の設立には参画せず、また、B社がY社の所有不動産を使用することについても承諾を与えていなかった。
Y社は、B社から支払われる賃料名下の金員を唯一の営業収入としているが、その金額は著しく低額であり、その大部分は公租公課及びY社の経営の実権を握るAの役員報酬の支払に充てられている。
このようにY社は社員間に深刻な利害対立が生じていたところ、C及びDの承継人であるFは、昭和49年、Y社を退社する意思表示をした上、Y社に対し持分払戻しを求めて訴えを提起し、現在も係属中である。
登記上の代表社員であったCの退社により、Y社は代表社員を欠くにいたったが、Y社の定款によれば、代表社員は総社員の同意をもって選任されることになっているため、後任の代表社員は未だ選任することができない状況である。
このような事情のもとで、Xは旧商法112条1項に基づきY社の解散を請求している。
原審は、Xの請求を認容したため、Y社は上告した。
<判決理由>上告棄却。
「合名会社は社員間の強い信頼関係が維持されていることを会社存立の基礎とする人的会社であるから、感情的な原因により、社員間の信頼関係が破綻されて膠着した不和対立状態が生じ、会社の目的たる業務の執行が困難となり、その結果会社ひいては総社員が回復し難い損害を被っているような場合には、これを打開する手段のない限り、解散事由があるものというべきであるが、右のような場合のみならず、合名会社は総社員の利益のために存立する目的的存在であるから、会社の業務が一応困難なく行なわれているとしても、社員間に多数派と少数派の対立があり、右の業務の執行が多数派社員によって不公正かつ利己的に行なわれ、その結果少数派社員がいわれのない恒常的な不利益を被っているような場合にも、また、これを打開する手段のない限り、解散事由があるものというべきである。
しかしながら、右のいずれの場合にも、そこでいう打開の手段とは、その困難な事態を解消させることが可能でありさえすれば、いかなる手段でもよいというべきではなく、社員間の信頼関係が破壊されて不和対立が生ずるに至った原因、解散を求める社員又はこれに反対する社員の右原因との係わり合いの度合い、会社の業務執行や利益分配が解散を求める社員にとってどの程度不公正・不利益に行なわれてきたか、その他諸般の事情を考慮して、解散を求める社員とこれに反対する社員の双方にとって公正かつ相当な手段であると認められるものでなければならないと解するのが相当である。」
「原審の確定したところによれば、Y社は、・・・製糸業を継続する多数派社員と製糸業を廃業した少数派社員の二派が生じ、その間に決定的な利害の対立状態が存在し、このため、Y社は一応不動産賃貸の営業を行なってはいるものの、多数派社員による不公正かつ利己的な業務執行によって少数派社員に恒常的な不利益が生じている状態にあるものといわざるをえないから、これを打開すべき手段が存在しない限り、Y社には解散事由があるものというべきである。
そこで、Y社の右の事態を打開すべき手段の有無についてみるに、・・・Xが退社して持分払戻しを請求する方法を選択しさえすれば、Y社における両派の対立する前提が失われ、社員間の利害の対立状態は当然に解消するとともに、Xはその出資金を回収することができる筋合いである。
しかしながら、・・・Y社の社員間の利害の対立の原因は、おしなべて製糸業を継続する社員の不公正かつ利己的な行為にあるものというべきであるから、Y社の社員間に利害の対立が生じたことにつき特段の帰責事由の認められないXに対し、その意思に反する退社の方法を選択させ、かつ、債権としてその実現に問題のある持分払戻し請求権を行使することを強いることは、著しく不公正かつ不相当であるというべきである。
したがって、Xに対して退社を求めることは、Y社における社員間の利害の対立によって少数派社員に生じている恒常的な不利益が状態を打開する手段として公正かつ相当な手段であるということはできない。
そして、他に上告会社の右の現状を打開すべき手段はないのであるから、結局、上告会社には解散事由があるものというべきである」。
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