組合の手形署名・・・

自分で会社設立しますか?
ご自分で会社を設立するならまずはクリック!!

組合の手形署名・・・

最判昭和36年7月31日(約束手形金請求事件)
民集15巻7号1982頁、判時272号29頁、金判529号98頁

<事実の概要>

A組合は定置漁業の経営を目的とし、組合代表者その他の役員及び総会を置き、基本財産を有し、組合業務は役員によって執行され、対外的取引は組合名をもってなされてきた。

XlはAの製縄代金支払のために同組合長理事Yの名義をもって振出された約束手形を受取り、満期に支払呈示をなしたところ不渡となったために、組合員Yらに対して手形金の支払を求めて訴えを提起した。

XはAは民法上の組合であって、組合の債務について全組合員が各自連帯して責任を負うべきであると主張するが、YらはAはいわゆる権利能力なき社団であるから組合員はAの債務に関して責任を負わないと争った。

第1審はXの主張を認め、Yらに連帯債務として本件手形金支払義務を認めたが、原審はAが民法上の組合であるが故、Aは行為能力を有しないのであるから、組合として手形を振出すこともできず、組合長が第三者と取引した場合には、当該取引の主体は組合ではなく組合長個人であるとして、Y個人の手形金支払義務のみを認めた。

Xは上告した。

<判決理由>破棄自判、請求認容。

「本件手形は、組合の代表者が、その権限に基づき、組合のために、その組合代表者名義をもって振り出したものである以上、同組合の組合員は、手形上、各組合員の氏名が表示された場合と同様、右手形について共同振出人として、合同してその責を負うものと解するを相当とする(大正14年5月12日大審院判決・民集4巻256頁参照)。」

これに対して反対意見が次のように付されている。

「手形の顕名主義の原則よりして、手形行為の代理関係は証券面に明らかにされておらなければならない。

従って、商法504条は手形行為の代理には適用がなく、また、旧商法(明治32年法律第48号)436条が「代理人か本人の為にすることを記載せすして手形に署名したるときは本人は手形上の責任を負うことなし」と規定していたこともこの間の理を明らかにしたものであり、改正後の手形法において、かかる明文がなくても同一に理解しなければならない。

法人格を有しない民法上の組合の名称を手形上に表示しても、固よりその表示が組合の構成員たる各組合員の表示とみることはできないし、また組合長、理事等組合の構成員たる各組合員の代理人の表示とみることもできない。

してみれば、本件において手形振出人として「A組合組合長理事Y」という記載は、前述の如く各組合員の代理人の表示と認めることができないから、これにより組合長以外の組合員に手形上の責任を負担せしめることはできない。

(もっとも、右組合長は手形法8条により自ら手形の支払義務を負うけれども、右手形の振出が組合の業務執行の範囲内であり、その権限に基づき為されたものである限り、その支払は組合の業務執行のため支出した費用として組合財産または他の組合員から、これが求償を求めることができる。)

また、多数説の如く、手形面に顕名されていないものまでが直接手形債務を負担するものとすれば、その手形が不渡となりたる場合、名が顕はれていないものに対しても手形不渡処分を為し得るや等の問題を生じ手形取引の実情に適せざる結果を生ずるものといわなければならない。」

スポンサードリンク

手形所持人に有利な解釈・・・

最判昭和47年2月10日(約束手形金請求事件)
民集26巻1号17頁、判時661号81頁、判夕275号208頁

<事実の概要>

合資会社Yの代表者A(無限責任社員)は振出人欄に「熊本市草葉町4-*、合資会社Y、A」と表示した約束手形を振出した。

Xを含む裏書譲渡を経て、満期にBによって支払呈示がなされたが支払拒絶されたためにXが受け戻してYに対して手形金請求訴訟を提起した。

手形判決・第1審・原審ともにYに対する手形金支払義務を認めた。

これに対し、Yより本件手形の振出人はA個人であってYではないという理由に基づき上告。

<判決理由>上告棄却。

「法人の代表者が法人を代表して手形を振出す場合には、手形に法人のためにする旨を表示して代表者自ら署名しなければならないが、手形上の表示から、その手形の振出が法人のためにされたものか、代表者個人のためにされたものか判定し難い場合においても、手形の文言証券たる性質上、そのいずれであるかを手形外の証拠によって決することは許されない。

そして、手形の記載のみでは、その記載が法人のためにする旨の表示であるとも、また、代表者個人のためにする表示であるとも解しうる場合の生ずることを免れないが、このような場合には、手形取引の安全を保護するために、手形所持人は、法人及び代表者個人のいずれに対しても手形金の請求をすることができ、請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でなされたかを知っていた直接の相手方に対しては、その旨の人的抗弁を主張しうるものと解するのが相当である。

・・・本件手形の振出人欄には、ゴム印の押捺によって、「熊本市草葉町4-*、合資会社Y、A」と表示され、「A」の名下に**(Aの苗字)と刻した印章が押捺されていて、「Y」の部分が他の部分に比較してやや大きく顕出されているというのであるが、右の表示をもっては、本件手形の振出人はYであるともA個人であるとも解釈できるものといわざるを得ない。

そして、本件手形の所持人であるXは、Yを振出人として本訴請求をしているであるから、Yが本件手形の振出人としての責任を負うものといわなければならず、これと同趣旨の原判決の判断は正当である。」

スポンサードリンク

手形金額に錯誤がある裏書・・・

最判昭和54年9月6日(約束手形金請求事件)
民集33巻5号630頁、判時943号105頁、判夕399号119頁

<事実の概要>

A株式会社はYに対する売掛代金150万円の支払のために約束手形を振出したが、Yは手形金額が「\1,5000,000」という位置を間違ったコンマが付されたものであったため、記載自体からは1500万円の表示としてみられるのに150万円の手形であると誤信し、Bに裏書譲渡した。

Xは1500万円の手形としてAに対し支払呈示をしたが支払を得られなかったために、Yに対して手形金請求訴訟を提起した。

原審はYの裏書には手形行為それ自体に要素の錯誤があったものであって、Xはその錯誤を知りYを害することを知りつつ本件手形を取得したものであるから、Yはその裏書の錯誤を理由にXに対抗できるとしてXの請求を否定した。

Xから上告。

その上告理由は、Yに少なくとも150万円の手形金額については完全に裏書意思があり、これを超過した部分にのみ錯誤があるのだから、1500万円全部について錯誤ありとした原判決は違法があるというものであった。

<判決理由>破棄差戻し。

「手形の裏書は、裏書人が手形であることを認識してその裏書人欄に署名または記名捺印した以上、裏書としては有効に成立するのであって、裏書人は、錯誤その他の事情によって手形債務負担の具体的な意思がなかった場合でも、手形の記載内容に応じた償還義務の負担を免れることはできないが、右手形債務負担の意思がないことを知って手形を取得した悪意の取得者に対する関係においては、裏書人は人的抗弁として償還義務の履行を拒むことができるものと解するのが相当であ」る。

「Yが金額1500万円の本件手形を金額150万円の手形と誤信して裏書したものであるとすれば、Yには、本件手形金のうち150万円を越える部分については手形債務負担の意思がなかったとはいえず、しかも、本来金銭債務はその性質上可分なものであるから、少なくとも裏書に伴う債務負担に関する限り、本件手形の裏書についての被上告人の錯誤は、本件手形金のうち150万円を越える部分についてのみ存し、その余の部分については錯誤はなかったものと解する余地があり、そうとすれば、特段の事情のない限り、Yが悪意の取得者に対する関係で錯誤を理由にして本件手形金の償還義務の履行を拒むことができるのは、本件手形金のうち150万円を越える部分についてだけであって、その全部についてではないものといわなければならない」。

スポンサードリンク

詐欺による手形行為「見せ手形」の抗弁・・・

最判昭和25年2月10日(約束手形金請求事件)
民集4巻2号23頁、金判529号4頁

<事実の概要>

Yは見せ手形として使いたいから1週間ほど手形を貸してほしいというAの依頼に応じて受取人をBとする約束手形を作成してAに交付した。

しかしAはYに対して手形を返却せず、手形は転々流通して満期日にCによって支払呈示されたが支払は拒絶された。

CはBに戻裏書をし、その後BからXに裏書譲渡された。

Xは手形取得にあたりAの本件手形振り出しに関する関与も含めて何らの事情も知らなかった。

XのYに対する手形金請求訴訟につきX勝訴(第1審・原審)に対し、Yより上告。

その理由は振出人を錯誤に陥れて手形を不法に詐取するような場合には手形債務は負わないとすべきであるというものであった。

<判決理由>上告棄却。

「Yは本件手形に署名し、これを任意にAに交付したことが明らかであるから本件手形の振出行為は成立してものというべきであって、たといその振出についてYが主張するように手形を詐取された事実があっても、そのような事由は悪意の手形取得者に対する人的抗弁事由となるに止まり善意の手形取得者に対しては振出人は手形上の義務を免れることできないと解すべきである。

そして本件手形の受取人Bが悪意であったことは原審でYの全然主張立証しないところであるからBは善意の取得者と認むべきであり、Bから本件手形の裏書譲渡を受けたXが善意の取得者であることは原審の確定しているところであるから、YはXに対し本件手形上の義務を負担しているものというべきである。」

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする