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株券発行前の株式の譲渡・・・
最大判昭和47年11月8日(株主総会決議無効確認等請求事件)
民集26巻9号1489頁、判時682号3頁、判夕285号150頁
<事実の概要>
Y1株式会社は、昭和15年に有限会社として設立され、同24年に株式会社に組織変更された会社で、資本金200万円、発行済株式総数は2万株であるが、株式会社となってから株券を発行していなかった。
Xは100株、Y2は1万6000株のY1社株式を有する株主であったが、昭和28年5月、Y2は自己の有する1万6000株をXに対して意思表示のみによって譲渡し、Y1社はこれを承認して備え付けの株主台帳にその旨を登載し、同年6月25日株券を発行してXに株券を交付した。
ところが、昭和31年になって、Y2はAと共同で裁判所の許可をえて株主総会を招集し、Xら役員の解任及び新役員の選任の決議を行った。
この総会では、Xは100株、Y2は1万6000株、Aは150株、Bは1550株として議決権が計算され、途中退席したX100株を除き、1万7700株の賛成により決議がなされたとされた。
これに対して、定足数の不足と非株主であるY2の決議関与を理由として、Xが決議取消等を求めて本訴を提起した。
原審でXは敗訴したので、Xは上告した。
<判決理由>破棄差戻し。
「おもうに、本件株式譲渡が行われた当時の商法の規定によれば、株式の譲渡は、絶対的に自由で、定款によってもこれを禁止または制限することができないものとされ(昭和41年法律第83号による改正前の204条1項)、また、記名株式の譲渡は、株券の裏書によるかまたは株券及び所定の譲渡証書の交付により、これをすべきものとされていた(右改正前の205条1項)。
右改正法においては、株式の譲渡につき定款をもって取締役会の承認を要する旨を定めることができることとしたとはいえ、いぜん、原則として、株式譲渡の自由を認め(現行の204条1項本文)、その譲渡は株券の交付によりすべきものとする(同じく205条1項)とともに、右改正前と同様、株券の発行前にした株式の譲渡は会社に対しその効力を生じない旨を定めているのである(204条2項)。
これによってみれば、右改正の前後を通じて、同法の趣旨とするところは、株式の譲渡は、自由ではあるが、それは、株券の発行を前提とし、これをまって行われるべきものとするにあるものと解せられ、同法が、株式会社は成立後または新株の払込期日後遅滞なく株券を発行すべきものとしている(226条1項、但し、前記改正法により設けられた226条の2の場合を除く。)のも、右の趣旨に則ったものということができる。
したがって、もし、株式会社が株券の発行を遅滞することにより、事実上、株式譲渡の自由を奪う結果になるとすれば、それは、同法の右趣旨にもとるのみならず、信義則上も容認できないところといわなければならない。
以上述べたところから商法204条2項の法意を考えてみると、それは、株式会社が株券を遅滞なく発行することを前提とし、その発行が円滑かつ正確に行われるようにするために、会社に対する関係において株券発行前における株式譲渡の効力を否定する趣旨と解すべきであって、右の前提を欠く場合についてまで、一律に株券発行前の株式譲渡の効力を否定することは、かえって、右立法の趣旨にもとるものといわなければならない。
もっとも、安易に右規定の適用を否定することは、株主の地位に関する法律関係を不明確かつ不安定ならしめるおそれがあるから、これを慎むべきであるが、少なくとも、会社が右規定の趣旨に反して株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らしても株式譲渡の効力を否定するを相当としない状況に立ちいたった場合においては、株主は、意思表示のみによって有効に株式を譲渡でき、会社は、もはや、株券発行前であることを理由としてその効力を否定することはできず、譲受人を株主として遇しなければならないものと解するのが相当である。
この点に関し、最高裁昭和・・・33年10月24日第二小法廷判決・民集12巻14号3194頁において当裁判所示した見解は、右の限度において、変更されるべきものである。
これを本件についてみると、前叙のとおり、Y1社は、株式会社に組織変更後4年余の長きにわたって全く株券を発行することなく放置していたものであり、これが商法の規定の趣旨に反する不当な株券発行の遅滞であることは明らかである。
そして、Y2は、そののちになって、Xに対し前記株式を意思表示のみによって譲渡したのであるから、株券発行前であるからといって、Y1社はに対する関係においてその譲渡の効力を否定することは、信義則からいっても、相当とはいえない。
ましてや、Y1社においては、右譲渡を承認して株主台帳(株主名簿と異なる趣旨のものとは解し得ない。)にこれを記載し、そののちに右株式について株券を発行したというのであるから、信義則上も、右株式の譲渡は、Y1社に対してもその効力を生じ、Xは、右株式につき、株主としての権利を行使する資格をそなえるにいたったものといわなければならない。
そうとすれば、前記株主総会の決議は、わずか1,700株の議決権によってなされたものであって、商法(取締役の選任については定款)所定の議決件数に遠く及ばないことが明らかであり、この点の瑕疵により、右決議は取消を免れない。
そして、この決議により選任された・・・取締役4名により、そのうちのY2を代表取締役に選任した取締役会の前記決議は、右株主総会決議の取り消しにより、右選任決議の時に遡ってその効力を否定されるべきものといわなければならない。」
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一人株主の承認による譲渡制限株式譲渡の効力・・・
最判平成5年3月30日(株主総会決議不存在等確認請求事件)
民集47巻4号3439頁、判時1488号149頁、判夕843号141頁
<事実の概要>
電子機器の製造販売等を目的とするY株式会社の創業者であるAは自ら代表取締役に就任するととともに、Y社の全株式を所有していた。
Aは息子Bを取締役に就任させ、専ら電子機器関係の技術者として養成しようとした。
またAの甥であるXはY社の業務及びBの指導にあたっていた。
AはY社の経営全般につきBに任せる状況ではなかったため、XにY社の将来の経営を委ねる旨の考えを表明していた。
その後Aの死亡によりY社の株式はすべてBが相続し、BがYの代表取締役に就任したが、XはBに対し、今後Y社を一緒にやっていくのであればY社の経営権と株式を譲渡すべきことを主張した。
BはXの申出を入れて発行済株式総数2万株のうち1万5000株をXらに無償で譲渡することに同意した。
しかしこの株式譲渡に関してY社定款所定の取締役会の承認はなされていない。
その株主総会においてB及びXら全株主出席のもと、B及びXらを取締役ないし監査役に選任した。
しかし一方、Bは自分がY社の全株式を有する株主であるとして別に株主総会を開催し、Xらを構成員から排除した取締役ないし監査役を選任した。
Xらによりこの株主総会決議の不存在確認を求める訴えを提起。
原審は株主の譲受人たるXらが株主総会に出席して議決権行使が異議なく認められたことによって、株式譲渡に関して会社の議決権行使が異議なく認められたことによって、株式譲渡に関して会社の最高決議機関である株主総会の承認があったと評価でき、これにより取締役会の承認があった同視されるからXらの主張は正当とした。
Y社は上告した。
<判決理由>上告棄却。
「商法204条1項但書が、株式の譲渡につき定款をもって取締役会の承認を要する旨を定めることを妨げないと規定している趣旨は、専ら会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、もって譲渡人以外の株主の利益が保護することにあると解される・・・から、本件のようないわゆる一人会社の株主がその保有する株式を他に譲渡した場合には、定款所定の取締役会の承認がなくても、その譲渡は、会社に対する関係においても有効と解するのが相当である。
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譲渡制限に違反した株式譲渡の効力・・・
最判昭和48年6月15日(株式譲渡担保契約無効確認請求事件)
民集27巻6号700頁、判時710号97頁、判夕299号301頁
<事実の概要>
合板の製造販売を目的とするA株式会社の代表取締役であるXは、A社の原材料の仕入先であるYに対するA社の債務の支払を確保するために、X及びその家族(以下、「Xら」)とが保有するA社株式38万7500株に相当する株券434枚をYに交付した。
A社定款には株式譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあったが、上記交付が株式の譲渡担保にあたるとすると、本件に対して株券の引渡しを求めて訴えを提起した。
第1審・原審ともに取締役会の承認のない株式譲渡担保は会社との関係では無効であるが、当事者間においては有効であるとしてXらの請求を棄却。
Xらは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「商法204条1項但書は、株式の譲渡につき、定款をもって取締役会の承認を要する旨定めることを妨げないと規定し、株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もっぱら会社にとって好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。
そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であるべきことに鑑みると、定款に前述のような定めがある場合に取締役会の承認を得ずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である。」
「ところで、株式を譲渡担保に供することは、商法204条1項にいう株式の譲渡にあたると解すべきであるから、叙上の場合と同様、株式の譲渡につき定款による制限のある場合に、株式が譲渡担保に供されることにつき取締役会の承認を得ていなくても、当事者間では、有効なものとして、株式の権利移転の効力を生ずるものというべきである。」
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譲渡制限株式の評価・・・
大阪高決平成元年3月28日(株式売買価格決定に対する即時抗告事件)
判時1324号140頁、判夕712号229頁、金判825号18頁
<事実の概要>
A株式会社は定款による株式譲渡制限を行っている。
XらからA社に対し各自所有するA社株式をBに対して譲渡することの承認を求めたところ、A社は譲渡を承認しないこと及び譲渡相手方としてY株式会社(A社株主)を指定することを通知した。
X・Y間で上記株式の売買価格について協議がととのわず、裁判所に対して売買価格決定の請求がなされ、原審はいわゆる配当還元方式を採用して株価を2754円と算定した。
Xは抗告した。
<判決理由>原決定変更。
「本件は商法204条の4、2項に基づき売買価格を決定するものであって、それは、被指定者が売渡請求をなした時点における会社の資産状態その他一切の事情(ただし株価形成と関係ある要素に限る)を斟酌して、右時点における当該具体的場合における客観的交換価格を非訟手続で形成(確認的測定でなく)するものである。
ところで、継続企業は経済的に収益力により成長活動をなす側面と、土地等資産を所有する側面に分かれ、株式の化体する株主権も右に対応して利益配当請求権と残余財産分配請求権に分かれるところ、後記の特段の事情のない限り、一般少数非支配株主が会社から受ける財産的利益は利益配当(特段の事情のあるときは会社の準資産価値)のみであり、将来の利益配当に対する期待が一般株主にとっての投資対象と解される。
したがって、少なくとも会社の経営支配力を有しない(買主にとって)株式の評価は右将来の配当利益を株価決定の原則的要素となすべきものというべきであるが、他方、現在及び将来の配当金の決定が多数者の配当政策に偏ってなされるおそれがないこともなく、右配当利益により算出される株価が一株当たりの会社資産の解体価値に満たないこともありうるので、多数者と少数者の利害を調整して公正期するため、右解体利益により算出される株価価格は株価の最低限を画する意義を有するというべく、また、収益力を欠くとき、将来の配当金の予測ができないとき、又は近く、会社の解散・清算、企業ないしは遊休資産の売却の可能性が認められるとき、会社が協同組合的実態を有するときなど特段の事情のある場合は二次的に会社の資産価値(解体価値又は企業価値)を算定要素として使用又は併用すべき場合があるというべきである。
また、上場を仮定して類似業種、会社の株価に比準して算定することは類似性の確保が困難である。」
「類似業種比準方式としての国税庁長官通達・・・による方式(以下「国税庁方式」という)」が、「Yらが本件会社は上場基準をみたす大会社であるため最適である旨主張している。
しかしながら、右基本通達は大量発生する課税対象に対し国家が迅速に対応すべき目的で課税技術上の観点から考案された方式で、国家と国民の公権力の行使関係を律する基準であって、本件のように私人間の具体的個別的利害対立下で公正適正な経済的利益を当事者に享受させようとする商法204条の4、2項の理念とは異なるものであるのみならず、標本会社の公表がなく類似性の検証が不可能であり、利益の成長要素が考慮されず、減価率の合理性が疑わしいため、本件のような譲渡制限株式の売買価格決定の単純又は併用方式における根拠方式となすことは適当でない。」
「収益還元方式については・・・、これは将来各期に期待される一株当り課税後利益を資本化率で還元する方式であるが、右方式の純利益のなかには内部留保として新たな設備投資などにつぎこまれ、株主に対し直接経済的利益をもたらさないものが含まれている点、・・・右方式の資本化率が相当でないとされる点など疑問があり少なくとも配当政策等企業経営を自由になしえない本件のような非支配株主の株価算定には適当でない。」
「純資産価額方式については、・・・本件において会社の資産価値を算定要素として斟酌すべき前示特段の事情は認められないので、直ちにとりがたく、ただ、株価の最下限値を確認するためを除き、採用すべき理論的根拠に乏しいという外ない。」
「以上の次第で、本件においては将来の配当利益を算定基礎として評価する方法が最適というべきであって、」単純な配当還元方式「は企業の成長予測が反映されず単純に過ぎ採用できず、結局右利益及び配当の増加傾向を予測するゴードン・モデル式によるのが適当をいうべきである。」
「よって、結局、本件株式の売買価格は4687円と定めるのが相当である。」
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