遺言執行者の選任・・・

遺言執行者の選任・・・

遺言者は自ら遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができます。

これは、遺言書によって指定しなければなりません。

例えば、「遺贈」などの場合に遺言執行者を指定していなかった場合にはどうでしょうか?

遺贈とは、遺言者が相続人以外に遺産を渡すような場合をいいます。

自分のお世話になった他人に遺産を渡すような遺言書を書いた場合です。

では、その場合にその遺言書の執行手続をするのは誰でしょうか?

そうです、これをするのが遺言執行者なのです。

では、話を戻しますね。

遺言執行者がいない場合には、誰がその遺言執行の手続をするのでしょうか?

これは相続人なんです。

遺贈を受ける人が手続をすることはできないんです。

ということは、遺贈を受ける他人の手続を、正規の相続人が手続をすることになるわけです。

想像するだけでも、もめそうですよね。

そこで、法はこう定めています。

指定の遺言執行者がないときまたは遺言執行者がなくなったとき、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができます。

ここでいう利害関係人というのが、「遺贈を受ける他の人」も含まれるわけです。

遺言執行者がないときとは、下記の場合になります。

・遺言執行者の指定のない場合

・指定の委託された第三者がこれを承諾しない場合

・指定された遺言執行者が就職を承諾しない場合

・欠格事由該当者を指定した場合

遺言執行者がなくなったとき地は、下記の場合です。

・遺言執行者が破産者になった場合

・辞任または解任された場合

などになります。

<遺言執行者選任の家庭裁判所への申立手続>

①申立権者

利害関係人

相続人・被認知者・受遺者・相続債権者・受遺者の債権者・相続財産管理人など、遺言執行に関し法律上の利害関係を有する者をいいます。

②管轄

相続開始地の家庭裁判所

③申立費用

収入印紙800円

予納郵便切手約400円

④添付書類

・申立人、遺言者の戸籍謄本

・遺言執行者候補者の戸籍謄本・住民票

・遺言書の写し

遺言には、遺言の内容を実現するために、遺言執行者を要するものと要しないものとがあります。(下記の図を参照)

家庭裁判所の審判手続きは、その辺を考慮されるようです。

遺言できる事項 生前行為でもできるもの 遺言の執行の要否
遺言執行者必要 遺言執行者または相続人必要 不要
法定事由 狭義の相続に関する事項 ①推定相続人の廃除・取消
②相続分の指定・指定の委託
③特別受益の持ち戻しの免除
④遺産分割の方法の指定・指定の委託
⑤遺産分割の禁止
⑥共同相続人の担保責任の減免・過重
⑦遺贈の減殺方法の指定
遺産の処分に関する事項 ⑧遺贈
生前なら贈与
⑨財団法人設立のための寄付行為
⑩信託の設定
身分上の事項 ⑪認知
⑫未成年後見人の指定
⑬未成年後見監督人の指定
遺言の執行に関する事項 ⑭遺言執行者の指定・委託
学説が認める事項 ⑮祖先の祭祀主宰者の指定
⑯生命保険金受取人の指定・変更

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません。

このような場合、相続人が遺贈の目的物についてした処分行為は無効です。

では、遺言執行者の職務権限はどのようなものでしょうか?

遺言認知の届出、遺言による推定相続人廃除・取消請求およびその届出、相続財産目録の調整、破産手続開始の申立等については別に定めがありますが、一般的に、遺言執行者は、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。

遺言執行には、遺言執行者の指定・選任は重要になってきます。

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遺言執行者の職務・・・

遺言執行者の職務権限として、遺言認知の届出、遺言による推定相続人排除・取消請求およびその届出、相続財産目録の調整、破産手続開始の申立て等が定められています。

一般的には、相続財産の管理、その他の執行に必要な一切の行為をする権利を有するとされています。

遺言執行者職務執行には、善良な管理者の注意義務、報告義務、受取物件の引渡等の義務、金銭消費の責任、費用の償還請求などについて、委任の規定が準用されます。

そして、委任者に当たるのが、相続人です。

特定遺贈で、不動産を目的とする場合には、受遺者に対する権利移転の登記は、遺言執行者が履行します。

つまり、ある特定の不動産を、遺言者が、相続人以外の人に遺贈する場合に、その不動産の登記手続きは、遺言執行者が単独でできるということです。

確かに、相続人しか手続きできなければ、赤の他人がもらう不動産の手続きなんて、いつまでもしませんよね。

この点でも、遺言執行者を指定するメリットはありそうですよね。

遺言執行者の職務の中の財産目録の作成について説明します。

遺言執行者は、相続財産を管理して遺言の執行に当たりますから、当然、相続人に対してその管理に属する相続財産の範囲を明らかにする必要があります。

そこで、遺言執行者は就職後遅滞なく、相続財産の目録を作成して、これを相続人に交付しなければなりません。

ただ、遺言の内容が、認知や相続人の廃除・取消などの財産に関しないものである場合には、財産目録を作成する必要はないとされています。

また、遺言執行者は、財産目録を作成するに当たり、その正確性を期すために、相続人が立会いを請求したときは、その立会いの上で、これを作成しなければならないとされています。

相続人の請求があったときは、公証人に財産目録を作成させなけれならないとされています。

公証人は、財産目録を作成する場合に、相続人を立ち合わせます。

そして、目録2通を作成して、その1通を遺言執行者に交付し、1通は公証人役場に保存します。

では、この費用は誰が負担するのでしょうか?

この費用は、当然、相続財産の負担になります。

相続人は、遺言執行者に対して、いつでも遺言執行についての進捗状況の報告を求めることができます。

遺言執行者は、相続人に対して、回答しない場合は、その任務を怠ったことになり、解任事由となることもあります。

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

また、遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前であっても、「遺言執行者がある場合」に該当します。

これに違反した相続人の行為は絶対的に無効であり、第三者に対しても効力がありません。

遺言執行を妨げる行為について少し例を挙げておきます。

①相続人が遺贈の目的である財産を自己名義に移すような行為

②相続人が相続財産に属する家屋の賃料を勝手に取り立てるような行為

③「相続させる遺言」がある場合に、その内容と異なる遺産分割をするような行為

などがあります。

遺言を執行lするためには、遺言執行者の指定・選任は大変重要です。

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遺言執行者の辞任・解任・・・

遺言執行者が、その任務を怠ったときその他の事由(長期の病気療養など)があるときは、利害関係人は家庭裁判所にその解任を請求することができるとされています。

そして、家庭裁判所は、請求を待たずに、職権で解任することはできません。

<遺言執行者解任の申立て>

この遺言執行者解任審判申立事件は、甲類審判事件になります。

①申立権者

利害関係人

利害関係人とは、相続人、受遺者、共同遺言執行者、相続債権者など遺言の執行につき法律上の利害関係を有する者などです。

②管轄

相続開始地の家庭裁判所

③申立費用

収入印紙800円

予納郵便切手800円

④添付書類

申立人・遺言執行者・遺言者の各戸籍謄本

遺言書の写し

遺言執行者が任務を怠っていて、執行遅滞がある場合には、解任の申立を考える必要も出てきます。

また、遺言執行者の解任の申立があっても、解任の審判があるまで、遺言執行者はその地位にあり、任務を遂行することができることになります。

そこで、審判の申立人は、申立についての審判が効力を生ずるまでの間、遺言執行者の職務の執行を停止し、またはその職務代行者の選任を家庭裁判所に申立をすることができるとされています。

<遺言執行者の職務停止・職務代行者選任の申立>

遺言執行者の職務執行停止・職務代行者選任は、審判前の保全処分であって、その申立は家事雑事事件です。

①申立権者

本案審判の申立人

②管轄

本案審判の係属する裁判所

③申立費用

予納郵便切手約3,920円

④添付書類

保全処分を求める事由を疎明する資料

これらが、遺言執行者の解任についての申立になります。

次に遺言執行者の辞任について説明します。

遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます。

<遺言執行者の辞任許可申立>

遺言執行者の辞任許可審判申立事件は、甲類審判事項になります。

①申立権者

遺言執行者

②管轄

相続開始地の家庭裁判所

③申立費用

収入印紙800円

予納郵便切手400円

④添付書類

申立人および遺言者の戸籍謄本

遺言書の写し

また、遺言執行者が就職した後に、欠格事由が発生した場合、遺言者は当然に失職し、解任手続きは不要とされています。

欠格事由として、未成年者・破産者は遺言執行者になれないことになっています。

遺言執行者が後発的な事由によって、欠格事由に該当するようになった場合、解任審判が確定した場合、その任務は終了します。

任務終了の事実は相続人および受遺者にこれを通知し、または相続人および受遺者がこれを知ったときでなければ、これをもって対抗することができないとされています。

そして、通知者は、遺言執行者本人または成年後見人もしくは破産管財人になります。

遺言執行者を解任・辞任する場合には、これらの手続きが必要になります。

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遺言の無効・取消し・・・

◇遺言の無効

遺言の一般原則に反する無効は次の場合になります。

①法定の方式によらない遺言

②満15歳に達しない者がした遺言

③遺言をするときにおいてその能力を有しない者がした遺言

④所定の方式によらない成年被後見人・口が利けない者ががした遺言

⑤欠格証人が立ち会った遺言

⑥2人以上の者が同一の証書でした遺言

これらの遺言は無効になりますので、注意が必要になります。

また、民法上に特殊な無効原因があります。

被後見人が、後見の計算終了前に、後見人、後見人の配偶者・直系卑属の利益となる遺言をしたときは、その遺言は無効となります。

意思能力を欠く人(被後見人)の面倒を見る後見人等の利益になる遺言は無効になるということです。

後見人の被後見人に対する不当な影響を防止することを目的に定められています。

しかし、後見人が被後見人の直系血族、配偶者、兄弟姉妹であるときは、その不当な影響のおそれがないので、この場合の遺言は有効となります。

遺言の無効を主張する場合には、遺言の無効確認の調停申立をする必要があります。

◇遺言の取消し

遺言の取消しは、遺言が詐欺・強迫によりされて、意思表示に瑕疵がある場合になされます。

遺言者の相続人が遺言の取消権者になります。

遺言者本人が取消権を行使しないで死亡したときは、その相続人が取消権を承継して行使するということです。

遺言取消のの意思表示は、相続人、受遺者などの利害関係人に対して行います。

詐欺・強迫によりされた遺言は、取り消されるまでは有効として扱われますが、取消しにより無効になります。

また、詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができません。

取消しに争いがあるときは、遺言の取消しを確認する調停を申し立てることになります。

負担付遺贈の受遺者が負担を履行しない場合、相続人は、家庭裁判所にその遺言の取消しを請求することができますが、その請求をするためには、まず、受遺者に対して、相当の期間を定めてその履行を催告しなければなりません。

催告者は、相続人または遺言執行者になります。

被催告者は、受遺者またはその相続人になります。

どちらにしても、遺言の無効・取消しなどの問題が出る場合には、調停を申し立てる必要が出てきます。

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