相続財産(銀行預金免責約款)・・・

相続財産(銀行預金免責約款)・・・

銀行と預金者間に免責約款があっても、取引通念上、払戻請求者が正当な受領権限を有しないことを疑わしめる特段の事情があって、銀行が業務上尽くすべき注意を漫然怠ったためにこれを看過したような場合にまで銀行を免責する趣旨ではないことは明らかであるが、本件程度の金額250万円、支店の相違のみで、銀行に対して印影の照合以外に筆跡の照合等をすべき義務があるということは到底できないとしたうえで、本件においては、払戻が権利者によるものでないことを疑わしめる特段の事情もなく、銀行は通常の払戻業務に際して要求される程度の注意義務を尽くせば足りるものであるから、本件払戻請求書原告名の下の印影と本件通帳上の本件届出印鑑とを照合し、相違がないと認めて払戻に応じた銀行に過失ないし責任を認めることはできないとして、銀行の払戻請求者に対する預金の払戻が免責条項に照らして預金者に対して免責されるとした事例があります。

預金契約に免責条項がある場合、払戻手続をした正当な受領権限を有しないと疑わしめる事情が存在したのに、銀行が業務上尽くすべき注意義務を怠り、これを看過したときは、免責条項によっても免責されず、銀行の窓口担当者が払戻手続をしている者が預金者と異なっていると認識したときは、通帳と届出印を確認するだけでなく、身分証明書の呈示を求めたり、生年月日や電話番号などを尋ねるなどして、正当な受領権限を有することを確認しなければ過失があるというべきであり、これは民法478条についても同様であるとして、A支店預金の払戻については銀行の過失を肯定し、B支店預金の払戻については銀行の過失を否定した事例があります。

民法第478条

債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

銀行員が預金払戻の際、相当の注意をもって印鑑照合をすることを怠ったとして無権限者に対する預金払戻につき、民法478条の免責が認められなかった事例があります。

スポンサードリンク

相続財産(銀行貸金庫)・・・

銀行と利用者との間の貸金庫取引は、銀行の付随業務である保護預かりの一形態であって、貸金庫の内容物については、民事執行法143条(債権の執行)に基づいて利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差押える方法により、強制執行することができ、貸金庫契約に基づく引渡請求権の差押においては、貸金庫を特定することによって引渡請求権を特定することができ、さらに、差押命令に基づく動産の引渡が任意にされない場合の取立訴訟においても、差押債権者は、貸金庫を特定し、それについて貸金庫契約が締結されていることを立証すれば足り、貸金庫内の個々の動産を特定してその存在を立証する必要はないと解されています。

そして、貸金庫は、**銀行**支店の貸金庫室内に存する甲との貸金庫契約に係る貸金庫と表示し、引渡方法は、貸金庫室に執行官を入室させた上、貸金庫契約の定めるところにより、執行官が貸金庫内にある動産を取り出すことができる状態にする方法を表示します。

民事執行法第百四十三条

金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。

スポンサードリンク

相続財産(商行為の代理権)・・・

商行為の委任による代理権は本人が死亡しても消滅しません。

商法第506条

商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。

本人が自らの意思によらず死亡した場合も、代理人は本人の死後はその相続人の代理人となり、営業は廃止されたと解すべきでなく、また、本人の死後、代理人が従来の商号を使って営業を行なっていても、商人の相続人は、その債権債務一切を承継する以上は、併せてその企業としての営業も承継したというべきであって、相続人らが実際にその営業を承継し継続する意思があったかどうか、その営業を承継したかどうかにはかかわらないものと解されています。

スポンサードリンク

相続財産(損害賠償請求権)・・・

医療過誤を原因とする損害賠償・慰謝料の本人分を父母両名が2分の1ずつ相続したとして、その給付を命じた事例があります。

被害者の保有者に対する損害賠償債権及び保有者の被害者に対する損害賠償債務が加害者、被害者の双方がともに死亡し、同一人が双方を相続したときは、被害者の保険会社に対する損害賠償額の支払請求は混同により消滅し、保有者は保険会社に対して保険金の請求をすることができません。

交通事故を起した運転者甲、同乗者乙の兄弟の相続につき、実母は甲の相続を放棄して、乙を相続し、実父は甲を相続して、乙の相続を放棄した場合、実母は実父に対して損害賠償を請求することができるとして、実父に対して損害賠償金の支払を命じるとともに、参加人損保会社に対して原告勝訴判決確定を条件として同額の金員支払を命じた事例があります。

この場合、実母は保険金取得を目的として甲の相続を放棄したことが認められるが、相続の放棄は、本来、相続放棄をしようとする者が自由にこれをすることができるから、たとえ、実母が実父と合意の上、参加人からの保険金取得を目的として甲につき相続を放棄をしたとしても、それだけで、実母の相続放棄が権利の濫用に該当するとは認められないとしています。

不貞行為、悪意の遺棄をした配偶者に対する慰謝料請求権は他の配偶者の一身専属的権利であり、これを行使するか否かは権利者の意思にかかり、その行使の意思が客観的に表明された証拠はないとして、その相続を否定した事例があります。

勤務時間中に脳梗塞で死亡した警備会社の従業員の遺族が請求した会社に対する安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償請求が認められた事例があります。

精神保健法20条にいう保護者は民法714条1項の法定監督義務者に該当するとして、精神分裂病患者による殺人事件の被害者の相続人が保護者に対して精神保健法22条違反を理由とする損害賠償請求を認めた事例があります。

精神保健法第二十条

1  精神障害者については、その後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は保護者とならない。
一  行方の知れない者
二  当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三  家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四  破産者
五  成年被後見人又は被保佐人
六  未成年者
2  保護者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、次のとおりとする。ただし、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人又は保佐人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。
一  後見人又は保佐人
二  配偶者
三  親権を行う者
四  前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者
3  前項ただし書の規定による順位の変更及び同項第四号の規定による選任は家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)の適用については、同法第九条第一項 甲類に掲げる事項とみなす。

精神保健法第二十二条

1 保護者は、精神障害者(第二十二条の四第二項に規定する任意入院者及び病院又は診療所に入院しないで行われる精神障害の医療を継続して受けている者を除く。以下この項及び第三項において同じ。)に治療を受けさせ、及び精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。
2  保護者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。
3  保護者は、精神障害者に医療を受けさせるに当たつては、医師の指示に従わなければならない。

民法第714条

1. 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

スポンサードリンク