貸付信託受益権の遺贈・・・

貸付信託受益権の遺贈・・・

記名付貸付信託受益権は裏書によって譲渡できませんので、その受益権を遺贈するには指名債権遺贈の方法によってします。

貸付信託とは、「一個の信託契約に基いて、受託者が多数の委託者との間に締結する信託契約により受け入れた金銭を、主として貸付又は手形割引の方法により、合同して運用する金銭信託であって、当該信託契約に係る受益権を受益証券によって表示するもの」といいます。

信託期間は2年および5年の2種類で、収益配当は実績配当である。元本補填の契約が行われ、そのための準備金として「特別留保金」が積み立てられます。

貸付または手形割引の方法で運用するのは指定合同運用金銭信託に似ているが、受益権が受益証券により表示された流通性があるという特色を持ちます。

受益証券は記名式と無記名式に分かれるが、記名式が一般的です。

信託約款上、受益権譲渡は信託者の承諾を要するとされていますので、遺贈を有効に成立させるにはその特約の解除を受けなければなりません。

貸付信託契約に基づく受益権が記名式受益証券によって表示されている場合、その受益権の譲渡は、明文の規定はありませんが指名債権譲渡の方法によって行なうものとされます。

包括遺贈財産中の受益権について、信託銀行は、相続人若しくは包括受遺者の双方から履行を請求される場合がありますから、包括受遺者が信託銀行に対して受益権を主張するには対抗要件を備えることを要すると解されます。

指名債権譲渡の対抗要件は譲渡人の債務者に対する通知又は債務者の承諾です。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

譲渡通知は遺贈義務者(遺言執行者又は相続人)が信託銀行宛にします。

受遺者のした通知では債務者に対抗できません。

(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
民法第468条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

信託銀行が受遺者又は遺贈義務者に対して受益権が遺贈された事実を了承した旨を表明すると、債権譲渡を承諾したことになります。

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貸付信託受益権遺贈の譲渡禁止特約の解除・・・

信託約款上、受益権を譲渡するには受託者の承諾を要するとされています。

この譲渡禁止の特約により、受託者の承諾を欠く譲渡は効力を生じないと解されていますので、債権譲渡通知に併せて譲渡禁止の特約の解除を請求します。

受益権の譲渡禁止は、その譲渡性を全く否定したのではなく、譲渡に関して生ずることのある紛争を未然に防止するため信託銀行の事務処理の便宜上定められたものと考えられますので、信託銀行の承諾があれば譲渡は効力を生じます。

受益権遺贈の場合でも、譲渡禁止の特約の解除を要するものと考えられます。

譲渡禁止の特約の解除は、性質上、譲渡人、譲受人の双方が共同して信託銀行に対して請求します。

遺贈の場合、これに当たる者は、遺贈義務者(遺言執行者又は相続人)と受遺者です。

信託銀行が譲受人を特定して譲渡禁止の特約解除を承諾したときは、譲受人はこれによって信託銀行に対抗することができ、さらに譲渡通知又は債務者の承諾は、これを要しないものとされます。

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無記名貸付信託受益権の遺贈 ・・・

無記名貸付信託受益権の譲渡及び行使は受益証券によってすることとなっていますので、その遺贈は、証券の交付が有効要件であるとされます。

無記名債権とは、その発生、移転、行使が証券によってなされる債権です。

その権利を表章する無記名証券は、債権者を表示せず、証券の正当な所持人が権利者とされます。

無記名債券は動産とみなされますので、判例上、無記名債権の譲渡は、当事者の意思表示により効力を生じ、証券の交付は第三者に対する対抗要件であるとされています。

(不動産及び動産)
民法第86条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。

無記名証券としては、無記名式の貸付信託受益権のほか小切手、社債券、国債券、証券投資信託受益権などがあります。

無記名債券を遺贈の目的とするときは、遺言者は、その旨の遺言とともに受遺者に証券を取得させる手段を講ずる必要があります。

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特許権等の遺贈・・・

特許権の移転は、相続その他の一般承継によるものを除いて、登録しなければ、その効力を生じません。

これに対して、相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならないとされています。

これは、包括遺贈の場合、特許権は遺言者の死亡の時に、その権利は受遺者に移転しますが、特許権の特定遺贈はその旨の登録をもってその効力を生ずるとされます。

特許権の移転は、特許庁に備える特許原簿に登録します。

実用新案権の移転は、特許庁に備える実用新案原簿に登録し、意匠権の移転は、特許庁に備える意匠原簿に登録し、商標権の移転は、特許庁に備える商標原簿に登録します。

申請人は、次の者になります。

①登録権利者(受遺者)及び登録義務者(遺贈義務者)が共同して申請します。

②包括遺贈の場合は、登録権利者が単独で申請します。

③登録義務者の承諾書を添付したとき、又は判決に基づく登録は、登録権利者だけで申請することができます。

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