寄与分の判例・・・
①被相続人に対する相続人の妻子の介助が相続人の履行補助的立場にある者の無償の寄与行為として当該相続人にとって特別の寄与があったと認めた事例があります。
②被相続人が創業した株式会社の実質は個人企業に近く、被相続人とは経済的にきわめて密着した関係にあり、会社への援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、被相続人に対する寄与と認める余地があるとして、経営危機にあった会社に資金提供をした相続人の寄与分を否定した原審判を取消して20%の寄与分を認めた事例があります。
③申立人の受けた生前贈与のうち、寄与に対する実質的対価と認められる部分は生計の資本ではないから特別受益に該当しないが、その限度で寄与分は請求できないとして、寄与評価額から生前贈与の価額を控除して寄与分を評価した事例があります。
④寄与分制度は共同相続人間の公平を図ろうとするものであり、被代襲者の寄与に基づき代襲相続人に寄与分を認めることも、相続人の配偶者や母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合にはこれを相続人の寄与分として考慮することも許されるとして、相手方両名の寄与分を遺産の半額と定めた原審判に裁量判断をこえた違法はないとした事例があります。
⑤寄与分に関する審判を通じて過去の扶養料の求償を求めることは必ずしも適切ではないなどとして、遺産分割における申立人の寄与分を否定した審判が確定していても、扶養料の求償申立が紛争の蒸し返しに当たるものとはいえないとして、扶養料の求償の可否を判断するためには事実の調査が必要であるとして、扶養料等申立を却下した原審判を取消して差し戻した事例があります。
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死亡保険金と特別受益・・・
保険契約者、被保険者とする被相続人甲と、死亡保険金受取人相続人Aとする養老保険契約に基づく死亡保険金が特別受益に該当するかについて、この契約に基づく死亡保険金請求権は、その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するものであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではないものとされています。
また、死亡保険金請求権は、被保険者が死亡したときに初めて発生するものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであるから、実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることはできないと解したうえで、相続人Aが取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得する死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産に当たらないと解するのが相当としました。
(特別受益者の相続分)
民法第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
死亡保険金請求権取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推により当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解しました。
被相続人の生前に、特別に財産をもらうことを特別受益と言い、その財産を受けた人の事を特別受益者と言います。
特別受益を相続財産に戻すことを特別受益の持ち戻しといいます。
特段の事情の有無に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人とその他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきとされています。
生命保険契約において、保険金受取人が単に「相続人」と指定されたときは、特段の事情のない限り、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として指定した「他人のための保険契約」であり、本件において特段の事情は見いだしがたく、また、この保険契約は、被相続人が原告らを受取人として指定した「第三者のためにする契約」であるから、原告らは被相続人の死亡により、右契約に基づく保険金請求権を固有の権利として原始的に取得したものであり、遺贈又は贈与に該当せず、かつ、その保険金受取人に指定された原告らが相続に関係なく保険金請求権を取得することが被相続人の契約意思に合致するから原告らが受け取った右保険金は特別受益にも当たらないと解した事例があります。
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非嫡出子の法定相続分・・・
非嫡出子の法定相続分は、嫡出である子の2分の1とされていますが、この「嫡出である子」には、婚姻届をした夫婦の間に出生したが、その後婚姻が取消された場合の子を除外するものではないとされています。
(法定相続分)
民法第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
非嫡出子が嫡出子に対して遺留分減殺請求をした場合、民法900条4号但書前段の規定を適用しても憲法14条に違反しないと解した事例があります。
憲法第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
民法900条4号但書前段の規定は法の下の平等を定めた憲法14条1項の規定に反し無効であるとした裁判が確定していますが、その後、この規定を合憲とした裁判に対する特別抗告が最高裁大法廷で審理され、前記規定は合理的理由のない差別とはいえないとして、この抗告は棄却されています。
この決定には右規定を違憲とする少数意見があります。
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現物分割・・・
遺産分割審判に対する即時抗告審において、相続人の中に本件土地の現実の利用を必要としているのは抗告人だけであり、抗告人に本件土地を取得させることが社会経済的観点から最も望ましいことなどから、抗告人に代償金支払の意思及び能力があることが明らかになった本件においては、たとえ、より高価で本件土地を取得することを申し出る他の相続人があったとしても、抗告人に本件土地を単独取得させるべき「特別の事由」があると認められるとして、原審判を取り消し、抗告人に本件土地を単独取得させた事例があります。
家事審判規則第百九条 家庭裁判所は、特別の事由があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物をもつてする分割に代えることができる。
上場株式については、一単位未満の株券の発行を請求することはできず、一単位未満の株式については、その行使しうる権利内容及び譲渡における株主名簿への記載に制限があり、したがって、分割された株式数が一単位の株式の倍数であるか、又はそれが一単位未満の場合には当該株式数の株券が現存しない限り、当該株式を表象する株券の引渡を強制することはできず、一単位未満の株式では株式本来の権利を行使することはできないから、新たに一単位未満の株式を生じさせる分割方法では株式の現物分割の目的を全うすることはできないので、このような株式の現物分割及び分割された株式数の株券の引渡の可否を判断するに当たっては、現に存在する株券の株式数、当該株式を発行する株式会社における一単位の株式数等をも考慮すべきであるとされています。
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