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相続の対象とならない権利義務(労災保険金)・・・
労災保険法に基づく療養補償給付請求権は、同法13条により現物支給を原則とし、亡き甲の一身専属の権利であるから、同人の死亡によって当然消滅したと見るべきであり、亡き甲の妻は甲の死亡後同人に対するその不支給処分の取り消しを求めることはできないとされます。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
労災保険法第十三条
1 療養補償給付は、療養の給付とする。
2 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
3 政府は、第一項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。
労災保険とは
労災保険とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、業務上災害又は通勤災害により、労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合、死亡した場合等について、被災労働者又はその遺族に対し所定の保険給付を行う制度です。
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相続の対象とならない権利義務(国民年金)・・・
国民年金法に基づく年金受給権を有する者が国に対して未支給年金の支払を求める訴訟の係属中に死亡したので、その相続人が同法19条1項の規定により老齢年金請求権を取得し、原告たる地位を当然に承継したと主張しましたが、規定は相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものではなく、遺族は国民年金法に基づき社会保険庁長官に対する支給請求をしたうえで、必要があればこれに対する処分を争うべきものであって、上告人が亡き原告の本件訴訟上の地位を承継することを認めることはできないとして、原告死亡により訴訟が終了したとした原審の判断及び上告人の訴訟参加の申立を却下した原審の判断を正当としました。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
国民年金法第19条
1 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。
3 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。
5 未支給の年金を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
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相続の対象とならない権利義務(厚生年金)・・・
夫が経営する会社から監査役として報酬と受けていた妻につき、厚生年金保険法59条1項所定の「(被保険者の死亡の当時その者によって)生計を維持したもの」との要件に該当しないとしてされた遺族厚生年金不支給処分が取消された事例があります。
約42年にわたり、叔父と夫婦として生活してきた姪に対する遺族厚生年金不支給処分の取り消しが認められた事例があります。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
厚生年金保険法第59条
1 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当事。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
1.夫、父母又は祖父母については、55歳以上であること。
2.子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。
2 前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。
3 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、第1項の規定の適用については、将来に向つて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。
4 第1項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。
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相続の対象とならない権利義務(遺族共済金)・・・
小規模企業共済法による共済契約に基づく遺族共済金につき、届出による婚姻関係がなお実体をとどめているときは、届出に係る配偶者がその受給権を有し、届出による婚姻関係がその実体を失って形骸化し、かつ、その状態が長期にわたって固定化し、解消される見込みのない状態の場合には内縁関係にある配偶者が受給権を有するとしたうえで、本件は後者に該当するとして内縁配偶者の受給権を認めた事例があります。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
小規模企業共済法は、小規模企業者の相互扶助の精神に基づき、小規模企業者の事業の廃止等につき、その拠出による共済制度を確立し、もつて小規模企業者の福祉の増進と小規模企業の振興に寄与することを目的とする日本の法律である。
当該共済制度の活用により、小規模企業の経営者たる個人事業主または会社役員の退職時に、いわゆる退職金的な一時金の支給を受けることを制度として可能としたものである。
なお、この判決は、被告に対して遅延損害金の支払を命じましたが、遅滞の責を免れるには供託をすることができるとしています。
民法第494条
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。
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