預貯金の払戻請求・・・
預金者は銀行に対し、自己の預金に関する取引履歴の開示請求権を有し、預金者の共同相続人の1人も同開示請求権を有するとした事例があります。
共同相続人の1人がした金融機関に対する遺産である預金の法定相続分相当分の払戻請求に対して、金融機関は共同相続人間に遺産分割協議の対象に含めることについての合意が成立する余地がある間は、その帰属が未確定であることを理由に請求を拒否することができるが、払戻請求者が当該預金を遺産分割協議の対象に含めることに不同意であり、今後もこれに同意する可能性のないことを明言している場合には、本件預金の法定相続分は払戻請求者である原告に帰属したものになるとして、請求を認容した事例があります。
預金額の法定相続分相当額の払戻請求を認め、金融機関は共同相続人間に遺産分割協議の対象に含めることについて合意が成立する余地がある間は、払戻請求を拒否する正当理由があるとして遅延損害金の請求は認めなかった事例があります。
定額郵便貯金につき、共同相続人の1人は自己の法定相続分に応じて払戻請求をすることができるとした事例があります。
遅延損害金は訴状送達の翌日から請求を認めました。
相続財産である貯金は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり共有関係にたつものではないと解されています。
共同相続人の1人が相続財産中の貯金につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、他の共同相続人に対する財産の侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるとして、本件請求は、相続についての遺産分割協議の成立や遺産分割審判に存在も認められないことから、家事審判事項である遺産分割を求めるものにほかならないとして、これを不適法として却下した原判決を破棄して差し戻した事例があります。
預金契約に免責条項がある場合、払戻手続をした者が正当な受領権限を有しないと疑わしめる事情が存在したのに、銀行が業務上尽くすべき注意義務を怠り、これを看過したときは、免責条項が存在したのに、銀行の窓口担当者が払戻手続をしている者が預金者と異なっていると認識したときは、通帳と届印を確認するだけでなく、身分証明書の呈示を求めたり、生年月日や電話番号などを尋ねるなどして、正当な受領権限を有することを確認しなければ過失があるというべきであり、これは民法478条についても同様であるとして、A支店預金の払戻については銀行の過失を肯定し、B支店預金の払戻については銀行の過失を否定した事例があります。
(債権の準占有者に対する弁済)
民法第478条 債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
銀行員が預金払戻の際、相当の注意をもって印鑑照合をすることを怠ったとして無権限者に対する預金払戻につき、民法478条の免責が認められなかった事例があります。
銀行預金通帳が窃取され、通帳の副印鑑を利用して偽造された疑いのある払戻請求書による預金払戻につき、担当者の印鑑照合事務の過失を認めた事例があります。
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株式の処分・・・
遺産分割前に共同相続人甲が他の相続人に無断で相続財産である株式を証券会社を通して売却し、買主がこれを善意取得した場合、他の相続人の甲に対する損害賠償請求訴訟につき、遺産分割手続を経ることなしに、これを認めると、遺産分割手続において寄与分を理由に具体的相続分に変更があった場合などに調整が困難になるなどの点は、右訴訟を審判判断することの妨げの決定理由にならないとして、これを肯定した事例があります。
相続人の中で、被相続人の商売を手伝うなどして、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人には法定相続分にプラスして財産がもらえます。
このプラス分の財産を寄与分といいます。
なお、対象者は、相続人だけであり、相続人の配偶者などは対象にはなりません。
寄与分がある場合、まずすべての相続財産から寄与分をマイナスし、残った部分について、法定相続通りに計算します。
そして、寄与分を貢献した相続人の相続財産にプラスします
民法では、寄与分が認められる要件として、以下の3つを挙げています。
(1)被相続人の商売を手伝うなど労働力を提供するか、お金などの財産を提供した場合
(2)被相続人の療養や看護をした場合
(3)その他の方法により被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与をした場合
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所有権の単独名義変更の更正・・・
相続開始後、遺産分割が実施されるまでの間は、共同相続された不動産は共同相続人全員の共有に属し、各相続人は当該不動産につき共有持分を持つことになります。
共同相続された不動産について共有者の1人が単独所有の登記名義を有しているときは、他の共同相続人は、その者に対し、共有持分権に基づく妨害廃除請求として自己の持分についての一部抹消等の登記手続きを求めることができると解されています。
本件請求は相続についての遺産分割協議の成立や遺産分割審判の存在も認められないことから、家事審判事項である遺産分割を求めるものにほかならないとして、これを不適法として却下した原判決を破棄して差し戻した事例があります。
遺産分割する前の状態は、共同相続といい、共同相続人が法定相続分の割合により遺産を共有していることになります。
法定相続分どおりの共同相続登記は、共同相続人全員が共同して申請するのが通常です。
しかし、共同相続人の中の一人が全員のために申請することもできます。
ただし、共同相続人の一人が自分の持分だけを相続登記することは認められません。
この登記は、後日遺産分割協議がまとまったときには、持分移転の登記を行ない、実体に合ったものにしなければなりません。
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遺産分割の当事者・・・
遺産分割の協議をする者は、相続人及びこれと同一の地位を有する包括受遺者、相続分の譲受人です。
分割当事者を欠いてなされた遺産分割は無効です。
未成年者が相続人の場合、親権者が未成年者の法定代理人として遺産分割をします。
遺産分割は利益相反行為ですから、親権者としてその親権者に服する未成年者が共同相続人のとき、又は同一親権に服する数人の未成年者が共同相続人のときは、特別代理人を選任しなければなりません。
遺産分割の場合、特別代理人は未成年者ごとに別人を選任します。
(利益相反行為)
民法第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
未成年者被後見人が共同相続人の場合、未成年後見人が未成年被後見人の法定代理人として、遺産分割します。
未成年後見人とその後見に服する未成年被後見人が共同相続人のとき、又は同一未成年後見人の後見に服する数人の未成年被後見人が共同相続人のときは、後見監督人がある場合を除いて、特別代理人を選任しなければなりません。
成年被後見人と成年後見人の場合も同様です。
(利益相反行為)
民法第860条 第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
被保佐人が共同相続人の場合、遺産分割は保佐人が代理権付与を受けている場合を除いて、被保佐人本人がしますが、これについては、保佐人の同意が必要です。
保佐人又はその代表する者と被保佐人との遺産分割については、保佐監督人がある場合を除いて、臨時保佐人を選任しなければなりません。
被補助人が共同相続人の場合、補助人が遺産分割の同意権又は代理権の付与を受けていないときは、遺産分割は補助人本人がします。
補助人が遺産分割の同意権又は代理権の付与を受けているときは、補助人又はその代表する者と被補助人との遺産分割については、補助監督人がある場合を除いて、臨時補助人を選任しなければなりません。
不在者が共同相続人の場合、不在者の財産管理人がその法定代理人として、家庭裁判所の許可を得て、遺産分割します。
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