特別縁故者の相続財産分与の審判手続・・・

特別縁故者の相続財産分与の審判手続・・・

相続財産分与の申立人は、被相続人との特別の縁故関係を明らかにしなければなりません。

家庭裁判所は、特別縁故に当たる事実の有無を職権で調査し、判断します。

その際、被相続人の意思を推認するための資料を収集することが重要と解されています。

相続財産分与の申立があったときは、裁判所書記官は、遅滞なく管理人に対しその旨を通知しなければなりません。

数人から相続財産分与の申立があったときは、審判手続及び審判は、併合してしなければなりません。

家庭裁判所は、相続財産の分与に関する審判をするには、管理人の意見を聴かなければなりません。

家庭裁判所は、相当であると認めるときは、遺産を任意に売却すべきことを命ずることができます。

抗告人らと相手方がいずれも特別縁故者に該当するとして、相手方に不動産を、抗告人らに現金を、それぞれ分与した原審判に対する即時抗告審において、本件不動産の評価額からすると、これを相手方に全部分与するのは、抗告人らのうちの1名との関係で不均衡の感は否めず、被相続人の遺志に沿うとも解せないから、本件不動産の分与については、任意売却の方法を含めた換価方式を検討した上、換価し、その代金額と現金額を合わせた全体の遺産の範囲で分与額を再度定めることが必要であるとして、原審判を取消し、原審に差し戻した事例があります。

相続財産の分与に関する審判は、相続財産分与の申立期間が経過した後にしなければなりません。

相続財産を分与する審判に対しては申立人・管理人が、申立を却下する審判に対しては申立人が、それぞれ即時抗告をすることができます。

併合審判に対して、申立人の1人又は管理人がした即時抗告は、申立人の全員についてその効力を生じます。

抗告を認めて、申立のとおり相続財産を分与した事例があります。

抗告人らを特別縁故者とした原審の判断を支持した上、分与額の算定に際し、遺産額その他の事情を考慮して原審の抗告人に対する分与額を増額した事例があります。

抗告裁判所が原決定を取消す場合には、その変更は不服申立の限度に限られ、抗告人の不利益に変更することの可否については肯定説、否定説がありますが、相続財産の一部を分与する審判に対し即時抗告をして全財産の分与を求めた事案で、抗告審が抗告人の特別縁故関係を否定して相続財産分与の申立を却下し、即時抗告をしなかった他の申立人に対する分与額を減額した事例があります。

相続財産の分与に関する審判が確定したときは、裁判所書記官は、遅滞なく管理人に対しその旨を通知しなければなりません。

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特別縁故者の遺言無効確認の訴え・・・

特別縁故者の財産分与の審判確定後

相続財産を分与する審判が確定したときは、管理人は、その清算事務として、特別縁故者に対して分与された財産を引き渡さなければなりません。

管理人が引渡しに応じないときは、家庭裁判所は、監督権に基づき管理人を解任することができます。

不動産の権利を取得した特別縁故者は、審判書正本・確定証明書を申請書に添付し、単独で権利取得の登記を申請します。

登記原因は「相続財産処分の審判」、その日付は審判確定の日です。

相続財産の分与に基づく取得は、遺贈とみなされ、相続税法が適用されます。

相続税の納税義務は、相続又は遺贈による財産の取得の時に成立するが、特別縁故者に財産分与がされた場合の財産の取得は、相続税法3条の2の擬制により遺贈と同一に取り扱われるべきであるから、その取得時期は相続開始時であり、その課税についてはこの時に施行されていた相続税法が適用されます。

(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
相続税法第3条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。第15条、第16条、第19条の2第1項、第19条の3第1項、第19条の4第1項及び第63条の場合並びに「第19条第2項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
1.被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約(保険業法(平成7年法律第105号)第2条第3項(定義)に規定する生命保険会社と締結した保険契約(これに類する共済に係る契約を含む。以下同じ。)その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(共済金を含む。以下同じ。)又は損害保険契約(同条第4項に規定する損害保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限る。)を取得した場合においては、当該保険金受取人(共済金受取人を含む。以下同じ。)について、当該保険金(次号に掲げる給与及び第5号又は第6号に掲げる権利に該当するものを除く。)のうち被相続人が負担した保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
2.被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
3.相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約(一定期間内に保険事故が発生しなかつた場合において返還金その他これに準ずるものの支払がない生命保険契約を除く。)で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、当該生命保険契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保障料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
4.相続開始の時において、まだ定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で被相続人が掛金又は保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該定期金給付契約の契約者であるものがある場合においては、当該定期金給付契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金又は保険料の金額の当該契約に係る掛金又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
5.定期金給付契約で定期金受取人に対しその生存中又は一定期間にわたり定期金を給付し、かつ、その者が死亡したときはその死亡後遺族その他の為に対して定期合又は一時金を給付するものに基づいて定期金受取人たる被相続人の死亡後相続人その他の者が定期金受取人又は一時金受取人となつた場合においては、当該定期金受取人又は一時金受取人となつた者について、当該定期金給付契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金又は保険料の金額の当該契約に係る掛金又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
6.被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(恩給法(大正12年法律第48号)の規定による扶助料に関する権利を除く。)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第2号に掲げる給与に該当するものを除く。)
2 前項第1号又は第3号から第5号までの規定の適用については、被相続人の被相続人が負担した保険料又は掛金は、被相続人が負担した保険料又は掛金とみなす。ただし、同項第3号又は第4号の規定により当該各号に掲げる者が当該被相続人の被相続人から当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなされた場合においては、当該被相続人の被相続人が負担した保険料又は掛金については、この限りでない。
3 第1項第3号又は第4号の規定の適用については、被相続人の遺言により払い込まれた保険料又は掛金は、被相続人が負担した保険料又は掛金とみなす。

特別縁故者に対する財産分与は、相続債権者又は受遺者に対する弁済を終え、相続財産の清算後の相続財産の全部又は一部を家庭裁判所の審判によって恩恵的に特別縁故者に分与するものであり、右特別縁故者は自ら申立をして初めて分与を受けることになるものであるから、財産分与の裁判に要した費用は、被相続人の債務ではなく、相続税法13条1項各号所定の遺産からの控除の対象となる債務に該当しないとされます。

(債務控除)
相続税法第13条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
1.被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
2.被相続人に係る葬式費用
2 相続又は遺贈により財産を取得した者が第1条の3第3号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
1.その財産に係る公租公課
2.その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
3.前2号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
4.その財産に関する贈与の義務
5.前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務
3 前条第1項第2号又は第3号に掲げる財産の取得、維持又は管理のために生じた債務の金額は、前2項の規定による控除金額に算入しない。ただし、同条第2項の規定により同号に掲げる財産の価額を課税価格に算入した場合においては、この限りでない。

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特別縁故者の財産分与審判の取消し ・・・

「相続人のあることが明らかでない」として相続財産の管理人が選任されたが、相続人の生死不明又は行方不明であっただけの場合、家事審判法7条、非訟事件手続法19条により選任審判を取消して申立を却下した審判は正当であり、このような相続財産管理人選任の審判が最初からその前提を欠くため不当であることを理由としてこれを取消す審判は当然遡求効を有し、取消しの審判がされると、相続財産管理人選任審判を前提としてなされた事後の手続はすべてその存立の根拠を失い、遡って違法となるというべきであるとされます。

家事審判法第7条 特別の定めがある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法(明治31年法律第14号)第1編の規定を準用する。ただし、同法第15条の規定は、この限りでない。

非訟事件手続法第19条 裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス

この場合、事情変更によって不当となったとして特別縁故者に対する相続財産分与審判は確定後であっても非訟事件手続法19条の規定にかかわらずこれを取消すことができるとした事例があります。

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特別縁故者と共有持分帰属の時期・・・

共有者の1人が相続人なくして死亡したとき、その持分は他の共有者に帰属します。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

その時期について、判例は、共有者の1人が死亡して相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続きが終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、民法958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定した時にはじめて、民法255条により他の共有者に帰属することになると解すべきであるとしています。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

特別縁故者に分与されなかった財産を他の共有者に対して持分移転する登記の取り扱いは次になります。

①他の共有者への権利の帰属時期は、特別縁故者からの財産分与申立期間満了の日の翌日又はその申立を却下する旨の審判確定日の翌日です。

②登記原因は「特別縁故者不存在確定」です。

③登記原因の日付は、被相続人の死亡の日から13月の期間の経過後の日であることを要します。

④共有持分移転の登記は、持分を取得した他の共有者を登記権利者、相続財産を登記義務者として、双方が共同して申請し、その際、相続財産の法定代理人である管理人の資格証明書として相続財産管理人選任審判書の謄本、印鑑証明書及び権利証として相続財産法人登記の登記済証を申請書に添付します。

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