担保をつけた場合の配当・・・

担保をつけた場合の配当・・・

担保とは、弁済を確保するために、債務者又は第三者に属する財産に対して、債権者が優先的に権利を行使することが認められているものをいいます。

担保をとっておかないと、債務者が破産した場合や、債務者の財産に強制執行をかける場合に、債権者平等の原則により、債権額に応じた比率でしか回収できないことになります。

債務者A ←→

債権者B 債権額1000万円
債権者C 債権額500万円
債権者D 債権額300万円

債務者Aは、債権者BCDに対し、上記の債務を負っていたのですが、Aは破産してしまい、Aの財産を換価したところ、180万円しかならなかった場合、按分した債権者BCDの配当額は次の金額になります。

債権者B 配当100万円
債権者C 配当50万円
債権者D 配当30万円

しかし、債権者Dが、債務者Aの180万円の唯一の財産に担保を有している場合は、債権者Dが優先して配当を受けることができます。

債権者B 配当180万円
債権者C 配当0円
債権者D 配当0円

となるのです。

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優先弁済の抵当権と根抵当権・・・

抵当権とは、債務者に対する特定の債権の回収を確実にするために、債務者又は第三者の財産に設定する約定担保です。

抵当権は、担保物を債権者が占有することを要しませんから、その所有者が引き続き使用・収益することができます。

抵当権は、債務者が抵当権設定者である場合には、その目的物を使って弁済にあてる金銭を収益することが許され、弁済しやすくなりますし、債権者としても、万一の場合には競売して売却代金から優先的に回収できるのです。

民法では、抵当権の目的物とできる物は原則として不動産に限られており、他には、地上権や永小作権という権利にも設定することができます。

また、特別法によって、不動産以外の物にも交換価値を見出し、抵当権の目的物とすることが認められます。

船舶、自動車をなどの動産抵当、財団抵当、抵当証券などがあります。

根抵当権とは、債権者と債務者間の一定の範囲に属する不特定の債権を極度額という一定の金額の範囲内で担保するものをいいます。

根抵当権で担保される債権として、民法では、次の4種類が認められています。

①債権者・債務者間の継続的取引契約によって生ずる債権

②債権者・債務者間の一定の種類の取引によって生ずる債権

③特定の原因に基づいて債権者・債務者間に継続して生ずる債権

④手形上又は小切手上の債権

AがBに対して商品を継続的に売り、それぞれの取引で300万円、200万円、100万円の債権が発生するとして、抵当権を用いて売買代金を担保しようとすると、売買の都度、300万円、200万円、100万円の3つの抵当権設定契約を交わさなければなりません。

これに対して、担保される債権の範囲を継続的商品供給契約によって生ずる売買代金とし、極度額を1000万円とする根抵当権設定契約を予め設定しておくと、全ての売買代金が担保されることになるのです。

この場合に、200万円の弁済があった後に、さらに300万円の売買代金債権が生じたとしても、抵当権では再度設定契約をしない限り担保されませんが、根抵当権ではこれも担保されることになります。

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物を留置する質権・・・

質権とは、目的物の占有を債権者に移転し、債権者が弁済を受けるまで留置して、間接的に弁済を強制するとともに、弁済がない場合には、この目的物から優先して弁済を受けられるという権利です。

質権は、目的物を質権者が占有しなければ成立せず、質権者は質権設定者に自分の代わりに質物を占有させることを禁じています。

(質権の設定)
民法第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

(質権設定者による代理占有の禁止)
民法第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

質権においては、目的物の占有を債権者が有することから、債務が弁済されないときは直ちに債権者が目的物の所有権を取得することができるように思えますが、民法では、これを禁止し、債権者が、債務者の差し迫った必要に乗じて不当に高価な物を質に取った場合などに、流質契約を結んではならないとされています。

(契約による質物の処分の禁止)
民法第349条 質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。

この規定は、強行法規ですので、違反すると質権設定契約自体が無効になります。

ただ、流質を禁止する必要がない場合には、特別法によって例外が認められており、例えば、商行為によって生じた債権を担保する質権では流質契約が認められていますし、営業質屋にも流質権が認められています。

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