社長個人名義の手形の会社責任・・・

社長個人名義の手形の会社責任・・・

山田さんは、ある会社の取締役をしており、この度、代表取締役社長の田中さんが、取引先との間で多額の融通手形を交換していることが、発覚しました。

ただし、手形は社長個人名で振出し、裏書なども会社の名は用いておらず、社長の田中さんは夜逃げをしてしまい、債権者たちは会社が支払うのが当然だと押しかけているのですが、会社に責任があるのでしょうか?

代表取締役の行為は、会社の行為そのものとみなされ、その法律効果は直接に会社に帰属し、代表取締役個人は権利も義務も取得しないとされます。

しかし、手形の振出しや裏書などの手形行為の場合には、要式が厳格に法定されていますから、肩書きのないものは個人としての行為とみなされます。

ですので、山田さんの会社は手形上の責任は負いません。

法律では、行為をする個人に損害賠償義務があるものとし、その不法行為が会社の職務執行につき行なわれた場合は、さらにその会社にも賠償責任を負わせています。

この「職務執行につき」の「職務」とは、実際にある行動が会社の仕事でなくても、他人からみてそれが会社の仕事と見られる場合も含むとされています。

一般に融通手形の交換によって他人に損害を与えれば不法行為となりますが、その融通手形の交換が会社の職務執行につき行なわれたかどうかが問題となります。

これについて、会社で普通の取引で生じた買掛けなどの決済に、社長個人名の手形を使用しているか、あるいは過去に使用したことがあるかで決まるとされます。

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従業員の車の事故で会社の責任・・・

山田さんの会社では、営業マンに会社が購入した乗用車を提供し、使用させていますが、休日に起した人身事故で、会社が賠償しなければならなくなりました。

営業マン自身に車を購入させ、その月賦代金分の手当とガソリン代や修理代を支給すれば、会社が賠償しなくてもよいのでしょうか?

民法では、従業員が会社の業務遂行について事故を起した場合、会社に賠償責任を負わせています。

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

また、自動車損害賠償保障法では、人身事故の被害者は、加害自動車を自己のために運行の用に共している運行供用者に対しても賠償を請求できること、しかもその場合に、その事故が加害運転者の過失によるものであることを被害者側が証明しないでよいことなどが規定されています。

山田さんの会社が営業マンの休日のドライブの事故で責任を問われたのは、この自賠法の規定に基づくものです。

では、従業員に車を買わせれば、この場合、会社が自賠法の責任を免れるのでしょうか?

営業時間中においては、会社はその車の運行で利益を受ける立場にあり、かつ、営業マンとの身分関係を通じて、その車の運行を支配していることになります。

このように、運行利益と運行支配の条件がそろえば、会社はその車の所有者でなくても運行供用者となります。

しかし、従業員に車を買わせる代わりに会社が手当として車の月賦金及びガソリン代や修理費を支給していれば、その車は名義上の所有者は従業員であっても、実質上の所有者は、会社で、会社は営業目的外の車の使用についても制限・指示ができるはずで、従業員自身に対する支配力はありませんが、車を通じて支配力を持っているわけですから、運行供用者になるのです。

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購入した機械の説明不足の損害賠償・・・

山田さんは電気部品を製作していますが、田中さんの会社から最新型の機械を購入し、田中さんの説明にしたがって使用したところ、出来上がった製品が規格外れの不良品でしたので、損害賠償をできるのでしょうか?

この場合には、瑕疵担保責任と債務不履行とが考えられます。

(売主の瑕疵担保責任)
民法第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

(債務不履行による損害賠償)
民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

瑕疵担保責任とは、製品に瑕疵があった場合の責任ですから、瑕疵担保責任による損害賠償は、欠陥がある機械をそのまま買取ることによる賠償になります。

欠陥を原因とする他の損害の賠償を請求するには、債務不履行を考えることになります。

本件の場合、機械そのものに欠陥があったわけではなく、田中さんの機械の説明が間違っていたようですので、売買の目的物に隠れた瑕疵があったことを理由とする瑕疵担保責任を追及することはできません。

田中さんの説明の間違いを考えてみますと、山田さんと田中さんとの売買契約は最新型の機械の売買ですから、田中さんの会社の債務の中には、契約書に明記されていなくても、使用法について適切な説明をするというサービス条項も含まれていると解されます。

ですので、田中さんの会社の債務履行は不完全だったわけですから、説明不足によって通常生ずる損害の賠償を請求できることになるのです。

本件の場合ですと、損害賠償の額は、製品が不良品でなかったとして場合の売上額と考えられます。

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