免除した債務の支払い請求・・・

免除した債務の支払い請求・・・

500万円を貸した人から、破産寸前でこのままだと他の債権者に残っているお金を返すことになるから、今ある100万円を支払うから債務を免除して欲しいと言われ応じたのですが、その後、その人は宝くじが当たったらしく、免除した400万円を返して欲しいのですが?

債権者が債務者に対して債務を免除する意思表示をすると、その債権は消滅してしまいます。

民法第519条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。

ですので、免除した400万円は請求できません。

ただし、債務免除を申し入れた時の言動に詐欺が成立する場合には、免除の意思表示を取り消すことができ、400万円の請求ができます。

(詐欺又は強迫)
民法第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

また、債務免除にあたって、一定の条件を付していて、その条件が守られていない場合には、免除の効果が発生しませんから、400万円を請求できます。

ただ、後で恩返しをすると言っていたことを理由としての残額請求は難しいかもしれません。

法律上は請求できませんから、あとは道義心に訴えて払ってもらうしかなくなります。

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倒産後の新会社へ売掛金請求・・・

(株)山田工業に対して売掛金を有していましたが、(株)山田工業は最近手形不渡りを出して、倒産してしまいました。

売掛金を回収できないかと思っていたところ、(株)山田工業の代表取締役の山田さんが、山田産業(株)を設立し、山田さんの財産を全て利用して、(株)山田工業と同一の商売を行っていることが判明しました。

売掛金を回収することはできないでしょうか?

法律上は、山田工業と山田産業は別法人ですから、山田工業の債務を山田産業に請求することはできません。

しかし、山田工業と山田産業とに特別の関係がある場合には、例外的にこれが認められる場合があります。

法人格が否認される場合として、判例は、株式会社が商法の規定に準拠して比較的容易に設立されえることに乗じ、取引の相手方からの債務履行請求手続きを誤らせ時間と費用とを浪費させる手段として、旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には、形式的には新会社の設立登記がなされていても、新旧両会社の実質は前後同一であり、新会社の設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であって、このような場合、会社は右取引の相手方に対し、信義則上、新旧両会社が別人格であることを主張できず、相手方は新旧両会社のいずれに対しても右債務についてその責任を追及することができるとしています。

ですので、山田産業は、山田工業の代表取締役であった山田さんが設立した会社であり、山田工業の財産を全て利用して山田工業と全く同一の商売をやっているということですから、法人格否認の法理が適用され、山田さんへの請求が認められる可能性があります。

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子会社の債務を親会社に請求・・・

取引先の債務不履行により損害を被り、損害賠償を請求したのですが、財産がなく、親会社に損害賠償したいのですが?

親会社・子会社の関係にあるとはいえ、法律上は別法人ですから、子会社に対する債権をもって親会社に対しての請求は認められません。

しかし、子会社の株式を全て所有し、子会社を意のままに支配している親会社には財産があるのに、子会社に財産がないから損害賠償できないことについて、法人格否認の法理が成立するかどうかが問題になります。

判例は、次のいずれかの場合には、親会社に対する請求を認める可能性を示唆しています。

①親会社・子会社間に、業務内容、人的・物的構成の混同、経理上の区分の不明確、子会社の株主総会、取締役会の不開催などの手続面の無視の事実があり、子会社が独立の法人として社会的経済的実体を欠き、全く親会社の営業の一部門に過ぎないと認められるような場合。

②親会社が子会社の株式の全部又はそのほとんどを保有するなどにより、子会社をその意のままに自由に支配できる関係にあって、しかも親会社が競業避止義務など法規の禁止規定の潜脱、契約上の義務の回避を図るなどの目的で、一応法律上別会社である子会社によって右の禁止行為を行わせるように、違法ないし不当な目的を達成するために子会社を利用する場合。

また、他の判例では、親会社が子会社の業務財産を一般的に支配しうるに足る株式を所有すると共に、企業活動の面からみて、株主たる親会社が、株主総会において子会社の取締役を自ら選任し、その取締役の業務執行行為を通じて子会社の財産などを現実的統一的に管理支配している場合には、親会社に対する請求が認められるとしています。

この判例では、親会社に責任追及できる債権者は、「子会社に対する関係で受動的立場にあるところの債権者に限る」とし、取引関係にある「能動的債権者」は除くとしています。

自ら任意的積極的に子会社との取引を選択してこれに対し信用拡大を図った「能動的債権者」も保護するのでは自己責任の原則にもとることなどが理由としてあげられています。

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