特定遺贈の遺言・・・
遺贈の目的が具体的に特定された遺贈を特定遺贈といいます。
遺言者甲は、「甲所有の不動産である東京都荒川区***○丁目○番○号を乙に遺贈する」旨の遺言書の記載を
①本件土地を遺贈の目的から明示的に排除していないこと、
②「荒川区***○丁目○番○号」は遺言者が長年居住していた自宅の所在場所を表示する住居表示であること、
③本件土地の登記簿上の所在は「荒川区***○丁目」、地番は「□番□」であり、本件建物の登記簿上の所在は「荒川区***○丁目□番□」、家屋番号は「○番○号の○」であって、いずれも本件遺言書の記載と一致しないこと、そうすると本件遺言者の記載は、遺言者の住所地にある本件土地及び本件建物を一体として、その共有持分を乙に遺贈する旨の意思を表示していたものと解するのが相当であり、これを本件建物の共有持分のみの遺贈と限定して解するのは当を得ないとした事例があります。
特定遺贈の目的は、主として、特定物と不特定物に分かれます。
遺贈の目的が「東京都港区***○丁目○番○号***平方メートル」というように特定してある場合、この遺贈を特定物の特定遺贈といいます。
「東京都港区***○丁目○番○号***平方メートルの宅地のうち100平方メートル」というように遺贈の目的となっている部分が特定されていない場合、この遺贈は、特定物の不特定遺贈といいます。
金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、かつ、相続財産の中にその債権額に相当する金銭がないときでも、その金額を遺贈の目的としたものと推定されます。
債務の免除も財産権の処分であり、遺贈の目的とすることができます。
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遺贈と推定相続人の廃除・・・
推定相続人廃除の審判が確定すると、被廃除者は被相続人の死亡時に遡って遺産につき何らの相続権を有しないこととなります。
その結果、被廃除者の債権者が被廃除者に対する貸金債権に基づき、被相続人の死後、同人名義不動産につき共同相続人名義の相続登記、被廃除者の共有持分につき仮差押登記及び強制競売開始決定に基づく差押登記をしても、差押の対象たる権利が遡及的に消滅して、同債権者は実質的無権利者となった(推定相続人廃除の遡及効については、法定解除の遡及効に関する民法545条1項但書のように第三者との関係においてこれを制限する規定はおかれていないから、上記のように解するほかない)とされます。
(解除の効果)
民法第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
この場合、被相続人が他の共同相続人に本件不動産を遺贈しているときは、遺贈との関係で被廃除者の債権者は民法177条の「第三者」に当たらないとされます。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
遺贈遺言の遺言執行者は第三者異議の訴えにより、被廃除者に債権者による強制執行の排除を求めることができます。
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遺贈の共有物分割請求 ・・・
被相続人の本件建物の持分3分の1が同人の遺産であることは明らかであるが、右持分は遺贈によって被相続人の死亡と同時にその相続財産から離脱し、遺産分割の対象から逸失するものと解すべきであり、受遺者がその遺贈を受けた持分権に基づいて分割手続を遺産分割審判としてしなければならないものではなく、このことは受遺者がたまたま共同相続人の1人であった場合も同様であると解して共有物分割をした事例があります。
(共有物の分割請求)
民法第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。
民法第257条 前条の規定は、第229条に規定する共有物については、適用しない。
(裁判による共有物の分割)
民法第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
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補充遺贈の遺言・・・
受遺者が、遺言者の死亡する以前に死亡したとき、その効力を生じませんから、受遺者が受けるべきであったものは遺言者の相続人に帰属します。
停止条件付遺贈の場合、その条件の成就前に受遺者が死亡したとき及び受遺者が遺贈を放棄したときも遺言者の相続人に帰属します。
(受遺者の死亡による遺贈の失効)
民法第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
民法第995条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
このような場合、遺贈の目的物が遺言者の相続人に帰属することを遺言者が欲しないときには、遺言で、第二順位の受遺者となる者をあらかじめ定めておきますと、第一順位の受遺者が遺言者の死亡以前に死亡しても、遺言者の相続が開始したとき、第二順位の受遺者が遺贈を受けることができます。
これを補充遺贈といい、次のような遺言になります。
「遺言者**は、次の財産を長男の**に遺贈する。しかし、長男**が前記遺贈の効力発生前に死亡したときは、次男**に前記財産を遺贈する。」
補充遺贈の受遺者は、第一順位の受遺者の相続人に限ることなく、全く別の第三者でもよいとされます。
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