売り渡した動産から債権回収・・・

売り渡した動産から債権回収・・・

売掛金を回収する場合、動産売買の先取特権を考えます。

動産売買の先取特権とは、動産を売り渡したときに、その動産から優先的に売買代金の弁済を受ける権利をいいます。

(動産の先取特権)
民法第311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1.不動産の賃貸借
2.旅館の宿泊
3.旅客又は荷物の運輸
4.動産の保存
5.動産の売買
6.種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
7.農業の労務
8.工業の労務

売り渡した商品が買主の手許にある場合、買主が任意に商品を引き渡してくれれば、商品を執行官に提出して動産競売の申立を行い、当該商品を競売にかけて競売代金から売掛金を回収することができます。

買主や第三者が商品を占有している場合で、予め差押を承諾する文書を差入れてもらっていれば、動産競売の申立が可能ですが、実際の執行官が商品のある場所に赴いて引渡しを求めた際、その占有者が引渡しを求めた際、その占有者が引渡しを拒めば執行不能となります。

民事執行法では、裁判所に「担保権の存在を証明する文書」を提出して動産競売開始許可決定を得れば、その決定正本を執行官に提出して動産競売を申し立てることができるようになり、この場合、執行官が動産のある場所に立ち入り、その動産を捜索することになります。

また、買主が商品を第三者に転売したが、その第三者から代金の支払を受けていないという場合、買主はその第三者に対して売買代金債権を有していることになるので、売主はその売買代金債権を動産売買の先取特権に基づいて差押えることができます。

(物上代位)
民法第304条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

売主が売買代金債権を差押える前に、別の債権者が差押又は仮差押をしていたとしても、売主は配当要求をしたり、あるいは別途差押えて転付命令を得るなどして、優先的に弁済を受けることができます。

しかし、別の債権者による民事執行手続きが終了してしまった後は、弁済を受けることができません。

また、買主が商品を第三者に転売し、その第三者から既に代金の支払を受けている場合には、回収する方法はありません。

第三者から買主に支払われたお金は、既に買主の他の財産に混入し、特定性を失っているからです。

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留置権を行使して債権回収・・・

債務者が弁済してくれないけれども、債務者の財産を占有しているときは、留置権の行使が考えられます。

留置権とは、債務の弁済を受けるまで、占有している債務者の物の引渡しを拒む、つまり留置する権利をいいます。

留置権には、民法上の留置権と商法上の留置権があります。

民事留置権の成立には、債権と物との間に、牽連関係が必要ですが、商事留置権には、このような関係は不要とされます。

牽連関係とは、売買の目的物と代金債権のように、担保される債権がその物に関して生じた債権であるというような関係です。

商事留置権が成立するためには、次のことが要件となります。

①債権者、債務者とも商人であること。

②双方のために商行為によって生じた債権であること。

③留置しようとする物が債務者の所有物であること。

例えば、継続的に部品の加工を請け負っていたところ、注文主が加工代金を支払ってくれなくなった場合など、代金を支払ってもらえるまで、商事留置権を行使し、手許にある部品の引渡しを拒むことができます。

留置権は物の引渡しを拒むことによって弁済を促すものですが、民事執行法では、留置権者による競売申立を認めていますので、その競売代金からも回収を図れます。

留置権に優先弁済権はありませんから、競売手続き中に他の債権者から配当を求められれば、平等に弁済を受けるにすぎないとされます。

債務者が破産宣告を受けたり、会社更生法の適用を受けたりした場合、民事留置権は消滅してしまいますが、商事留置権はそれぞれ別除権、更生担保権となって生き続け、優先弁済を受けることができます。

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詐害行為取消権の対象となる行為・・・

倒産状態の債務者が、唯一の資産である不動産を第三者に安く売ってしまった場合、債権者は詐害行為取消権によって、このような妨害行為を取消して、責任財産を元に戻すことができます。

詐害行為取消権の要件は、次になります。

①詐害行為が存在していること。

②債務者が詐害意思を有していること。

③受益者又はその人からの転得者が詐害事実を知っていること。

債務者の詐害意思とは、積極的に他の債権者を害する意欲とされています。

一部の債権者に対する弁済について、弁済期が到来している債権を現金で支払う行為は、原則として詐害行為になりませんが、特定の債権者と通謀し、他の債権者を害する意思を持って支払う場合は、例外的に詐害行為になることがあります。

また、商品を売ったのに代金を支払ってもらえない場合、債務者の同意を得た上で商品の引揚げをすることがあります。

この場合、適正に評価して債権額とつりあっていれば詐害行為にはなりません。

自分が売った商品については、動産売買の先取特権がありますので、債務者の責任財産に含まれないとされます。

債務者が不動産を売却することは、たとえ適正な価格で売ったとしても、原則として詐害行為になるとされています。

金銭の形になると、消費されたり、隠されたりして執行しにくくなるため、債権者を害することになるからです。

また、一部の債権者のためだけ財産に担保権を設定する行為は、原則として詐害行為となります。

ただし、経営の建て直しなど、やむを得ない事由による場合は、詐害行為に該当しないこともあります。

身分行為について、相続放棄と離婚における財産分与があり、相続放棄については詐害行為となりませんが、離婚における財産分与については分与した財産が不相当に過大な場合は、例外的に詐害行為になる可能性はあります。

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