取引開始の売買契約書とは・・・
当事者同士の意思の合致があれば、契約は成立するというのが民法の基本原則がありますから、別に契約書があろうとなかろうと、売買契約は成立するわけです。
売買契約が成立すれば、売主は品物を引き渡す義務を負い、買主はその品物の代金支払義務を負う事になります。
法律上は、契約成立の要件として契約書の作成を義務付けているわけではありません。
取引を開始するに当たって、契約書が作成されるのは、取引をめぐってトラブルが発生した場合に備えておくためです。
契約書を作成する場合に大事なことは、取引先が万一契約不履行をした場合のことを考慮に入れて、契約条項を考え、損害のカバーができるようにします。
何度催促しても、一向に債務の支払をしてくれないという場合には、その契約書を証拠として裁判手続をとります。
相手が債務があることを認めていれば簡易裁判所へ支払督促の申立をし、話し合いをしたいのであれば、調停の申立をし、債務について存在の有無などを争っている場合には、訴訟を起こす事になります。
民法415条(債務不履行)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求する事ができる。
債務者の責めに帰すべき事由によって履行をする事ができなくなったときも、同様とする。
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契約書がない時の証拠とは・・・
実際に取引は行われたのに契約書を交わしていなかったために、相手が難癖をつけてきて支払いに応じない場合、どのように契約が成立していたことを証明したらよいでしょうか。
契約書が無い場合でも、契約成立の証拠となる書類は何かあるわけです。
注文書、請け書、受領書、念書、覚書、確認書などは、契約成立の証拠になる場合が多々あります。
注文を受けた際のメモ紙などには、相手の名前、注文の内容、納期などが書かれていれば、それも全く証拠にならないとは限りません。
このような証拠となる書類が無い場合はどうしたらよいでしょうか?
内容証明により請求をして、相手方から返事をもらい、これを証拠にすることもできます。
例えば、100万円の請求なのに、わざと200万円を内容証明で請求したところ、相手方が「100万だ!」と言って来る、などの話もあります。
ただ、これは必ず成功するわけではなく、一例であって、契約をするときは、必ず契約書を作成する習慣を付ける事が最優先であり、次に受領書などの取引関係の書類を保管しておく事が大切です。
知り合いにお金を貸す時も、何も書かないより、メモ用紙などに借用書を書いてもらい署名押印することでも証拠になります。
その他、メールや電話を録音するなで、とにかく証拠を取る事が大切です。
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公正証書を作成することを条件に・・・
債務者が債務の支払いができないために、分割払いなどを認めるような場合に、その分割払いを認める代わりに公正証書にするという条件をつけることは債権回収にとって有効な手段になります。
公正証書は私製証書と違って、公証人が当事者の申し立てに基づいて作成するものですから、証拠力が一段と強いものになります。
公正証書にした契約書は、公証役場に保管されますから、紛失したとしても証明に困る事はありません。
すでに契約書がある場合でも、債務を確定する債務弁済公正証書を作る事ができます。
公正証書が作成される最大の理由は、公正証書の持つ執行力のためです。
債権が回収できなければ、最終的には訴訟を起こして判決をもらい、これに基づいて債務者の財産に対して差押や競売などの強制執行をすることになります。
判決のように強制執行できる文書を「債務名義」といい、判決のほか、調停調書、和解調書、仮執行宣言付の支払督促がありますが、公正証書も債務名義として認められています。
ただ、どんな契約書も公正証書にすれば債務名義の効力が与えられるというわけではなく、一定の金額の金銭の支払いを目的とする請求である事です。
金銭以外にも有価証券や一定の代替物の給付を目的とすることもこれに含まれます。
また、債務者が債務を履行しない場合には強制執行を受けても文句は言いませんという「執行認諾約款」が記載されていなければなりません。
「債務を弁済しないときには直ちに強制執行を受けても異議のないことを認諾する」というような文面が執行認諾約款といいます。
この記載があれば、公正証書に記載された一定額の金銭の支払いについて、強制執行を申し立てる事ができるわけです。
公正証書を作成するにもタイミングがあり、債務者が支払いを待ってくれと頼んできた時や手形のジャンプを頼んできた時などが良いタイミングです。
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