支払督促ができる債権とは・・・

支払督促ができる債権とは・・・

支払督促は、裁判における判決のように、証拠調べや証人調べが行われるわけではありません。

申立人の提出した申立書に記載された内容から判断して、裁判官が一方的に支払督促を発するものです。

ですので、申立人の請求に間違いがあったり、請求が虚偽だという場合には、債務者は異議を申し立てて、一般の訴訟で争う事になります。

そのため、支払督促ができる事項については制限が設けられています。

民事訴訟法では、「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の給付」を目的とする請求権についてだけが支払督促の対象となるとされています。

その他の代替物とは、米や麦といった金銭に代わるもので、その個性が問題とならず、同種のものが存在するもののことです。

有価証券も同様で、その個性が問題にならないことが必要です。

記名式株券や小切手などは、対象とはなりません。

実際には、金銭債権がほとんどになります。

支払督促の申立について、もう一つの要件があります。

それは支払督促が必ず「送達されること」です。

債務者は送達されてきた支払督促を読んで、異議申し立てをするかを決めます。

例えば、債務者が旅行に行っているような送達ができない場合には、支払督促の申立は認められません。

さらに、支払督促は相手方に異議を申し立てられると、一般の訴訟に移行してしまいます。

そのことから、相手の所在がわからない場合、相手が異議を申し立てるような場合など争いのある場合には、支払督促はなじみません。

相手の所在がわからない場合、訴訟では、裁判所の許可を受けて、その書類を裁判所の書記官が預かり、裁判所の掲示板にいつでも名宛人がくれば、書類を交付する旨を掲示し、その後一定期間が経過したときに送達があったものとみなす制度があります。

これを公示送達といいます。

支払督促では、送達後2週間以内に異議を述べることになっていますので、公示送達では異議を述べる機会が失われることとなり、公示送達は認めていません。

ですので、相手の住所や居所がわからない場合には、支払督促はできません。

民事訴訟法382条(支払督促の要件)

金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立により、支払督促を発することができる。

ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達できることができる場合に限る。

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支払督促の申立裁判所とは・・・

一般の民事訴訟では、請求する金額が140万円を超えるときは地方裁判所、140万円以下の場合には簡易裁判所と訴訟物の価額によって決められていますが、支払督促の場合には、請求金額の如何にかかわらず、簡易裁判所と定められています。

これを簡易裁判所の「専属管轄」といいます。

支払督促の申立は簡易裁判所の書記官に対して行います。

また、支払督促を申し立てる場合には、どこの簡易裁判所でも良いというわけではありません。

支払督促を申し立てることのできる簡易裁判所はあらかじめ決められています。

これを「管轄」といいます。

この管轄を間違えると、支払督促は却下され、受け付けてもらえません。

支払督促の管轄は、債務者である支払督促を申し立てる相手方の住所地、法人の場合には主たる事務所の所在地を管轄する簡易裁判所が原則です。

債権回収の訴訟の管轄は、相手の住所地の簡易裁判所や地方裁判所になりますが、例外もあり、次のものとなります。

①債務者が法人の場合には、その債権が支店や営業所の業務により生じたものである場合には、その支店や営業所を管轄する簡易裁判所でもよいとされています。

②手形や小切手による金銭の支払いの場合で、住所地と支払地が異なる場合には、支払地の簡易裁判所でもよいとされています。

③交通事故などの不法行為による損害賠償を請求する場合には、不法行為地である交通事故の発生地を管轄する簡易裁判所でもよいとされています。

④債務の内容が持参債務の場合には、債権者の住所地を管轄する簡易裁判所でもよいとされています。

支払督促の場合は、①と②が例外となります。

ですので、他の管轄裁判所を利用したいときは、訴訟をすることになります。

なお、契約であらかじめ紛争が起きた場合のことを考慮して、管轄裁判所の合意を決めておくことが行われますが、支払督促では認められていません。

ちなみに、支払督促の申立書が受理された際に裁判所が確認する要件は次の要件になります。

①申立の目的が金銭その他の代替物あるいは有価証券の請求かどうか

②申立書に決められた手数料や郵券が納付されているか

③請求の趣旨と請求の原因とで書かれている内容に食い違いがないか

これらに間違いがあると、裁判所は申立人に対して改めるよう指摘します。

これを任意補正といいます。

これをほっておくと、改めて「補正命令」が出され、一定の期限内に補正をしないと、申立は却下されます。

管轄を間違えて申し立てた場合も却下されます。

民事訴訟法383条(支払督促の申立)

一 支払督促の申立は、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判官書記官に対してする。

二 次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立は、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。

1、事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもの

当該事務所又は営業所の所在地

2、手形又は小切手による金銭の支払いの請求及びこれに附帯する請求

手形又は小切手の支払地

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支払督促の費用と時間は・・・

訴訟となりますと、判決が出るまでに半年から2年かかります。

しかし、支払督促では、証人調べも証拠調べもせず、申立書の確認だけで支払督促が出されますから、時間はかかりません。

また、支払督促が出されて2週間を経過すると、仮執行宣言の申立もでき、仮執行宣言が付されると、強制執行できます。

費用については、支払督促の申立手数料は一般の訴訟の半額になります。

その他に、支払督促を相手方に送るための送達費用として相手方1人の場合1,200円分の郵便切手、連絡用として官製はがき1枚が必要です。

これは東京簡易裁判所の場合で、各裁判所により異なります。

なお、債務者が異議申し立てをして、一般の訴訟へ移行する場合には、すでに支払督促申立手数料として納めた金額は、訴訟費用として充当されます。

ちなみに訴訟と支払督促の違いについて、支払督促は債権者側の言い分を記載した申立書により、債務者の言い分は聞かずに支払督促が発令されます。

これに対して、訴訟は原告、被告双方の主張を聞いて、裁判官が判決を下します。

支払督促は、申し立てた内容に間違いがあれば、債務者から異議申し立てができ、この異議が出されると訴訟に移行します。

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