養子離縁の効果・・・
離縁の調停が成立しますと、次のような効果が生じます。
①養子縁組によって生じた法定の嫡出関係は離縁によって消滅します。
養子が未成年者の場合には、養親の親権が消滅して実父母の親権が復活します。
②離縁によって養子及び配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と、養親及びその血族との親族関係は、全て終了します。
民法第729条
養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
③養子、その配偶者、直系卑属又はその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、離縁によって親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができません。
民法第736条
養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
④養子が養方の祭祀財産を承継する者を定めなければなりません。
その協議が不調又は不能なときには、家庭裁判所の調停又は審判で定めることになっています。
民法第817条
第769条の規定は、離縁について準用する。
民法第769条
1.婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
⑤養子は離縁によって縁組前の氏に復します。
ただし、夫婦共同で養親となる縁組をした後に、養子がその一方の養親とだけ離縁した場合は、他方の養親との縁組は継続していますから、養子は縁組前の氏に復しません。
民法第816条
1.養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2.縁組の日から7年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
また、養子が縁組の日から7年を経過した後に離縁によって縁組前の氏に復したときは、離縁の日から3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を証する事ができます。
戸籍法第73条
1.第63条の規定は、離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2.第75条第2項の規定は、検察官が離縁の裁判を請求した場合に準用する。
戸籍法第75条
1.第63条の規定は、婚姻取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2.検察官が訴を提起した場合には、裁判が確定した後に、遅滞なく戸籍記載の請求をしなければならない。
戸籍法第63条
1.認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2.訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
養子の子の氏は離縁によって当然には変わりません。
この場合に養子の子が父母の氏を称したいときも民法791条の規定により父母の氏を称することができます。
民法第791条
1.子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2.父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3.子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前2項の行為をすることができる。
4.前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
養子の財産分与請求が棄却された事例があります。
スポンサードリンク
養子離縁調停後の戸籍届出・・・
養子離縁の調停が成立したときは、申立人・相手方は、調停成立の日から10日以内に、調停調書の謄本を添付して養子離縁届をしなければなりません。
戸籍法第73条
1.第63条の規定は、離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2.第75条第2項の規定は、検察官が離縁の裁判を請求した場合に準用する。
戸籍法第63条
1.認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2.訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
離縁の届出があった場合の処理は、通常、養子は離縁によって縁組前の氏に復しますから、縁組前の戸籍に入ります。
ただし、その戸籍が既に除かれているとき、又は養子が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍が編製されます。
戸籍法第19条
1.婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。
2.前項の規定は、民法第751条第1項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第791条第4項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。
3.民法第767条第2項(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)又は同法第816条第2項(同法第808条第2項において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組の取消しの際に称していた氏を称する旨の届出があつた場合において、その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る若が他にあるときは、その届出をした者について新戸籍を編製する。
この戸籍に入るべき養子に配偶者があるときは、その夫婦について新戸籍が編製されます。
戸籍法第20条
前2条の規定によつて他の戸籍に入るべき者に配偶者があるときは、前2条の規定にかかわらず、その夫婦について新戸籍を編製する。
養親の氏を称していない者が引き続いて現在の氏を称し縁組前の氏を称することを望まない場合、民法816条2項の規定に該当するときは、離縁の際に称していた氏を証する届出をします。
民法第816条
1. 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2. 縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
養子が離縁によって復氏しない場合には、戸籍の変動はありません。
離縁に関する事項は、離縁当事者双方の縁組継続中の戸籍の身分事項欄及び養子の縁組後の戸籍の身分事項欄に記載されます。
戸籍法第13条
戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
1.氏名
2.出生の年月日
3.戸籍に入つた原因及び年月日
4.実父母の氏名及び実父母との続柄
5.養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
6.夫婦については、夫又は妻である旨
7.他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示
8.その他法務省令で定める事項
縁氏続称の届出があった場合において、その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編成されていないとき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に他の者が同席しているときは、続称の届出をした者について新戸籍を編製します。
スポンサードリンク
死後離縁の許可審判・・・
縁組の当事者が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、離縁することができます。
民法第811条
1. 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2. 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3. 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
5. 第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6. 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
死後離縁の目的は、縁組当事者間の法定親族関係を消滅させることにあります。
死後離縁は生存する縁組当事者が家庭裁判所の許可を得て、離縁届けをします。
養子が15歳未満の場合、養子に代わって、死後離縁の許可申立及び離縁届出をする者は現在の法定代理人か、将来の法定代理人かについて見解が分かれています。
戸籍先例は、養子に代わって、許可申立及び戸籍届出をする者は現在の法定代理人であると解しています。
家庭裁判所の実務では、将来の法定代理人としています。
15歳未満の養子が死亡養親と離縁する場合には、民法811条2項を類推し、離縁後に法定代理人となるべき者が養子を代理できると解すべきところ、本件養子には実父母が健在で法定代理人となるべき者がいるから後見人を選任する必要がないだけでなく、離縁だけの目的のために後見人を選任することは後見制度の目的、趣旨に反し許されないとして後見人選任申立を却下した事例があります。
折衷説として、養子が死亡養親、生存養親と同時に離縁する場合は、実親が死亡養親との離縁につき家庭裁判所の許可を得た上で、生存養親とともに離縁届出をすることができ、実父母の申立による許可審判であっても、養子の正当な法定代理人である未成年後見人からの届出は受理され、未成年後見人が選任されていない場合は、養子の実父母からの離縁届出は受理される取扱がされています。
スポンサードリンク
死後離縁の許可審判申立手続・・・
①申立権者
縁組の生存当事者です。
②管轄
申立人の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
養親、養子、法定代理人の戸籍謄本
④審判手続
養親又は養子の死亡に伴う生存当事者の相続、祭祀承継の実情、養親族の中に要扶養者がないかなどが調査されます。
これは、死後離縁を家庭裁判所の許可にしたのは、養親子間ないし養親族間の道義に反するような生存当事者の恣意的離縁を防止することにあるからです。
しかし、生存配偶者には無条件で姻族関係の終了が認められているのですから、これと性質を同じくする死後離縁についても養親族関係の維持が困難であると認められるときは、離縁は許可されるべきだとされています。
家庭裁判所は申立を相当と認めるときは死後離縁を許可する審判をして、申立人に告知します。
利害関係人は死後離縁を許可する審判に対し、即時抗告をすることができます。
家庭裁判所は申立を相当でないと認めるときは死後離縁許可申立を却下する審判をして、申立人に告知します。
申立人は申立を却下する審判に対し、即時抗告をすることができます。
申立人は、死後離縁を許可する審判が確定した場合、離縁の届出をします。
離縁届の受理により、離縁の効力を生じ、生存当事者と死亡当事者の親族間の法定血族関係は消滅します。
離縁届出書には許可審判書謄本と審判確定証明書を添付します。
スポンサードリンク