死因贈与と限定承認・・・

死因贈与と限定承認・・・

死因贈与を原因とする所有権移転仮登記後、被相続人死亡により相続人が限定承認をし、受贈者が仮登記の本登記をした場合、死因贈与には遺贈の規定が準用されている上、死因贈与と遺贈とを別に考えるべき合理的理由はないから相続人が死因贈与を受けた財産は相続によって得た財産に含まれ、死因贈与者は相続債権者に弁済がされた後でなければ受贈を得られないとした事例があります。

民法第554条

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

民法第922条

相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができません。

相続人が限定承認をしても相続債権者は相続人が死因贈与を受けた不動産に対して「被相続人の相続財産の限定内において」強制執行ができる旨の執行文によって強制執行をすることができます。

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死因贈与の撤回・・・

死因贈与の撤回に、遺言の撤回に関する規定が準用されるかどうかについて、判例では、特段の事情がない限り民法1022条、1023条は準用されないとしながらも、準用の余地があることを認めています。

民法第1022条

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

民法第1023条

1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

死因贈与契約後、贈与者がその目的不動産を他の相続人に遺贈している場合、受贈者には死因贈与には法定撤回の規定はないことなどを理由として遺言無効確認請求をし、それが認められた事例があります。

贈与者は、裁判上の和解で成立した死因贈与を遺言の撤回に関する規定により撤回することができません。

この場合、贈与者は撤回することができない死因贈与の対象不動産を第三者に対して売却できないとか、又はこれを売り渡しても当然に無効であるとはいえず、この受贈者と買主との関係は二重譲渡の場合における対抗問題によって解決されます。

贈与者Aと受贈者Bが死因贈与契約後、AがCに交付した「Cに全財産を相続させる」と記載した書面は、Aが死因贈与などの意思をもって作成したかどうか疑わしいとしてAB間の死因贈与の撤回を否定した事例があります。

不動産の死因贈与がされ、売買予約による所有権移転請求保全の仮登記後、贈与者が同不動産に抵当権を設定し、この仮登記を受贈者に無断で抹消登記をした場合、死因贈与は民法1023条2項により贈与者の行為と抵触する範囲において撤回されたものとみなされますが、抵当権付の不動産の死因贈与として有効であり、また、受贈者は贈与者の相続人に対して、この仮登記の回復登記手続きを請求することができます。

後にされた遺贈遺言により死因贈与の法定撤回が認められないときは、死因贈与と遺贈遺言が併存することになりますが、この関係については、被相続人が、生前、不動産をある相続人に贈与するとともに、他の相続人にもこれを遺贈したのち、相続が開始した場合は、この贈与及び遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもって決するとされています。

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書面によらない死因贈与の撤回・・・

書面によらない贈与の撤回に関する民法550条について、贈与者が受贈者の面前で、死んだら同人に全財産をやる旨を表明し、受贈者もこれに異をとなえなかったので、両者の間に死因贈与契約が成立したことは認められるが、この死因贈与に触れた書面として弁護士作成のメモ及び同人が贈与者死亡後に作成した陳述書が存在しても、これは贈与者の関与ないし了解のもとに作成されたものと認められないから、これをもって書面による死因贈与による死因贈与ということはできず、贈与者の相続人は、贈与者の死後、書面によらない死因贈与としてこれを撤回することができるとした事例があります。

民法第550条

書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

受贈者が負担付贈与契約の約定に基づき、家族ともども従前居住していた住居を引き払い、本件建物に転居し、贈与者死亡の時点でも本件建物に居住していた場合、贈与者死亡により本件死因贈与の効力が生じ、受贈者がその所有権を取得した時点で本件建物の引渡があったというべきであり、本件死因贈与の履行はすでに終了しているとした事例があります。

死因贈与者は書面によらない死因贈与の撤回権を有しますが、この撤回権は一身専属権ではないために相続財産の管理人はこれを承継し、管理人は家庭裁判所の許可を得て被相続人の書面によらない死因贈与を撤回することができます。

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死因贈与の無効・・・

死因贈与についても、贈与者が受贈者との不倫関係を継続するためにされたものである場合、その死因贈与は目的において公序良俗に反し無効のものとされます。

妻のある男と同棲中の女がその男に対してした土地建物の死因贈与が公序良俗に反し無効であるとして所有権移転登記請求を認めなかった事例があります。

贈与者と受贈者の父と愛人関係の維持をその母に承諾あるいは黙認してもらうために土地建物の死因贈与がされたものであり、受贈者もその目的を了知してたものであり公序良俗に反しこれを無効とした事例があります。

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