第三者が無償で子に与えた財産を親権者に管理させる意思表示・・・
第三者が、無償で未成年の子に財産を与えた場合、その財産は親権者が管理し、その財産に関する法律行為も親権者が子を代表します。
未成年の子の財産は親権者が管理し、子が成年に達したとき、親権を行った者は、管理財産を引き渡します。
この場合、親権を行った者は、遅滞なく、子の財産につき管理の計算をしなければならず、金銭についてはこの計算の結果に基づき、子の財産の引渡しをします。
子の財産から生じた収益は、子の養育費及び財産の管理費用と相殺したものとみなされます。
本来、子の財産から生じた収益は子に帰属し、子の養育費及び子の財産の管理費用は子の負担となりますが、親権者は子に対して養育費及び財産の管理費用を請求できず、子は親権者に対して財産から生じた収益の返還を請求できないことになります。
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選定管理者の権限・・・
第三者が未成年者に対する贈与又は遺贈をする場合、親権者である父母双方に財産の管理をさせない意思を表示し、第三者自ら財産の管理者を指定しないとき、家庭裁判所によって選定された財産管理者である選定管理者は、原則として民法103条に定める管理行為である保存行為、利用行為又は改良行為をすることができます。
民法103条
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
民法103条に定める権限を越える行為は処分行為であり、これを権限外行為といいます。
処分行為には、財産権の設定、移転、変更、消滅をもたらす法律行為及び財産の毀損、性質を変える事実行為があります。
選定管理者が民法103条に定める権限を越える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得てしなければなりません。
選定管理者の権限外行為許可の申立は、甲類審判事項です。
①申立権者
選定管理者。
②管轄
管理者を選定した家庭裁判所。
③添付書類
申立人・事件本人の戸籍謄本。
不動産登記簿謄本。
権限外行為となる契約書等の案。
権限外行為の必要性を証する資料。
④家庭裁判所の審理
権限外行為の必要性が審理され、申立が相当と認められたときは、権限外行為を許可する審判がされます。
この審判は、選定管理者に告知されて効力を生じます。
申立が不相当であると認められたときは、却下の審判がなされ、この審判は選定管理者に告知されて効力を生じます。
認容又は却下の審判には不服申立は認められません。
選定管理者に対する授権の内容は審判書に記載されていますので、管理者はその謄本の交付を受けて、これをその証明書とします。
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選定管理者の報酬付与・・・
第三者が未成年者に対する贈与又は遺贈をする場合、親権者である父母双方に財産の管理をさせない意思を表示し、第三者自ら財産の管理者を指定しないとき、家庭裁判所によって選定された財産管理者である選定管理者は、家庭裁判所の定めるところにより、未成年者の財産の中から相当の報酬を受けることができます。
選定管理者に対する報酬の付与の申立は、甲類審判事項です。
①申立権者
選定管理者。
②管轄
管理者を選定した家庭裁判所。
③添付書類
管理報告書、財産目録。
報酬額の決定に当たっては、次の事情を考慮されますので、これらの事情を証する資料があれば、これも提出します。
・管理財産の種類、多寡
・管理期間
・管理状況
・管理の難易度
・管理上の労務の程度
・管理者の職業
・未成年者との間柄
④家庭裁判所の審理
申立が相当と認められるときは報酬付与の審判がなされ、この審判は選定管理者に告知されて効力を生じ、選定管理者の報酬請求権が形成されます。
申立が不相応であると認められるときは、申立却下の審判がされて効力を生じます。
認容又は却下の審判に対する不服申立は認められていません。
⑤報酬支払の方法
管理財産に現金・預金がある場合、選定管理者はその中から報酬分を控除して取得する方法がとられています。
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動産の贈与・・・
動産の贈与は、贈与契約と同時に贈与物件を引き渡してしまう現実贈与の場合が多いのですが、贈与は諾成契約ですから贈与物件の引渡しを後日にすることもできます。
しかし、引渡が後日になる場合には、贈与を撤回できないものにするために書面にしておく必要があります。
その場合の書面について、判例では、「贈与の書面には、贈与者が自己の財産を相手方に与える慎重な意思を文書を通じて確実に看取しうる程度の表現があれば足りる」としたもの、「贈与が書面によってされたというためにには、贈与の意思表示自体が書面によってなされたこと、又は書面が贈与の直接当事者間において作成され、これに贈与その他の類似の文言が記載されていることは、必ずしも必要ではなく、当事者の関与又は了解の下に作成された書面において贈与のあったことを確実に看取し得る程度の記載があれば足りる」としたものなどがあります。
また、後日に書面を作成すれば、その時から書面による贈与となります。
動産の贈与という法律行為が有効であるためには、行為者が正常な判断能力を備えていることを要します。
贈与契約当時、自己の行為結果を弁識するに足りるだけの精神能力を具備しておらず、意思能力を欠いていたとして、金銭の贈与契約が無効とされた事例があります。
書面によらない贈与は、各当事者がこれを撤回する事ができます。
しかし、履行が終わった部分については、撤回することができません。
動産の贈与について、履行が終わったとされるのは、原則として、贈与物件の引渡が完了したときです。
引渡しは現実の引渡しに限らず、簡易の引渡し、占有の改定、指図による占有の移転でもよいとされています。
民法第182条(簡易の引渡し)
1. 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2. 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
民法第183条(占有の改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
民法第184条(指図による占有の移転)
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
贈与者は、目的物件である動産を移転する義務を負っていますが、担保責任を負わないことを原則とします。
しかし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら、その旨を受贈者に告げなかったときは、例外として担保責任を負うことになります。
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