祭祀承継者の指定調停・・・

祭祀承継者の指定調停・・・

民法897条2項に基づく祭祀財産の承継者の指定の申立は、乙類6号事項です。

民法第897条 

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

①申立権者

共同相続人及び祭祀財産の権利承継につき法律上の利害関係をもつ親族又はこれに準ずる者です。

墓の承継者が決定されないため、被相続人を埋葬できず、祖先の祭祀執行上重大な支障を生じている場合、この障害を除去するための祭祀承継者指定の申立は、申立権の乱用とされるべきものでないとした事例があります。

②管轄

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

③添付書類

申立人・相手方の戸籍謄本

住民票

被相続人の戸籍謄本・改製原戸籍謄本

祭祀財産の目録

墓地の登記簿謄本

④調停手続

調停委員会は、当事者の主張を聴くとともに、職権で必要な事実の調査及び証拠調べなどを行ないます。

その結果、当事者間に祭祀財産の承継者の指定の合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は確定した審判と同一の効力を有します。

調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認められるとき、又は当事者が不当目的で調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないことができます。

調停をしない措置に対して、不服申立を許す規定はないので、即時抗告は認められません。

調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。

調停不成立として事件を終了させる処分は審判ではないので、これに対して即時抗告又は非訟事件手続法による抗告をすることができません。

また、裁判所書記官が家事審判規則141条に基づき当事者に対して行なう通知も調停手続における審判に該当しないので、同様に解されます。

家事審判規則第百四十一条 

第百三十八条又は第百三十八条の二の規定により事件が終了したとき、又は法第二十五条第二項の規定により審判が効力を失つたときは、裁判所書記官は、当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

祭祀承継者の指定事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に審判の申立があったものとみなされます。

調停不成立の場合には、調停申立人が、改めて審判の申立をするまでもなく、事件は当然に審判手続きに移行します。

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祭祀承継者の指定審判・・・

祭祀財産の承継者を指定するに当たっては、承継者と被相続人との身分関係のほか、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見等諸般の事情を総合して判断されます。

家庭裁判所は、申立人が指定を希望している者以外の者を承継者として指定することができます。

被相続人名義の市営墓地使用権について、市が相続人の1人に名義変更した場合でも、裁判所により、これと別の相続人が祭祀財産承継者と定められたときは、その者が墓地使用権の承継者として、改めて名義書換を受けることができるとした事例があります。

祭祀承継者は、紛争の実情にかんがみ、生前の被相続人との生活関係、同人に対する親近感及び敬意の念、既に埋葬されている者及び埋葬予定の者との親族関係、祖先の祭祀主宰の意思と能力、関係者の意見を総合して考察し、被相続人の四男を指定した事例があります。

被相続人所有の祭具、墳墓及び墓地を事実上管理、供養している親族関係のない被相続人の夫の孫を祭祀財産の承継者に指定した事例があります。

審判に対しては、当事者、利害関係人はその告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます。

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祭祀主宰者の地位・・・

祭祀主宰者は姻族関係終了の意思表示をしても、当然にその地位を喪失しないとされます。

訴訟において祭祀主宰者の地位を主張するができます。

祭祀承継者に指定された者は、祭祀を営むべき法律上の義務を負わないから、祭祀を行なうことを強制する事はできず、他の共同相続人も祭祀主宰者に対して協力するべき法律上の義務はないとされます。

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祭祀用不動産の登記手続・・・

遺産分割協議によって、相続人を墳墓地の承継者に指定する合意がされた場合は、墳墓地につき相続を登記原因とする所有権移転登記申請は受理される取扱がされています。

この場合は、遺産分割協議書が相続を証する書面となります。

調停の成立によって祭祀承継者又は祭祀主宰者に指定された者は、被相続人の死亡時に遡って当然に祭祀財産の所有権、用益権を承継取得します。

これに伴う登記手続きについては、遺産分割協議成立の場合に準じます。

家庭裁判所が権利の承継者を指定した場合は、所有権移転登記の申請書には審判書を添付します。

第三者が墳墓地の権利の承継者に指定された場合、この所有権移転登記の申請は承継者が単独ですることができるという見解があります。

登記実務では、登記原因を「**年**月**日(被相続人の死亡の日)祭祀物承継」として、遺贈の場合に準じて、承継者が登記権利者となり、相続人を登記義務者とする共同申請により所有権移転の登記を申請するとされています。

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