共有解消の裁判手続・・・
物権法上の共有の場合は、民法256条1項本文の規定により、裁判所に共有物の分割請求をします。
(共有物の分割請求)
民法第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。
共同相続人が遺産分割の協議により、遺産を共有取得した場合は、物権法上の共有関係になりますから、共有の解消は共有物の分割手続によることになります。
共同相続人の1人に対する全遺産の包括遺贈は、当該遺産を構成する個々の財産についての特定遺贈の集合体にほかならないから、これに対し、遺留分減殺請求権が行使された場合、包括遺贈の対象たる個々の財産は、受遺者と遺留分減殺請求権を行使した共同相続人との物権法上の共有に属し、右共有関係の解消は共有物分割の方法によるべきであり、右分割においても共有者である共同相続人の寄与分を考慮する余地はないとされています。
相続人が数人ある相続の場合、相続財産は、その共有に属します。
(共同相続の効力)
民法第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
相続により共有になった財産について、共同相続人間に遺産の分割の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、遺産の分割の審判を求めるべきであって、共有物分割の訴えを提起することはできません。
第一次相続の遺産分割により特定不動産を共有で取得した場合、共有物分割の訴えにより、この共有を解消しますが、共有のままの状態で第二次相続が開始した場合、相続により承継した持分権は暫定的な共有状態に過ぎないので、この持分権については共有分割の訴えにより分割を求めることはできないとした事例があります。
同一相続人につき、第一次相続と第二次相続がある場合、遺産分割調停が成立したのは第二次相続の遺産と第一次相続の一部遺産であり、第一次相続の残余遺産は遺産分割未了であるとして、この共有物分割請求を不適法とした事例があります。
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共有持分権の第三者への譲渡・・・
共同相続人の1人から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者は適法にその権利を取得することができ、右不動産を他の共同相続人と共同所有する関係は、民法の共有としての性質を有し、右第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟であるとされています。
(遺産の分割の協議又は審判等)
民法第907条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
(裁判による共有物の分割)
民法第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
共同相続人が譲受人である第三者及び他の共同相続人を被告とする特定不動産の共有物分割訴訟についても、共有物分割訴訟確定後に相続人は遺産分割審判により終局的に相続による共有関係の解消が得られると解した事例があります。
同様の事案で共有物分割訴訟は、第三者が共同所有関係の解消を求める場合の方法と解して、共同相続人による他の共同相続人及び第三者を被告とする共有物分割の訴えを却下した事例があります。
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競売による遺産の分割・・・
現物分割が不可能の場合、又は現物分割によって著しく価格を存するおそれがあるときは、裁判所は、共有物を競売に付し、その売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができます。
(裁判による共有物の分割)
民法第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
「現物分割が不可能の場合」とは、現物分割が物理的に不可能な場合にのみを指すのではなく、社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合も含みます。
本件土地を任意売却し、経費を差し引いた残金を持分割合で配分する旨裁判上の和解が成立していても、任意売却の期間、任意売却できない場合の措置について何らの合意もなく、和解後3年半経過した現在も任意売却できる見込がない状態にあるから、分割協議が調わないとして共有物分割を裁判所に請求し、競売を求めることができるとした事例があります。
接道義務を充たす土地としての分割が不可能として競売による分割を命じた事例があります。
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共有物不分割の合意・・・
各共有者は5年を超えない期間内分割しない旨の契約をすることができます。
(共有物の分割請求)
民法第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。
共有物不分割の合意は、登記をすることによって共有者の特定承継人に対抗することができます。
(共有物分割禁止の定めの登記)
不動産登記法第六十五条 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。
遺産分割の際、遺産を共有取得した共同相続人が共有物不分割の合意をした場合、この合意を相続による所有権移転登記申請書に記載して登記の申請をすることはできません。
この場合は、相続登記申請とは別個に契約当事者全員による変更登記を申請します。
(権利に関する登記の登記事項)
不動産登記法第五十九条 権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
一 登記の目的
二 申請の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
五 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法 (明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項 ただし書(同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条 の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同法第九百七条第三項 の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め
七 民法第四百二十三条 その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請した者(以下「代位者」という。)があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
八 第二号に掲げるもののほか、権利の順位を明らかにするために必要な事項として法務省令で定めるもの
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