相続財産の調査・・・

相続財産の調査・・・

相続財産の調査は、相続人が各自で行なうものと考えられています。

民法第915条

1 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

相続人が調査しても遺産であることの客観的資料が得られないまま、これを遺産として、家庭裁判所へ遺産分割の申立がされます。

挙証責任については、家事審判の手続でも、資料が無ければその者の不利益に帰するという裁判の基本的原理は妥当するといわれています。

ただ、実務においては、家庭裁判所は、銀行、信託会社などに対し、被相続人の預金等に関して必要な報告を求めることができることになっているので、相当程度、職権探知の努力が尽くされています。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますから、所有権等の物権、預貯金等の債権、特許権等の無体財産権、遺留分減殺請求権等の形成権その他の財産上の権利義務が相続の対象になります。

民法第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

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相続財産(占有権)・・・

被相続人の事実支配の中にあった物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであり、その結果として占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のない限り従前その占有に属したものは当然その相続人の占有に移ると解すべきであり、土地を占有していた被相続人が死亡し、相続が開始した場合、被相続人の土地に対する占有は相続人に相続されます。

時効の完成によって利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができると解すべきであり、被相続人の占有によって取得時効が完成した場合において、その共同相続人の1人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができ、占有者である被相続人の法定相続人の間で本件不動産の全部を被上告人が取得する旨の遺産分割協議が成立したなどの事情があれば格別、そのような事情のない限り、被上告人は被相続人の占有によって完成した取得時効の援用によって本件不動産の全部の所有権を取得することはできないというべきであるとして、原判決を破棄して差し戻した事例があります。

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相続財産(不動産の無効な贈与)・・・

A所有の不動産につき、甲が不法にAから甲へ贈与による所有権移転登記をした後、Aが死亡し、甲、乙、丙がAを共同相続した場合、所有権移転登記の抹消により第三取得者の正当に取得した権利を喪失させる事実の認められない限り、乙は共同相続による共有持分権に基づき甲に対して所有権移転登記全部の抹消登記請求権を有し、この場合の所有権移転登記は、登記原因たる法律行為が全面的に不存在・無効であるのみならず、相続開始前にされた登記であるから一部抹消登記をすることができないとした事例があります。

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相続財産(不動産の名義更正登記請求)・・・

甲乙が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、更に第三取得者丙が乙から移転登記を受けた場合、甲は丙に対して自己の持分を登記なくして対抗できますが、甲が乙丙に対して請求できるのは、甲の持分についてのみの一部更正登記手続であり、各登記の全部抹消を求めることは許されません。

共同相続した不動産につき、共同相続人が単独所有権保存登記をした場合も同様であり、登記の抹消登記手続きを求める申立には、更正登記手続を求める申立をみ含むとされます。

各共同相続人は独立して相続による共有持分権を行使することができ、持分権の存否を争う共有者に対してのみその存否を確定すれば足りるから、共有者全員につき、合一に確定する必要はないとした事例があります。

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