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死因贈与と詐害行為・・・
親が無断で自己所有建物を死因贈与した行為は無効であるが、債権者の債権者取消権に基づく死因贈与を原因とする所有権移転仮登記の抹消登記請求訴訟において受贈者が死因贈与契約を追認した場合、受贈者は訴状を読んだときに死因贈与契約が債権者を害することを知っていたと解し、債権者の請求を認容したとする事例があります。
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遺贈から死因贈与への転換・・・
遺贈又は遺言が方式に欠けるため無効であっても、その遺贈が事案によっては、死因贈与として有効とされることがあります。
民法第971条
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
無効行為の転換の場合です。
遺贈から死因贈与へ転換を認めた判例には次のような場合があります。
①自筆証書遺言に日付がなかった事例
押印がなかった事例
日付がなかった事例
②公正証書遺言に証人の立会いがなかった事例
③死亡危急時遺言で証人に遺贈した事例
遺贈から死因贈与への転換を認めなかった判例として、次のものがあります。
他人が代筆した遺言
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贈与者生存中の死因贈与契約無効確認の訴え・・・
遺言無効確認請求の訴えは、遺言者の生存中は許されないとされています。
これに対し、死因贈与には仮登記が認められていますから、その抹消のために、贈与者の生存中から、死因贈与契約無効確認の訴えは許されるとする見解があります。
また、遺言無効確認請求の訴えについても、その後、遺言者が老人痴呆で、その回復の見込がなく、遺言を取り消し変更する可能性のないことが明白な場合には、遺言者が生存中であっても、例外的に遺言無効の訴えは許されるとする判例があります。
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死因贈与の減殺・・・
死因贈与の価額が、他の相続人の遺留分の額を超えるときは、遺贈と同じく減殺されます。
死因贈与に基づく所有権移転登記請求訴訟において、相続人が遺留分減殺の抗弁に対して受贈者が再抗弁として価額弁償を選択したうえ一定の評価額をもって弁償する旨主張されている場合、弁償額又はその提供を条件として請求を認容すべきであるとされています。
相続税法は、死因贈与を遺贈と同視して相続税の対象としています。
相続税法第1条の3
次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
1.相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
2.相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が当該相続又は遺贈に係る相続の開始前5年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)
3.相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(前号に掲げる者を除く。)
4.贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前3号に掲げる者を除く。)
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死因贈与執行者の選任・・・
死因贈与について、遺贈に関する規定に従って、執行者がないとき、又はなくなったとき、家庭裁判所は、利害関係人の申立により、執行者を選任することができると解されています。
民法第1010条
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
死因贈与者の相続人は、第1次的に死因贈与の履行義務を負います。
その履行義務は相続人全員です。
相続人が多数のときは全員を相手として裁判を起こすことになります。
しかし、死因贈与について執行者が選任されていれば、執行者は相続人の代理人とみなされますから、受贈者は、執行者だけを相手方として裁判を起こせば足りることになります。
民法第1015条
遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
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死因贈与の遺贈の規定の準用・・・
死因贈与は遺贈に関する規定に従うとありますが、その内容の実現について遺贈にどこまで準用されるのでしょうか。
民法第554条
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
①遺言能力に関する規定
民法第961条
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
民法第962条
第5条、第9条、第13条 及び第17条 の規定は、遺言については、適用しない。
死因贈与には通常の行為能力が求められていますから、遺言能力に関する規定は準用されません。
②遺言の方式に関する規定
民法第967条
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
死因贈与に関する方式は、原則として生前贈与の原則に従いますから、遺言の方式に関する規定は準用されません。
③遺言の効力に関する規定
民法第985条
1. 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2. 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
死因贈与に準用されるのは、主として遺言の効力に関する規定であるとされています。
しかし、遺贈の承認・放棄に関する規定は準用されません。
民法第986条
1. 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2. 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる
民法第987条
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。
民法第988条
受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
民法第989条
1. 遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2. 第919条第2項及び第3項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。
④遺言の失効に関する規定
民法第1004条
1. 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2. 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3. 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
民法第1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
遺言書の検認・開封に関する規定は、その性質上準用されません。
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