特別縁故者の相当期間経過後の申立・・・

特別縁故者の相当期間経過後の申立・・・

申立人は六親等の親族であり、その祖父は被相続人の療養看護に務め、申立人は現に被相続人の祭祀を主宰し、遺産を管理していること、その他の事情を総合すると申立人を特別縁故者とみて差し支えないと考えられるが、相続開始後50余年を経過していることは相当期間内の申立ではないとして、申立を却下した事例があります。

また、相続開始後40年以上経過後にされた被相続人の内縁の夫の孫による申立につき、被相続人との同居を民法958条の3にいう「被相続人と生計を同じくしていた」といえない一時期にすぎないこと、「被相続人の療養看護」に務めたこともないこと、また、同条の3の縁故とは被相続人の生前における縁故をいくから申立人が被相続人のために祭祀を怠らず、申立人の墓地に被相続人の石碑を建立した行為は被相続人の存命中における縁故関係の存在ないし濃度を推認させる資料にとどまるとして、結局被相続人の生前における縁故関係が特別のものであったとは言い切れないとして、申立を却下した事例があります。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

相続開始25年後の場合につき、相続開始23年後の場合につき、40年近く経過後の場合につき、認容例もあります。

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特別縁故者の遺言無効確認の訴え・・・

被相続人には法定相続人がなくABに全遺産を遺贈する遺言を残して死亡した場合、特別縁故者に当たると主張する甲乙がABを被告として遺言無効確認の訴えを提起することの可否につき、最高裁は、甲乙が特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性があるとしても、特別縁故者として相続財産の分与を受ける権利は、家庭裁判所における審判によって形成される権利にすぎず、甲乙は右審判前に相続財産に対し私法上の権利を有するものではなく、遺言の無効確認を求める法律上の利益を有しないとして甲乙の請求を認めた第一審判決を取り消して、その訴えを却下しました。

「特別縁故者」たることを前提にして遺言無効確認請求をする場合、特別縁故者として財産分与を受ける可能性も存しない者は当事者適格を欠くとした事例があります。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

特別縁故者であることが明らかな原告は包括受遺者であることを主張する者に対して、包括遺贈が無効であること及びその他の相続人が明らかでないことを理由に相続財産が法人に属することの確認を求めることができるとした事例があります。

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特別縁故者の分与の対象財産 ・・・

遺産のうち、共有持分については、分与の対象となるか、否か、裁判例は分かれていましたが、相続人不存在が確定し、清算手続きが終了したとき民法255条により他の共有者に帰属する前に、相続財産分与の対象となることが最高裁によって認められました。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

特別縁故者の不存在が確定したことによる他の共有者に対する持分移転の登記について、登記の実務は、不動産共有者1人が相続人なくして死亡した場合、

①民法255条により他の共有者へ権利が帰属する時期を民法958条の3第2項の期間内に特別縁故者の財産分与申立がなかったときは申立期間満了日の翌日、また、特別縁故者の財産分与申立を却下する審判が確定したときは申立却下審判確定日に翌日、

②登記原因は、「特別縁故者不存在確定」、

③登記原因の日付は、被相続人の死亡の日から13月の経過後の日であることを要する、

とする取り扱いをしています。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

元来被相続人が他の者と共有関係にあった場合の事案ですが、被相続人が単独所有不動産の持分を遺贈したことにより共有関係を生ずる場合があります。

この点については、民法255条は、元々共有関係にあった者が持分権を放棄ないし相続人なくして死亡した場合が前提になっていると解すべきであり、本件では遺贈により共有関係に立つに至ったもので、直ちに同条後段に当たる場合でないと解されること、本件の場合も同条後段が適用されると解すると、持分を限って遺贈した遺言者の意図を踏みにじる結果を引き起こしかねない点を考慮すると特別縁故者としての分与を求めるのは格別、民法255条後段の適用はないと解した事例があります。

記名式国庫債券が分与された場合には、名義変更に応じて差し支えないとされています。

賃借権の分与は、解約事由と解されるので、貸主の承諾の得られる見通しの付く場合にのみされるのが妥当であると解されています。

分与の対象は当該審判に表示されたものと限るべきは当然であり、分与された土地が賃貸中で賃料債権が相続財産を構成している場合においても、当然にその債権が土地の被分与者に帰属するものとは解されないとした事例があります。

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特別縁故者の相続財産分与の審判・・・

民法958条の3第1項に基づく特別縁故者に対する相続財産の分与の申立は、甲類審判事項です。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

①申立権者

特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に務めた者その他被相続人と特別の縁故があった者)です。

特別縁故者とされるかの判断は、裁判所の裁量に委ねられます。

②申立期間

相続人捜索の公告期間の満了後3ヶ月以内です。

申立人が複数の場合、申立の適法要件は各申立人ごとに個別に審査すべきであって、一部の申立人の申立は不適法であるとして、抗告人らの本件申立を却下した原審判は相当であるとして抗告を棄却した事例があります。

相続人である事の申出をした者の相続権の存否が争われ、その法律関係が未確定の間は、相続権主張の催告期間が満了しても特別縁故者であると主張する者の相続財産分与の申立期間は進行せず、相続権の不存在が確定した後に申立期間は進行すると解した事例があります。

③管轄

相続開始地の家庭裁判所です。

④添付書類

申立人・被相続人の戸籍謄本

申立人の住民票

不動産登記簿謄本

被相続人との特別縁故関係の存在を疎明する資料など

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