領収書の受領権者の権限・・・
受領権限のない者への弁済は、原則として無効となってしまいますので、受領権者が誰なのか、その者に受領権限があるかということは重要なことです。
ですので、受領権限のある者が発行した領収書を受け取るようにするべきです。
(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
会社法第14条 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
部長、課長などにはその分野の事業に関する事項について代理権が認められますので、受領権限を持っていることになります。
代理権を与えられた社員には受領権限がありますので、領収書を受け取っても問題はありません。
高額な場合には、代表取締役の委任状を要求することも考えられます。
会社が使用人から受領権限を奪ったとしてもそのことを知らない者に対しては、使用人に受領権限がないことを主張できない旨が定められているとはいえ、争いにはなりそうです。
支社・支店・営業所などの領収書は、受領者やその受領権限について明確ではありませんので、このような領収書を受け取る場合には注意が必要です。
債務は、債権者に直接渡して領収書をもらうことが原則ですので、仲介業者代理人などが支払うときは、委任状などで受領権限の有無を確認し、過失のないようにする必要があります。
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署名だけの領収書の証拠能力・・・
発行者の欄が署名だけの領収書は、できれば押印してもらうようにします。
署名だけの領収書は、領収書としては問題はなく、筆跡により本人を特定することができるため、本人が作成したことを証明することができます。
しかし、最終的な意思表示がなかったのではないかと争いになる危険性はありそうです。
日本の慣習では、押印することが最終的な意思表示であるとされているからです。
署名だけの領収書よりも記名押印された領収書のほうが最終的な意思があったとされ、証拠能力が強くなる傾向があります。
高額だったり重要な取引などの場合は、発行者の押印がなされた領収書を求めるようにします。
領収書の発行者が個人の場合、個人を特定できるのであればペンネームや芸名を使用することができます。
しかし、複数のペンネームをもっている場合や、後で変更されるかもしれない場合、特定が困難になることがありますので、この場合は注意します。
例えば、但書に本名が特定できるように記載をしてもらい、個人が特定できるような領収書を受け取ります。
芸名 **** 本名 *****
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制限能力者からの領収書・・・
(未成年者の法律行為)
民法第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
未成年者が取引などの法律行為をする場合は、法定代理人の同意が必要です。
同意のない行為は取消すことができます。
法定代理人とは、通常、親権者であり、親権者がいない場合は未成年後見人が選定されます。
未成年者が単独で行った取引は、後になってその取引を取消され、受け取った領収書も無効となることがありえます。
相手方が未成年者の場合は、法定代理人の同意が明確に記載され、その署名押印がなされた領収書を受け取るようにします。
贈与を受けるなど、未成年者を保護する必要のないような契約の場合は、未成年者が単独でできますので、未成年者のみで発行した領収書でも問題はありません。
未成年者のほかにも、制限行為能力者には、成年被後見人、被保佐人、被補助人がいます。
成年被後見人は、日常生活に関する行為以外に単独でできる法律行為はありません。
たとえ、後見人の同意があったとしても、成年被後見人は取引ができませんので、領収書の発行者が成年後見人の名義でなければ受け取ってはいけません。
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