具体的な婚約の意思表示・・・

具体的な婚約の意思表示・・・

婚約が成立するためには、当事者の結婚しようという意思表示が必要であり、具体的にどういう状態があれば、保護されるべき婚約が生ずるかといいますと、婚約が成立すると、一定の現金や品物を相手方に贈る結納がありますし、当事者間で婚約指輪の交換も行われていますし、そのほかにも親戚知人に婚約を発表したり、第三者から婚約を祝福されているような状態が続いている場合も、法律上保護されるべき婚約があったと認められます。

このような外形的な事実がなくても、判例は、「婚姻の予約なるものは、結納の取交わしとか、その他慣習上の儀式をあげて、男女間に将来婚姻しようと約束した場合に限らず、男女が誠心誠意をもって将来に夫婦たるべき予期の下にこの契約をなし、全然契約なき自由なる男女と一緒の身分上の差異を生ずるに至りたるときは婚約あり」としています。

法律上、保護されるべき婚約が成立した以上、当事者はお互いに誠意をもって交際することが必要ですし、夫婦関係を作り上げるように努力する義務を負わなければなりませんが、婚約が成立したからといって、無理やりに結婚を強制することもできませんから、もし相手方が婚約を破棄するようなことがあっても、損害賠償を請求できるだけです。

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肉体関係強要と暴言の婚約破棄・・・

花子と太郎は知人の紹介で見合いの上、婚約を結び結納の日を決めるまでに至り、結納の前々日に花子が太郎の家に行った際、太郎から肉体関係を結ぶことを迫られ、花子はこれにやむなく応じました。

その後、太郎は「お前はこれが初めてではないだろう、結婚の話は白紙にもどそう。」などと言われ、花子はこのような太郎の態度では結婚はうまくいかないと感じ、婚約を白紙の戻してもよいと思い、花子から太郎に対し、結婚を取りやめることを申し入れました。

この婚約破棄について、花子は太郎に対して慰謝料の請求をし、裁判所は、婚約解消に至った主な原因は、太郎が花子に対し婚姻前の肉体関係を強要し、かつその直後太郎を侮辱するような暴言を吐いたことにあることは明らかであり、これによって太郎が花子と結婚しても円満にいかないと思うのは無理からぬものであり、花子の娘心に打撃を与え花子が苦痛を感じたものであるから慰謝料を支払うべき旨を認めた上、慰謝料の額としては、青年にありがちな軽薄と思いやりのなさから軽率に暴言を吐いたものであり、さして悪意があったとは認められず、また、太郎はその後自己の非を反省して謝罪している等の事情を考慮したほか花子もすでに他の男性と結婚して幸福に暮らしていることも考慮し、太郎に金50万円の慰謝料を支払うことを命じました。

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正当な事由のない婚約破棄・・・

婚約を解消するには、結婚することが不可能な事情が発生した場合や、当事者が婚約の解消を合意した場合がありますが、婚約の解消が正当な理由なしに、当事者の一方の意思表示によるときは、その者に対し、その責任を認めることが当然であり、損害賠償としての慰謝料を請求することができます。

どのような場合が婚約を解消すべき正当の事由であるかについて、将来、円満な夫婦生活を送ることができないような事情が生じている場合です。

今までの生活関係の重要な部分について隠していたり、嘘をついていたりしているとき、相手方に不貞な行為があったり、愛人や子供があったり、性的無能力がわかったとき、婚約後に乱暴、粗野、残酷な行為があり、また婚約者に対する態度が不誠実で、結婚の将来が期待されないときなどあります。

このような事由が相手方にあるときに婚約解消の正当の理由があるといえますが、自分に将来円満な夫婦生活を送ることができない事由が発生した場合には、婚約を解消することはできますが、それは正当な事由のある婚約の解消とはならず、相手方から損害賠償の請求があれば、これに応じなければなりません。

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婚約破棄の損害賠償の額・・・

婚約が成立した以上、これを正当の事由なしに破棄した場合には、損害賠償の請求をすることができます。

損害賠償の対象になるものとして、婚約のために現実にかかった費用は当然請求できますし、婚約のために今まで勤めていた会社を辞めたための損害のような「得べかりし利益」についても、損害賠償を請求できますが、婚約の破棄で問題になるのは慰謝料です。

慰謝料の額については、具体的な場合によって異なり、婚約の期間の長短、肉体関係の有無、婚約者の年齢、社会的地位、経歴、資産、婚約解消の実情等、あらゆる事情を考慮して定められますが、当事者間で話し合いがつかない場合には、最終的には裁判所の判断を受けることになります。

事例として、男女は見合いをした後、婚約が成立し、結納も取交わし、女性の方は挙式・披露宴の準備を進めて嫁入り道具もそろえ、挙式予定日の1ヶ月前から会社を退職して結婚に備えていたのですが、男性の方から女性に対し、突然一方的に電話で婚約破棄を通告してきました。

男女の間には、肉体関係がなかったのですが、裁判所は男性に対し、婚約破棄の慰謝料として、金400万円を支払うことを命じる判決を出しました。

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