兄から引取った母の扶養料請求・・・

兄から引取った母の扶養料請求・・・

私の父母は、長男夫婦と同居し扶養されていましたが、母と父の仲が悪く、妹である私が母を引き取りました。

母の扶養料を兄から請求したいのですが。

原審の判決では、「孝養を尽くす目的で扶養したものである限り、兄が扶養を免れたとして、不当利得の償還請求をすることは間違っている」としました。

上告審の判決では、「扶養権利者(母)の側に立ってみて、扶養義務者のうちの1人(長男)と同居することが嫌で、他の扶養義務者(妹)とは同居しているということは、何かそれ相当の理由があるはず。

例えば扶養の程度が低いとか、かえって扶養権利者をいじめるということも考えられる。

そんなとき、他の扶養義務者がみるにみかねて引き取って面倒をみた場合、後の義務者だけが扶養の全費用を負担せねばならないのは、不当のようである。

そんなことが是認されるなら、冷淡な者はいつでも扶養の義務を免れることができるからだ」として、原告(妹)に扶養義務者間の求償権を認めました。

この判決は、原審の事実認定に疑問ありとして、「原審が認定判示した事実だけで直ちに長男に費用の負担の義務なしとすることはできない。

そういうためには、すすんで母に相当の扶養をしたであろうのに、原告(妹)が無理に母を連れ去ったとか、また妹が費用をこちらで全部みると約束したとかでなければならない」としています。

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親を扶養した相続の寄与分・・・

二人兄弟の兄は、東京で勤め人をしており、私は田舎で母と暮らし、小遣いも渡して面倒をみてきました。

母がなくなり、相続が始まったのですが、兄は相続は2分の1づつと言っているのですが。

扶養とは人間の生存を保障する意味合いで設けられたもので、生活費を与える場合でも無償であり、扶養を受けた者としてはそれを返還する義務はなく、扶養をした者もその返還を求めるものではありません。

とすれば、扶養したからといって、相続の遺産分割に影響を与えるものではありません。

また、扶養義務が生じるには、扶養すべき者にそれだけの資力がなければならず、兄に資力がなければ扶養する義務はありません。

しかし、兄に扶養する余裕があるのであれば、兄も扶養義務者になり、母親の生活費の一部を負担すべきであったのにそれをしなかったことになります。

弟がその分を立て替えていたということになり、これを遺産分割で清算することはでき、これを寄与分といいます。

寄与分の存在を主張して、兄に対して、相続分が多くなることを請求すべきです。

寄与分とは、被相続人の事業に対する労務の提供、被相続人の療養看護その他の方法によって、相続財産の維持増加について特別に貢献した人に、その寄与分を足して相続を認めるというものです。

(寄与分)
民法第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

弟が母を扶養しなかったら、母の財産は、維持されなかったはずですから、寄与分を請求できるのは当然と考えられます。

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過去の扶養料を請求・・・

夫の死別後、一人で一人息子を育ててきたのですが、息子は結婚して東京へ行きました。

数年前に、私は大病を患ったときに、息子は何の見舞いもしてくれず、近所の方の看護で何とか助かりました。

現在は、生活に困るわけではありませんが、悔しいので息子に病気のときの扶養料を請求したいのですが。

扶養債務は、扶養可能な義務者が、権利者の扶養必要状態を知らされ、扶養の請求を受けた時点で成立するものとされています。

扶養は、生活に必要な需要を満たすことができない状態にある者に生活の資料を得させるもので、既に生活のため消費した金額を求める場合とは意味合いが違います。

判例は、「扶養本来の性質は自活できない場合において、これを引取り養うか、また、引取らずに生活の養料を給付するものである。

したがって、たとえ過去において自活できなかったとしても、その扶養を請求することもなく、とにかく生活してきたことについてそのむしかえしをし、扶養の請求をすることはできない」としています。

また、「自活できなかったことを主張してその養料を請求するものであり、これは、当事者間の契約その他のことにより、既に支払うべく確定した養料の延滞したものを請求しているのとは違う」としています。

扶養の権利は、扶養の請求をしたときに成立し、また同時に履行期が到来するとされます。

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