財産分与と詐害行為取消権・・・

財産分与と詐害行為取消権・・・

最判昭和58・12・19民集37巻10号1532頁

<事実>

Y女とA男は婚姻後クリーニング業を営み、その間に5人の子が生まれている。

Aはクリーニング業をYに任せ他の事業を始めたが、多額の負債を抱えて倒産した上、Aが長年他女と情交関係を続け1子をもうけていたため、ついに協議離婚をすることとなり、その際A所有の土地をYに財産分与として譲渡した。

そこで、Aの債権者であるX信用組合は、Yに対する財産分与は詐害行為になるとして取消しを請求した。

<争点>離婚の際に債務超過状態にある、あるいは財産分与をすれば無資力になる夫が行なった財産分与は詐害行為取消権の対象になるか。

<判旨>上告棄却

「分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも」財産分与において考慮すべき事情の一つにほかならず、「分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でな」い。

「分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消しの対象となり得ないものと解するのが相当である」。

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渉外離婚に伴う慰藉料・・・

仙台高秋田支判平成8・1・29家月48巻5号66頁

<事実>

中国国籍のX女は文通を通じて知り合った日本人男性Yと婚姻し、来日して同居生活を始めた。

しかし、Yが暴力を振るったり、窃盗事件を起したため、婚姻生活に失望し、離婚と慰藉料を請求する調停の申立を行ったが、不調となったため本件請求に至った。

原審は、慰藉料額の算定においてXが中国に帰国している事情を考慮し、中国の物価水準を基準として決定し、Yに慰藉料20万円の支払を命じた。

Xは控訴し、Yは附帯控訴した。

<争点>離婚慰藉料額の算定について離婚した者が離婚当時どこ(どこの国)で生活していたかを考慮すべきか。

<判旨>一部変更

「離婚慰藉料は、離婚したことにより受けた精神的苦痛を慰藉するものであり、離婚した者がその離婚調停成立当時どこで生活していたかとの点も考慮すべき一事情であることは否定できない。

しかし、本件慰藉料が日本における婚姻生活の破綻に基づき現に日本において請求されていることに照らすと本件慰藉料額を算定するに当っては、控訴人の中国に帰国後の同地の所得水準、物価水準如何は、逸失利益の算定の場合と比較してさほど重視すべきではなく、かえってこれを重要な要素として慰藉料の額を減額すれば、被控訴人をして、一般的に日本人である妻と離婚した者の支払うべき慰藉料の額と対比し、不当に得をさせる結果を生じ、公平を欠くことになると考えられる」として、慰藉料100万円の支払を命じた。

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離婚請求訴訟における請求放棄の許否・・・

最判平成6・2・10民集48巻2号388頁

<事実>

XとYとは、昭和18年10月に結婚式を挙げた上、同居を開始し、昭和30年9月に婚姻届出をした夫婦である。

両者間には、昭和21年に長男が、昭和25年には長女が出生したが、両名ともすでに婚姻してそれぞれ3人ずつ子をもうけている。

本件口頭弁論終結の時点で、Xは66歳、Yは64歳、長男は45歳、長女は41歳である。

XとYは、その性格の相違やXの女性関係を疑わせる行動などから口論が絶えず、Xは時にはYに暴力を振るったこともあり、夫婦関係は冷えてきて、昭和40年頃からは性関係もなくなっている。

Xは昭和44年頃からA女と知り合って男女関係をもつようになり、2人の間には昭和47年に女子、昭和49年に男子、昭和56年に男子が出生している。

Xから離婚請求の訴えが提起されたが、Yは離婚請求が認容されることを条件として予備的に財産分与の申立を行なった。

1審はXの離婚請求を認容するとともにXからYへの高額の財産分与を命じたので、Xは控訴したが、控訴審である口頭弁論期日において離婚請求を放棄する旨陳述した。

しかし原審は、人事訴訟ではその対象となる身分関係が当事者の自由な解決に委ねることのできないものであり、審理については職権探知が行なわれることから、いったん訴えが提起された以上は当事者による任意の処分は許されないと判示して、控訴を棄却したので、Xは上告して離婚請求の放棄は認められるべきであると主張した。

<争点>離婚請求訴訟において請求の放棄をすることが認められるか。

<判旨>原判決破棄

本件訴訟は、平成4年9月9日に上告人が請求を放棄したことにより終了した。

「離婚請求訴訟について請求を放棄を許さない旨の法令の規定がない上、婚姻を維持する方向での当事者による権利の処分を禁じるべき格別の必要性もないから、離婚請求訴訟において、請求を放棄することは許されると解すべきである」。

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離婚訴訟と子の監護濫用の支払い・・・

最判平成1・12・11民集43巻12号1763頁

<事実>

Xは、夫であるYに対し、離婚を求めるとともに、XY間の未成年の子AにつきXを親権者と指定すべきこと、およびAの養育費として毎月5万円の支払を求めて本訴を提起した。

原審は、Xの離婚請求を認容しAの親権者をXと指定するとともに、Aの監護費用としてXへの毎月5万円の支払をYに命じた。

Yは、離婚の訴えにあわせて子の扶養料請求をすることは許されないと主張して、上告した。

<争点>離婚請求訴訟事件において、離婚請求を認容するとともに、離婚後の親権者と指定した者への子の監護費用の支払を命ずることができるか。

<判旨>上告棄却

「人事訴訟手続法15条1項は、裁判上の離婚に際し、子の監護をすべき者その他子の監護につき必要な事項を定めるものとしている民法771条、766条1項の規定を受け、裁判所が、申立により離婚訴訟の判決で右の事項を定めることができるものとしている。

そして、民法の右条項は、子の監護をする父母の一方がその親権者に指定されると否とにかかわらず、父母の他方が子の監護に必要な費用を分担するなどの子の監護に必要な事項を定めることを規定しているものと解すべきである。

したがって、離婚訴訟において、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、子を監護する当事者をその親権者に指定すると否とにかかわらず、申立により、子の監護に必要な事項として、離婚後子の監護をする当事者に対する監護費用の支払を他方の当事者に命ずることができるものと解するのが相当である」。

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