婚姻費用分担審判の合憲性・・・
最大決昭和40・6・30民集19巻4号1114頁
<事実>
別居中のX女の申立により、過去および将来の婚姻費用の分担を命ずる審判がなされたが、夫Yは即時抗告をして棄却されたので、最高裁に憲法違反を理由に特別抗告の申立をした。
<争点>家事審判法9条1項乙類3号の婚姻費用の分担に関する処分の審判は、憲法82条および32条に反しないか。
<判旨>抗告棄却
「家事審判法9条1項乙類3号に規定する婚姻費用分担に関する処分は、民法760条を承けて、婚姻から生ずる費用の分担額を具体的に形成決定し、その給付を命ずる裁判であって、家庭裁判所は夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、後見的立場から、合目的の見地に立って、裁量権を行使して、その具体的分担額を決定するもので、その性質は非訟事件の裁判であり、純然たる訴訟事件の裁判ではない」。
「右審判はその前提たる費用負担義務の存否を終局的に確定する趣旨のものではない。
これを終局的に確定することは正に純然たる訴訟事件であって、憲法82条による公開法定における対審および判決によって裁判さるべきものである。
本件においても、かかる費用負担義務そのものに関する争であるかぎり、別に通常訴訟による途が閉ざされているわけではない。
これを要するに、前記家事審判法の審判は、かかる純然たる訴訟事件に属すべき事項を終局的に確定するものではないから、憲法82条、32条に反するものではない」。
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日常家事代理権と表見代理・・・
最判昭和44・12・18民集23巻12号2476頁
<事実>
本件の土地建物は、X(妻)が婚姻前から有する財産であるが、昭和37年にXの夫Aの経営するN商店の倒産に際し、T会社の経営者YとAとの間で、N商店の債務の決済として本件土地建物の売買契約が締結され、Yに所有権移転登記がなされた。
XAは昭和39年に離婚した。
Xから、売買契約は全くXの関知しないもので無効であるとして抹消登記手続を請求した。
1・2審ともXが勝訴した。
Yは上告した。
<争点>夫婦間には日常家事に関して相互に代理権が存在するか。またそれを基礎として民法110条の表見代理が成立するか。
<判旨>上告棄却
民法761条について、夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有すことを規定しているとした上で、「夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を超えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法110条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあって、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法110条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である」。
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離婚意思・・・
大判昭和16・2・3民集20巻70頁
<事実>
X男Y女夫婦は、婚姻後、衣料品の製造販売業を営んでいたが、営業不振によりXが多額の負債を抱え債権者から強制執行を逃れるため、相談して協議離婚の届出をした。
その後もX・Yは事実上の夫婦関係を継続していたが、XはA女と同棲を始め婚姻届を出したため、YがXに対し協議離婚の無効を認めたため、Xが上告した。
<争点>夫婦が債権者からの追及を逃れる目的で協議離婚の届出をした後も事実上夫婦関係を継続していた場合、離婚の意思が存在したといえるか。
<判旨>破棄差戻し
「夫婦が協議離婚の届出を為したる場合に真に法律上の夫婦関係解消の意思なくして虚偽の届出を為したりというが如きことは軽々に認定し得べきものに非ず思うに離婚の届出を為す夫婦はその離婚が戸籍に記載せられ以後一般社会より法律上夫婦にあらざるものとして遇わせられるべきとを知りてその届出を為すを普通としこれに反する例外は極めて稀有なるべきは実権則上容易に想像し得る所なるが故に事実上夫婦関係を継続する意思を有しながら右の届出を為す場合に有りてはその届出後における関係はこれを内縁関係に止め少なくとも法律上の夫婦関係は一応これを解消する意思にて即法律上真に離婚の意思にて右の届出を為すものと認むべきを社会の通念として極めて明確なる反証あるにあらざればその離婚届を以て法律上の夫婦関係解消の意思なき虚偽の届出なりと認め得ざるべきものとす」。
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離婚届作成後の翻意・・・
最判昭和34・8・7民集13巻10号1251頁
<事実>
X女Y男夫婦は3人の子をもうけたが、次第に夫婦仲が悪くなり、知人Aの立会のもとで協議離婚することに合意し、離婚届を作成した。
協議離婚届書はXが保管していたが、Aに提出を依頼し、これは戸籍係に受理された。
しかし、その前日Yは戸籍係に対し離婚届の不受理を申し出ていた。
そこでYが離婚届出の無効確認を請求した。
1審・原審は離婚を無効とした。
Xは上告した。
<争点>協議離婚の届出書作成後に離婚を翻意することは認められるか。翻意した場合、翻意の意思は相手方あるいは届出の依頼を受けた者に表示される必要があるか。
<判旨>上告棄却
協議離婚「届出書が市長に提出された昭和27年3月11日の前日たる同月10日YはA市役所の係員に対してXから離婚届が出されるかもしれないが、Yとしては承諾したものではないから受理しないでほしい旨の申し出たことおよび右事実によるとYは右届出のあった前日協議離婚の意思をひるがえしていたことが認められるというのであって、右認定は当裁判所でも肯認できるところである。
そうであるとすればXから届出がなされた当時にはYに離婚の意思がなかったものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になった以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。
そして、かならずしも所論の如く右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかったからといって、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない」。
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