無効な協議離婚の追認・・・

無効な協議離婚の追認・・・

最判昭和42・12・8家月20巻3号55頁

<事実>

X女とY男は挙式後同居生活に入ったが、当初から円満を欠き別居状態となったが、子供が生まれることとなり、子に嫡出子の地位を与えるためいったん婚姻届を提出した。

しかし、Yは当時同居していたA女にも子が生まれることとなったため、Aと離婚するためXに無断で協議離婚届を出されたことによる慰謝料を請求して調停を申し立てた。

調停の席上、協議離婚を前提としてYがXに離婚慰謝料を支払うことで合意し、調停成立となった。

その後、XはYに対して協議離婚の無効を主張した。

1審・原審はXが協議離婚を追認したものとしてXの請求を棄却したため、Xが上告した。

<争点>夫が勝手に協議離婚届を出した場合であっても、これを知った妻が協議離婚を前提として慰謝料を受取ることに合意した場合は、無効な協議離婚の追認があったといえるか。

<判旨>上告棄却

「XとYとは昭和23年4、5月頃以降全くの別居状態にあり、事実上夫婦関係を営んでいないこと、右両名は昭和37年3月30日長野家庭裁判所諏訪支部の家事調停において、Xが昭和24年6月11日付の届出による協議離婚を認めることを前提にして、XがYから右離婚に基づく慰謝料3万円の支払を受ける旨の合意をしたこと等の事実関係のもとにおいて、Xが右家事調停の際に、右協議離婚を追認したとした原判決の認定判断は、これを正当として是認することができる」。

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面接交渉権・・・

最決昭和59・7・6家月37巻5号35頁

<事実>

X男Y女婚姻後長女A・長男Bをもうけたが家庭生活は順調ではなく、ついにAの親権者をY、Bの親権者をXと定めて協議離婚した。

この際に面接交渉について定めることはなかった。

その後Yは3児を抱えたC男と再婚し、AC間で養子縁組を行なっていた。

XがAとの面接交渉を求める審判の申立を行った。

家庭裁判所は、面接交渉権字体は認めたものの、その行使は子の福祉に適合する場合のみに認められるとして、本件での面接交渉権の行使は認めなかった。

Xは即時抗告を行なったが、これも棄却されたため、さらに抗告の申立を行った。

<争点>離婚後親権者とならずに子の監護にあたっていない親が子との面接交渉を請求することができるか。またどのような場合に面接交渉権が制限されるか。

<判旨>抗告却下

「所論は、協議上の離婚をした際に長女の親権者とされなかった同女の父であるXに同女と面接交渉させることは、同女の福祉に適合しないとして面接交渉を認めなかった原判決は、憲法13条に違反すると主張するが、その実質は、家庭裁判所の審判事項とされている子の監護に関する処分について定める民法766条1項または2項の解釈適用の誤りをいうものにすぎ」ない。

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財産分与と慰藉料の関係・・・

最判昭和46・7・23民集25巻5号805頁

<事実>

Y男は子Aを連れてX女と再婚し、夫婦間に子Bが生まれた。

その後Yが暴力を振るうなどしたため、Xが離婚を請求し、離婚とともに財産分与としてタンスと水屋の分与が認められた。

その後、さらにXは、Yの有責行為により離婚せざるをえなくなったことによる慰藉料の請求を行なった。

<争点>夫の有責行為を理由とする離婚請求と財産分与が認められた妻が、さらに夫の有責行為により離婚せざるをえなくなったことを理由に慰藉料請求をすることは認められるか。

<判旨>上告棄却

「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方当事者の生計の維持を図ることを目的とするものであって、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求は、相手の有責な行為によって離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことに対する慰藉料の請求とは、その性質を必ずしも同じくするものではない」。

もっとも、裁判所が財産分与について判断する際には、当事者双方におけるいっさいの事情を考慮すべきものであるから、相手方の有責性を考慮して損害賠償のための給付を含めて財産分与の額および方法を定めることもできる。

そこで、すでに財産分与が為された場合には、それが損害賠償を含めた趣旨とは解されないか、または、精神的苦痛を慰藉するに足りないと認められるときは、別個に離婚による慰藉料を請求することができる。

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財産分与と過去の婚姻費用・・・

最判昭和53・11・14民集32巻8号1529頁

<事実>

X女はY男の婚姻以来の不誠実な態度に信頼を失い、いったん別居したところYが反省を示したので再び同居したが、態度を改めないため子A・Bを連れ実家に戻った。

別居以後7年間、Yは生活費を一切支払わず、Xは別居の際に持ち帰った債権や自己の収入で生活するほか、実父の援助をかなり受けていた。

XはYに対して離婚を請求するとともに財産分与と慰藉料を請求した。

原審は、財産分与として、夫婦財産の清算、離婚後の生活扶助のほかに過去の婚姻費用の清算を財産分与に含めた点に関してYは上告した。

<争点>婚姻費用の分担請求は家事審判事項であり、過去の婚姻費用についても審判申立が認められる。他方、離婚の際の財産分与は、夫婦財産の清算、離婚後の扶養、および慰藉料を含むとされているが、裁判所が財産分与を決定する際、その他一切の事情として過去の婚姻費用の分担の態様を考慮することができるだろうか。

<判旨>上告棄却

「離婚訴訟において裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては当事者双方の一切の事情を考慮すべきものであることは民法771条、768条3項の規定上明らかであるところ、婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は右事情の一つに他ならないから、裁判所は当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付を求めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解するのが、相当である」。

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