婚姻意思の存在すべき時期・・・

婚姻意思の存在すべき時期・・・

最判昭和44・4・3民集23巻4号709頁

<事実>

A男とY女は20年来の内縁関係にあったが、昭和39年9月、Aが入院した。

翌年4月3日、入院中のAはYと婚姻する決意をし、その手続の実施を訴外Bに依頼した。

BはこれをYに告げたため、Yはその弟Cに手続の実施を依頼した。

これを受けて、Cは同年4月5日午前9時10分頃までに届出を完了した。

ところがAは、4月4日朝からこん睡状態に陥っており、意識を回復しないまま4月5日午前10時20分に死亡した。

Aの従兄弟であるXらから、A・Yの婚姻は無効であるとして本訴が提起された。

1審はXらが敗訴した。

しかし原審は、届出当時に当事者に意思能力がなければ婚姻の合意があったということはできないとしてYが敗訴した。

Yは上告した。

<争点>当事者が合意の上で婚姻届書を作成した後、届出(受理)時に一方が意識喪失の状態にあった場合、この婚姻は有効に成立したといえるか。

<判旨>破棄差戻し

「本件婚姻届がAの意思に基づいて作成され、同人がその作成当時婚姻意思を有していて、同人と上告人との間に事実上の夫婦共同生活関係存続していたとすれば、その届書が当該係官に受理されるまでの間に同人が完全に昏睡状態に陥り、意識を失ったとしても、届書受理前に死亡した場合と異なり、届出書受理以前に翻意するなど婚姻の意思を失う特段の事情のないかぎり、右届書の受理によって、本件婚姻は、有効に成立したものと解すべきである」。

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無効な婚姻の追認・・・

最判昭和47・7・25民集26巻6号1263頁

<事実>

X男とY女は昭和12年に婚姻し、3人の子をもうけた。

X・Yは昭和24年11月、協議離婚したが、昭和25年1月下旬から、子らに養育上の必要もあり、再び同居を始めた。

その後、昭和27年11月、YはXには無断で婚姻を届け出た。

昭和29年3月頃、Xは届出の事実を知ったが、これに異議を唱えることもなく生活を続け、特別区民税の申告書にYを妻と記載して提出したり、長女の結婚式にYと共に出席したり、健康保険証においてYを妻と認定されても異議を唱えず、Yにはその保険証を利用させたりしていた。

ところが、昭和35年9月頃、X・Yは再度別居した。

XはYに対して婚姻の無効を主張して本訴を提起した。

1審・原審ともにXからの請求を棄却した。

Xは上告した。

<争点>無効な婚姻の追認が認められるのはどうような場合か。

<判旨>上告棄却

「事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合においても、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に右他方の配偶者が右届出の事実を知ってこれを追認したときは、右婚姻は追認により、その届出の当初に遡って有効となると解するを相当とする」。

また、婚姻の遡及的追認を認める根拠について、他人の権利の処分につき、民法116条本文を類推適用した先例を挙げ、本件はこの先例に類似するとして、「本件の追認は、民法116条本文の規定の趣旨を類推すべき根拠を全く欠き同法119条の規定によって律すべきであるとすることもできないのである」とした。

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再婚禁止期間の合憲性・・・

最判平成7・12・5判時1562号54頁

<事実>

X1女はA男と婚姻関係にあったが、昭和63年12月1日、調停離婚が成立した。

X1は離婚直後からX2男と事実上の婚姻関係にあり、翌年3月7日、婚姻届を提出した。

しかし、民法733条違反を理由に受理されなかった。

X1・X2は、民法733条が憲法13条・14条1項・24条1項ならびに女子差別撤廃条約、市民的および政治的権利に関する国際規約に違反し、国会議員または内閣がこれを改廃しないことは国家賠償法1条1項の違法行為になるとして、国に対して慰藉料を請求した。

1・2審ともX1らの請求を棄却した。

X1らは上告した。

<争点>民法733条は憲法に反するといえるか。仮に憲法違反というのであれば、国は直ちに国家賠償法による損害賠償義務を負うか。

<判旨>上告棄却

立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず、あえて当該立法が行なわれるような例外的な場合でない限り、立法行為が違法とされることはないとした。

その上で「上告人らは、再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条が憲法14条1項の一義的な文言に違反すると主張するが、合理的な根拠に基づいて各人の法的取り扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではなく、民法733条の元来の立法趣旨が、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される以上、国会が民法733条を改廃しないことが直ちに前示の例外的な場合に当ると解する余地のないことが明らかである」。

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婚姻無効確認請求と信義則・・・

最判平成8・3・8家月48巻10号145頁

<事実>

韓国籍を有するX男とY女は互いに面識がなかったが、昭和21年1月、親の懇請により日本で挙式した。

その後、Xは時折Yを訪ね、生活を共にする程度であった。

昭和23年9月、最初の子が生まれたことから、Xの父AはYと相談の上、X・Yの婚姻届を日本の戸籍当局に提出した。

Yはこの届出がXの意向に基づくものと信じていたが、Xは関知していなかった。

昭和56年1月、Xは韓国籍を有するB女との婚姻届を韓国の戸籍当局に提出した。

平成1年2月、YはXとの婚姻につき、日本でなされていた届出に基づいて韓国の戸籍当局に届出をしたため、韓国の戸籍上Xは重婚状態となった。

Xはこれを同年3月に知り、Yとの婚姻の無効確認を請求した。

原審は、Xの請求が信義則に反するとして棄却した。

Xは上告した。

<争点>婚姻の届出当時、当事者の一方に届出意思がない場合でも、婚姻の無効確認請求が信義則に反し許されないとされることはあるか。

<判旨>破棄自判、Xの請求認容

「婚姻の無効確認請求訴訟につき言渡された判決は第三者に対しても効力を有することがあるから、婚姻の無効確認請求が信義則に照らして許されないかどうかは、婚姻の効力の有無が当該当事者以外の利害関係人の身分上の地位に及ぼす影響等をも考慮して判断しなければならない」とした上で、本件婚姻が無効でないとされると、X・Bの婚姻が重婚に該当する等利害関係人に重大な影響が及ぶから、原審の説示するところのみでは、本件の婚姻無効確認請求が信義則に反するとはいえないとした。

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