内縁配偶者の居住権・・・

内縁配偶者の居住権・・・

最判昭和39・10・13民集18巻8号1578頁

<事実>

Xは昭和15年に出生後、満1歳の頃から、養父A、養母Bのもとで養育され、昭和21年A・Bと養子縁組をした。

昭和30年9月、養母Bが死亡し、Bの妹のYがその子女4名と共に、A宅に移り住むこととなった。

昭和30年11月、AとYは簡略な結婚式を挙げ、それ以来YはAと同居し、協力して家業に精励し、そのため家業は急速に発展した。

他方Xは、Yと感情的に対立し、家庭は円満を欠くに至ったが、昭和33年Aが急遽したため、結局AとYの正式の婚姻届もXの離籍手続もなされないままとなった。

Aの死亡により本件建物を相続したXは、Yに対し所有権に基づく本件建物の明渡しを求めた。

原審は、Yの居住権の主張は認めなかったが、Xの建物明渡請求については権利の濫用として退けた。

これに対してXが上告した。

<争点>家屋の名義人である内縁の夫の死亡後も被名義人である内縁の妻は当該家屋に居住し続けることはできるか。相続人から内縁の妻に対する明渡請求は認められるか。

<判旨>上告棄却

「XおよびY間の身分関係、本件建物をめぐる右両者間の紛争のいきさつ、右両者の本件建物の各使用状況およびこれに対する各必要度等の事情につき、原審がその挙示の証拠により確定した事実関係に照らせば、Yに対するXの本件建物明渡請求が権利の濫用として許されない旨の原審の判断は正当として肯認するに足りる」。

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内縁の死亡解消と財産分与の類推適用・・・

大阪高決平成4・2・20家月45巻1号120頁

<事実>

A男は法律上の妻B、子Y1・Y2がいながらX1女と男女関係をもち、その間にY3女が生まれ認知した。

妻Bは、Aの女性関係でAと離婚した。

Aは、今度はX2女およびその子らと暮らすようになったが、X1女との関係も断続的に続いた。

その後Aに病気による入院の際、X2がAの看護を行なった。

Aが病気により死亡したため、X1・X2はそれぞれ内縁の妻としてYら相続人を相手として財産分与を請求した。

原審は、X1について保護すべき内縁関係になかったと申立を却下し、X2に内縁関係を認めて、Aの遺産の6分の1を分与すべしと判断した。

これに対しX1・Yらが抗告した。

<争点>内縁夫婦の一方の死亡による内縁関係解消の場合に、生存する他方は、民法768条の財産分与の規定の類推適用に基づき、関係中蓄積された財産の分与を請求できるか。

<判旨>X1の抗告棄却、X2について申立却下

「現行法は、内縁関係を含む婚姻中の夫婦の財産については、離婚による婚姻解消の場合には、財産分与制度によって清算し、また、一方の死亡による婚姻解消の場合には、相続制度によって取得させることにしているのであって、婚姻の申出をした夫婦の一方が死亡した場合には、財産分与の規定の適用はなく、また、内縁の夫婦の死亡した場合には、相続の規定の適用はないと解すべきところ、内縁の夫の死亡により内縁関係が解消されたときにも、財産分与の制度を準用して、内縁の夫の遺産に対する内縁の妻の財産分与を認めることは、右のような離婚法並に相続法につき、現行法の体系を崩すものというべきである」。

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推定されない嫡出子・・・

大連判昭和15・1・23民集19巻54頁

<事実>

A男B女夫婦の子Xは、CD夫婦の子として出生届が出された。

AB夫婦は、数年間内縁関係を継続していたが、X出生の前日に婚姻届出をした。

A男はXを命名し、長男として手元で養育した。

その後、YがA・Bと養子縁組をした。

A死亡後、XがAの嫡出子としての相続権を主張して、Yと争った。

原審は、Xの請求を認めた。

<争点>内縁関係にあった夫婦の婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は、父の認知なしに嫡出子となるか。

<判旨>上告棄却

いまだ婚姻の届出をしていないけれども、事実上の夫婦として同棲しいわゆる内縁関係の継続中に内縁の妻が内縁の夫によって懐胎し、しかも内縁の夫妻が適式に法律上の婚姻をした後に出生した子は、たとえ婚姻の届出とその出生との間に民法772条(旧法820条)の200日の期間がない場合であっても、非嫡出子とすべきものではなく、そのような子は、とくに父母の認知の手続を要せずに、出生と同時に当然に父母の嫡出子たる身分を有する。

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内縁と嫡出推定・・・

最判昭和41・2・15民集20巻2号202頁

<事実>

Xは、昭和10年11月26日に出生した。

Xの母Aは、昭和10年3月26日にBと結婚式が挙げて内縁関係に入り、7月5日に婚姻届を出した。

しかし、AはYとも昭和8年頃から10年3月19日頃まで5~6回肉体関係を結んだ。

XがYに認知を求めた。

血液型その他の検査によると、XとYの親子関係は否定し得ない。

1・2審ともにXの請求を認めた。

Yが上告し、A・Bの内縁成立200日後に出生したXは、Bの嫡出子と推定され、Bは嫡出否認の訴えを起こさなかったので、Xは、Bの子として確定し、Yに対して認知請求はできないと主張した。

<争点>内縁成立200日後、婚姻成立200日以内に生まれた子は推定される嫡出子か。

<判旨>上告棄却

「民法772条2項にいう「婚姻成立の日」とは、婚姻届出の日を指称する」。

「AとBの婚姻届出の日から200日以内に出生したXは、同条により、Bの嫡出子としての推定を受けるものではなく、たとえ、Xの出生の日が、AとBの挙式あるいは同棲開始の時から200日以後であっても、同条の類推適用はない」。

「されば、XがBの嫡出子としての推定をうけるとの前提に立って、Bが法定の期間内に嫡出否認の訴えを提起しなかった以上、右推定が確定し、Xの本件認知請求は許されないとするYの主張は理由がない」。

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