仮差押の手続とは・・・
◇仮差押の申立
申立をするには、差押財産を特定することが必要です。
目的物により仮差押の執行方法や執行機関が異なり、管轄もそれにより判断されます。
①申し立て手数料(収入印紙)
一律2,000円
②予納郵券(切手)
金額は裁判所によって異なります。
③保証金
被保全債権の3分の1から5分の1の金額
④不動産の場合は、請求債権額の4/1000の登録免許税の納付が必要です。
◇仮差押の種類
仮差押は、保全すべき権利が「金銭の支払いを目的とする債権」に限られているので、差し押さえるべき対象財産の種類、内容とそれに応じた執行方法の差異によって下記のように分類されます。
対象財産 | 仮差押の執行の方法 |
不動産 | 仮差押の登記または強制管理 |
船舶 | 仮差押の登記または船舶国籍証書等を取り上げて保全執行裁判所に提出することを命ずる方法 |
自動車 | 仮差押の登録または執行官に自動車を取り上げて保管を命ずる方法 |
動産 | 執行官が目的物を占有する方法 |
債権 | 保全執行裁判所が第三債務者に対して債務者へ弁済を禁止する命令を発する方法 |
その他の財産(電話加入権、ゴルフ会員権、特許権など) | 保全執行裁判所が第三債務者に対して債務者へ弁済を禁止する命令を発する方法 |
◇裁判所による審理
裁判所は、被保全債権、保全の必要性について審理を行います。
審理が書面のみで行われるか、債権者との面接で行うかは裁判所により異なります。
即時に取り調べることできる証拠によって疎明することにより、被保全債権、保全の必要性が認められ、一般的に担保の提供がなされたときに、仮差押命令が発令されます。
◇担保
担保の提供方法としては、金銭または有価証券の供託による方法と、支払保証委託契約(ボンド)による方法があります。
支払保証委託契約は、裁判所の許可を得て金銭を供託する代わりに、銀行、保険会社、信用金庫などとの間で支払保証委託契約を締結する方法で担保をたてたものとする制度です。
銀行は、将来債権者が債務者に損害賠償金を支払わなければならなくなったとき、担保額の範囲内で債務者に金銭を支払います。
通常は、銀行などに担保額と同額の定期預金を積んで、これを担保として銀行など支払保証委託契約を締結します。
◇仮差押命令の執行
動産の仮差押については、仮差押命令を得た後に執行官に対して仮差押の執行の申立をする必要があります。
このような保全執行は仮差押命令が債権者に送達されてから、2週間以内に執行に着手しなければなりません。
◇不服申し立て
仮差押の申立を却下された債権者は、即時抗告によって争うことができます。
債務者は、認容された仮差押決定に対し、保全異議、保全取消の申立により争うことができます。
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仮差押の効力とは・・・
◇仮差押の効力
①債務者に対する効力
債務者は目的物につき、売買、抵当権の設定など一切の処分を禁止されます。
これを処分禁止効といいます。
債務者が目的物を使用したり人に貸すなどして収益をあげることは禁止されません。
②第三者に対する効力
目的物の譲受人は、その処分の有効性を本差押手続において主張できません。
③債権者に対する効力
・被保全権利の時効中断
・配当手続への参加
・二重申立の禁止
・違法申立による損害賠償義務
◇仮差押のデメリット
①他の債権者と平等弁済になります。
仮差押をした後、他の債権者が仮差押をしてきたり本差押をしてくると、配当手続において債権額に応じての平等弁済となります。
②担保が必要になります。
仮差押をするには多額の費用がかかることになります。
③債務者に財産が無い場合は仮差押できません。
④破産になると無効となります。
債務者が破産の申立を行い、破産手続開始決定がなされると仮差押は効力を失い、仮差押財産は、他の債権者と平等弁済の対象となります。
◇仮差押の外し方
①請求債権の弁済
債権者の債務者に対する請求金額を債務者が弁済すれば、被保全債権がなくなり仮差押の要件を欠くことになるので、事情変更による保全消しの申立または保全異議の申立をして仮差押を取消してもらいます。
②仮差押解放金の供託
仮差押命令では、仮差押の執行の停止を得るため、または、すでにした執行の取消を得るために債務者が供託すべき金額が定められています。
この供託すべき金銭を仮差押解放金といいます。
債務者は、仮差押解放金を供託することにより執行を求めることができます。
仮差押解放金は仮差押の目的物に代わるものです。
債権者は解放金に対して優先的に支払いを受ける権利を有せず、債務者の供託金取戻請求権の上に仮差押の執行の効力が及んでいることになります。
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不渡異議申立預託金の仮差押とは・・・
◇不渡異議申立預託金とは
約束手形の振出人等の支払義務者が、信用にかかわる事由以外の事情で満期に手形の決済をしないで、不渡処分を回避するには、支払銀行に委任して、異議申し立てをしてもらうことになります。
その際、支払銀行は、加盟している手形交換所に不渡手形金額相当額を提供する必要があります。
これを異議申立提供金といいます。
この異議申立提供金にあてるために、支払義務者が支払銀行に預託するお金が、不渡異議申立預託金です。
この不渡異議申立預託金は、支払銀行が手形交換所から異議申立提供金の返還を受けた時点で支払銀行から支払義務者に返還されるので、その返還請求権を仮差押することがあります。
これは手形債務者が不渡覚悟で異議申立を取り下げたり、あるいは、これを第三者に譲渡することを防ぐためです。
<異議申立提供金が返還される場合>
①振出人と所持人との間で和解が成立し、持出銀行から手形交換所に対し、「不渡事故解消届」が提出されると、手形交換所から支払銀行にその旨が通知され、支払銀行は異議申立提供金の返還を請求します。
②別口の不渡により、振出人が取引停止処分になった場合
③支払銀行から異議申立の取下げがあった場合
④異議申立をした日から2年を経過した場合
⑤振出人の死亡の場合
⑥支払義務がないことが確定した裁判がなされた場合
⑦持出銀行から交換所に支払義務確定届または差押命令送達届が提出された場合
◇不渡異議申立預託金の仮差押
①他の債権者から仮差押、差押に対して優先権を有するものではありません。
②支払銀行が預託者に対し反対債権を有している場合は、相殺をすることが可能です。
③不渡異議申立預託金返還請求権に譲渡、質入禁止特約が付されていても、仮差押、差押は可能です。
◇仮差押後の取立
仮差押の後は、債務名義を取得して異議申立預託金に対し差押を行い、その後、取立てを行います。
差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過すると、異議申立預託金を債権者から取り立てることができます。
支払銀行の債務者に対する異議申立預託金の返還時期が到来していることが必要です。
債権者は、持出銀行に依頼して支払義務確定届または差押命令送達届を手形交換所に提出してもらいます。
支払銀行はその届出によって手形交換所から異議申立提供金の返還を受けることができます。
異議申立預託金返還請求権の弁済期が到来し、支払銀行は預託金を手形債務者へ返還する義務が生じます。
手形債権者は、取立権に基づき支払銀行から取り立てることが可能になります。
取立てを完了しないうちは、他の債権者からの差押や配当要求があり得ます。
手形所持人が支払義務確定届を手形交換所に提出してから2か月以内に、手形所持人が手形額面金額を回収できないときは、手形所持人は持出銀行を通じて手形交換所に不渡審査請求をすることができます。
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