担保不動産競売の注意とは・・・
◇無剰余
担保不動産においては、先順位の抵当権があり、その被担保債権額が不動産の評価額を上回っている場合は、後順位の債権者の申立は原則としてその担保不動産競売手続を取消されます。
不動産の価値が先順位抵当権、根抵当権の被担保債権額を下回っている場合は剰余がないとして、以後、手続は行われなくなるので、申立に際しては、先順位の抵当権、根抵当権と不動産の評価に注意しなければなりません。
◇配当
先順位の抵当権、根抵当権があるからといってあきらめる必要はありません。
被担保債権が既に弁済されているか、または、ほとんど弁済されて残債権が少なくなっている可能性があります。
住宅ローンであれば、借入の年月日によって大体の残金が予想できます。
◇不動産執行との違い
担保不動産競売では、債務名義は不要です。
執行文の付与や送達証明も必要ありません。
強制執行の場合は第三者に所有権が移転されると申立ができませんが、担保不動産競売は譲渡されても可能です。
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抵当権消滅請求とは・・・
◇抵当権消滅請求とは
抵当権消滅請求とは、抵当不動産を取得した第三者が、自分で評価した抵当不動産の価額相当額を提供することにより、一方的に抵当権を消滅させようとすることをいいます。
抵当不動産を買い受けた者は、抵当権者に対して「***万円支払うから抵当権を抹消せよ。応じない場合は、債権者が2か月以内に競売の申立をしないときは、***万円を債権の順位に従って弁済または供託します」という書面を送達して、抵当権の消滅を請求することができます。
◇抵当権消滅請求権者
抵当権消滅請求ができる人は、抵当不動産の所有権を取得した第三者です。
取得が有償か否かは問いません。
停止条件付で取得した人は、条件の成否が未定の間は抵当権消滅請求をすることはできません。
主たる債務者、保証人および承継人は、自ら債務を負担するものなので抵当権消滅請求権者になれません。
◇抵当権消滅請求権の行使
抵当権請求権者は、抵当権の実行としての競売による差押の効力発生前に消滅請求をしなければなりません。
抵当権消滅請求権の行使は、登記した各債権者に対し民法規定(*)の書面を送達することにより行います。
(*)各債権者に抵当権消滅請求書、不動産登記事項証明書の送達(民法383条)
<抵当権消滅請求書の記載事項>
①取得原因、年月日、譲渡人および取得者の氏名、住所、抵当不動産の性質、所在、代価、その他取得者の負担
②債権者が2か月以内に抵当権を実行して競売の申立をしないときは、第三取得者が①の代価などを債権の順位に従って弁済または供託すること
◇抵当権消滅請求の効果
登記したすべての債権者が、第三取得者の提供した代価または金額を承諾しかつ、第三取得者がその承諾を得た代価もしくは金額を弁済または供託したときに抵当権が消滅します。
抵当権者が抹消登記手続に協力しない場合は、抵当権抹消登記手続き請求訴訟を提起して判決により手続をすることになります。
◇債権者の対応
抵当権消滅請求を受けた債権者は、担保不動産の価値を評価し、競売による減価などのリスクを考慮して、承諾するかどうかを判断することになります。
承諾しない場合には、抵当権消滅請求の送達を受けた日の翌日から2か月以内に抵当権を実行して競売の申立をすれば、抵当権は消滅せず存続します。
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一括競売と一括売却とは・・・
◇一括競売とは
土地に抵当権を設定した後、抵当地に建物が築造された場合でも抵当権者は建物を無視して土地を更地として競売できます。
土地を買い受けた人は、建物を収去して土地の明渡しを求めなければならず、買受を容易にするには土地と建物を共に競売したほうが、建物収去土地明渡請求をしなくて済みます。
抵当権設定後に抵当地に建物が築造された場合は、抵当権者は土地とその建物の両方を一括して競売することができます。
これを一括競売といいます。
抵当権設定者以外の者がその建物を築造した場合でも、一括競売できます。
建物の所有者が、抵当地の占有について抵当権者に対抗することができる権利を有する場合は、一括競売を行うことはできません。
一括競売の場合、抵当権者は土地の代価についてのみ優先弁済を受けることになります。
◇一括売却
数個の不動産の競売では、各不動産の個別売却を原則とします。
一括して売却したほうが競売の効果を高めることができるときは、執行裁判所は裁量により、数個の不動産を一括して売却することができます。
これを一括売却といいます。
不動産数個について同時に競売の申立があった場合などになされます。
共同抵当物件の場合、超過競売の恐れがある場合は、裁判所は設定者の同意を得た上で一括売却を行います。
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