財産管理者の報酬付与審判・・・
民訴訟等に関する法令の規定により任命された保管人又は管理人の報酬について、民事訴訟費用等に関する法律20条1項は、他の法令に別段の定めがある場合を除いて、報酬及び必要な費用を支給すると定めています。
(調査の嘱託をした場合の報酬の支給等)
民事訴訟費用等に関する法律第二十条 民事訴訟等に関する法令の規定により調査を嘱託し、報告を求め、又は鑑定若しくは専門的な知識経験に基づく意見の陳述を嘱託したときは、請求により、報酬及び必要な費用を支給する。民事訴訟等に関する法令の規定により保管人、管理人若しくは評価人を任命し、又は換価その他の行為を命じたときも、他の法令に別段の定めがある場合を除き、同様とする。
2 民事訴訟法第百三十二条の四第一項第一号 の規定により文書(同法第二百三十一条 に規定する物件を含む。)の送付を嘱託したときは、請求により、当該文書の写しの作成に必要な費用を支給する。
3 第十八条第三項の規定は、前二項の費用について準用する。
家庭裁判所の審判前の保全処分によって選任された財産の管理者は、前記法令の規定により任命された管理人に当たりますが、その報酬に関しては、不在者の財産管理の規定が準用されています。
不在者の財産管理人の報酬は、管理人と不在者との関係、その他の事情を考慮して、家庭裁判所が与えるものとされ、管理人は報酬請求権を当然に有するのでなく、家庭裁判所の報酬付与の審判によって、その請求権が形成されるものと解されます。
財産の管理者の報酬についても、これと同様に解することになります。
財産の管理者が報酬の付与を求めるときは、申立を要します。
財産管理者の報酬付与の申立は、家事雑事件です。
①申立権者
財産の管理者です。
②管轄
本案審判事件が係属している家庭裁判所です。
③添付書類
管理報告書、財産目録、その他の申立理由を証する資料
④審理手続
家庭裁判所は、財産の管理者に対して報酬を付与すべきかどうか、付与するとしたら、その程度を事案に応じて定めます。
報酬付与の審判は、財産の管理者に告知されることによって効力を生じます。
この報酬付与の申立は、審判前の保全処分に付随する申立ですが、保全処分そのものの申立ではないので、申立に対する認容、却下いずれの審判にも不在者の財産管理人の報酬に関する審判と同様に不服申立はできないとされます。
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遺産の競売又は換価を命ずる審判取消申立・・・
遺産の競売又は換価を命ずる審判が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、家庭裁判所は、その審判を取消すことができます。
この取消しの審判は、本案の申立を認める審判に対し即時抗告権を有する者の申立により、又は職権で行ないます。
遺産の競売又は換価を命ずる処分は、遺産の現物分割が事実上不可能な場合若しくは著しくその価値を減ずるため相当でない場合や相続人に債務負担の能力が経済的にない場合などのされますが、これらの事情が変更して、遺産の競売等を命ずる審判確定後にその理由が消滅したとき、当該審判を取消すことができます。
遺産の競売又は換価を命ずる処分及びその取消は、民法958条の3第1項の規定による相続財産の処分の審判についても準用されています。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。
遺産の競売又は換価を命ずる審判の申立は、家事雑事件です。
①申立権者
本案の申立を認める審判に対して即時抗告権を有する者です。
②管轄
本案事件が係属している家庭裁判所です。
③添付書類
遺産の競売又換価を命ずる審判を取消すべき状況にあることを証明する資料
④審理手続
遺産分割事件の審理に付随して審理されます。
遺産の競売等を命ずる審判を取消す審判は、これを受ける者に告知することによって効力を生じます。
相続人・遺産の管理者に対して告知すべきとされます。
遺産の競売等を命ずる審判を取消す審判及び取消しの申立を却下する審判に対する即時抗告は認められません。
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遺産分割の方法を指定する遺言・・・
遺産の分割方法の指定は、遺産の全部に関してなしうるが、その一部の特定財産についてだけの指定でも差し支えありません。
また、共同相続人全員について指定してもよいし、一部の相続人に対し特定の財産を与えるよう指定しても差し支えありません。
亡き父が、生前、長男及び次男に対し、「熊本**土地建物等、家具電話その他一切、次男に遺す」旨記載した「遺産分配」と題する書面を1通ずつ郵送した行為は、実質的には遺言による遺産分割方法の指定であって、次男に対する死因贈与の申込の意思表示とは認められないとした事例があります。
本件遺言書は、第1条ないし第8条において、遺産の一部について受遺者等遺産の割り当てを受ける者及び割り当て方法を特定し、第9条において、第1条ないし第8条記載の財産を除いた遺産から遺言執行費用を控除することにより特定する残余財産について、その割り当てを受ける者を原告ら3名(相続人)及び被告ら3名(受遺者)に特定して、それらの者の取得額の決定を遺言執行者に委ねているものである場合、第9条が遺言代理禁止の原則に抵触するとはいえないと解した事例があります。
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相続人が遺言者より先に死亡・・・
遺言者が、その者の法定相続人の1人であるAに対し「甲不動産をAに相続させる」旨の遺言をして死亡したが、すでにAが遺言者より先に死亡している場合には、Aに直系卑属Bに相続させる旨の文言がない限り、民法994条1項を類推適用して、甲不動産は遺言者の法定相続人全員に相続されると解すべきであり、その相続登記をすべきであるとされています。
この場合、甲不動産は遺産分割の対象になります。
(受遺者の死亡による遺贈の失効)
民法第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
遺言がある場合、遺産は、原則として遺言で指定されたとおりに分割されますので、相続人、受遺者の間の遺産分割についての話合い(遺産分割協議)は不要となります。
遺言がない場合、あるいは遺言が法律的に有効なものでない場合には、民法の規定により、相続人になれる人の範囲と順位が決まります。そして、この民法の規定により相続人となる人のことを『法定相続人(ほうていそうぞくにん)』と言います。
法定相続の場合には、法定相続人の間の遺産分割協議により遺産が分割されます。
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